月曜日の巫女

桜居かのん

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一輪の薔薇

一輪の薔薇27

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私は胸をなで下ろすと共に、いつもの表情でコーヒーを飲んでいる藤原に聞いてしまった。




「婚約者さんって綺麗な人?」




私の質問に藤原はちらりと視線をよこした後、そうだな、と素っ気なく答えた。




なんて自分は馬鹿なんだろう。


好きな人に婚約者の事を話させるなんて本当に馬鹿だ。

私はあまり飲めていないコーヒーのカップを持ったまま俯いた。


やっと、自分が藤原が好きだと自覚して、でもなんだか信じられなくて、自分で自分を刺すような事をしてしまった。




胸の奥が、酷い痛みで悲鳴を上げている。




感じた痛みは、葛木先生で感じた時の比じゃなかった。

私は葛木先生が好きだったはずで、それは嘘じゃなかったはずだ。

でも、私は一体いつから藤原を好きだったんだろう。

私は自分で自分の気持ちが良くわからなくなっていた。

ただ、はっきりしたのは、いま、私は藤原が好き、と言うことだ。

そして、私の想いは絶対に実らないということ。


だって私は、



婚約者でも、



巫女でも無いのだから。




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