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しおりを挟む「まず母上は、ライラ殿に突然のことなので祝勝会への参加は今日のところは遠慮して欲しいと告げていた。
兄上は、勝利の女神が参加できないのはおかしい、と納得のいかない様子だったが、旅の疲れもあるだろうから、今日のところはゆっくり過ごしてもらって、また後日機会を持とうと提案して収めてもらった。」
「王妃様も驚かれたでしょう。」
冷静な対応で、今日の祝賀会に混乱を招かなかったことは本当によかった。
「で、ライラ殿は何と?」
「彼女は特に異議を唱えず、母上の言葉に従うようだった。
だが、兄上の様子を見ると、近いうちに必ず皆んなの前で勝利の女神とやらを紹介したいらしい。」
「ハミッド王子は、ライラ殿ととてもお親しいご様子ですね。」
私の言葉にハッとしてアーディル王子は顔を上げた。
「エナールは大丈夫か?あの二人の様子を見ると、何というか…親しすぎる距離感なように、思うのだが…。
久しぶりに対面した婚約者があんなでは、エナールが傷付いているのではないかと心配で…」
気遣わしげに私を見るアーディル王子に、私の方が申し訳なく感じてしまう。
「大丈夫、なのかどうか分かりませんが、もやもやとした気持ちにはなります。
もともとハミッド王子とは、亡くなられた王様と私の父との間でまとまったお話だったので、特別に慕わしい感情はお互いに…まだ育んでいないとは思います。」
「そうか。それがよかったのかどうか、言いにくいが、とにかくエナールが酷く傷ついていなければいいと思っている。」
アーディル王子の心遣いに、もやもやしていた気持ちが少し暖かくなった。
「とにかく、これから私はライラ殿と兄上の間に何が起きて、兄上は今後どうするつもりなのかを聞いてみる。
あとは、やはりライラ殿の素性も気にかかる。」
「そうですね。私も出来るかぎり調べてみます。」
「何かわかったら連絡し合おう。私の侍従にも連絡が取れるようにしておく。」
そう言うと立ち上がりながら、
「エナールとは子供の頃からの知り合いだが、こうやって一緒になにかするのは初めてだな。
よろしく頼む。」
と、手を差し出されました。
…!
なぜだか急に心臓が騒ぎ出しそうですが、顔に出ないように気をつけながら
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
と、そぅっと手を握った。
短い握手を終えて、去っていくアーディル王子の後ろ姿を見ながら、
(今のは協力の握手よ。)
と、握手の種類分けをして心を落ち着けた。
今は自分がやるべきことを考えなければ!
戦地でハミッド王子の近くにいた者から話を聞きたいけれど、怪しまれないようにしなければ。
アリーシャの婚約者にも聞いてみよう。
先ほど遠目に見た女性が、得体の知れない恐ろしいもののように感じる。
まずは、相手を知らなければ。
全てはそれから…。
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