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第2章〜冒険の果て

52話〜作戦失敗

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 ジェシカとレフィカルは、ガルド達の方に煙幕の筒と催眠ガスの筒を投げつけ駆け出した。

 ガルドはそれに気づき慌てて持っていた布で口と鼻を塞ぎ、ユリィナとマリアンヌがいる方に駆け出した。

(煙幕と催眠ガスだと!まともに吸ったら動けなくなっちまう。急がねぇと……。)

 マグドもそれに気づき口と鼻を布で塞ぎ、ビスカの方に行こうとした。

(なるほど、煙幕と催眠ガスか。それならこの機を利用して、早くビスカを助けなければ!)

 だが、ビスカは既にジルフォードから離れマグドの方に来ていた。

(ガルドは心配無いとは思うけど。マグド、アイツ見た目よりトロそうだから、助けた方がいいよね。)

 ジルフォードは煙幕の筒が投下された直後、剣を抜き瞬時に筒を斬った。煙幕の筒はジルフォードの目の前で煙が発生し、「ケホ、ケホ」とむせっていた。

(誰だ?こんな小賢しい真似をしやがって、クッ、何処にいやがる!! )

 すると煙が充満する中、辺りを見渡した。

 ジルフォードは既に煙幕の筒が投下された直後、口と鼻を布で覆っていた為、まともに煙と催眠ガスを吸わなかった。

 スーザンは口を塞ぎ防ごうとしたが、後から投下された催眠ガスを吸ってしまい、その場に倒れ眠ってしまった。

 辺りには煙が充満していて、並みの人間では近くに人がいても分からない。

 しかし、そんな状況の中であっても、剣を抜いた状態のジルフォードの感覚は恐ろしく鋭く、自分に向かって来ているジェシカとレフィカルの気配を既に感じとっていた。

(右から2人か……全く余計な小細工しやがって!そんなもんが俺様に通用するとでも思ったか!!)

 ジルフォードは、すかさずジェシカに近づき斬りつけようとした。

 レフィカルはそれに気づき慌てて、

「ジェシカから離れろ!!」

 ジルフォード目掛け短剣を投げつけた。

 ジルフォードは、剣で短剣を弾くと狙いを変えレフィカルの方に向かった。

 レフィカルはそれに気づき、

(クソッ、相手が悪すぎだ!このままじゃ不味い。)

「煙幕に催眠ガス……お前、戦いをナメてんのか?戦いってのはなぁ、生きるか死ぬかなんだよ!戦いを甘くみてたお前に選ばせてやるよ。右腕か?左足か?それとも一気に首を落とされてぇか?」

 ジルフォードはレフィカルを睨み付けながらジリジリと近づいていった。

 レフィカルは怖くて震えていたが、この状況をどうにかしないと思い、深呼吸をし気持ちを落ち着かせた。そして、腰の短剣を右手で持ち、バッグの中から予備の短剣を取り出し左手で持ち構え、ジルフォードを睨み付けた。

「貴様……なんだその目は?気にいらねぇなぁ!」

 そう言われ、レフィカルは短剣を構えながら震えていた。そして、何とか震えを抑えようとしていた。

 マグドはレフィカルの近くにいた為、その光景を見ていた。

(何という事だ!彼らはおそらく助けに来てくれたのだろうが、流石に相手があのジルフォードでは、分が悪い……どうする?恐らく助けに入れば確実にバレてしまうだろう。だが、このまま見過ごす訳にもいかぬ。あれで変装するか、これを身につけるのは嫌なのだが、この際仕方ない。)

 マグドはバッグから眼鏡を取り出し身につけ、帽子とフードを深々と被りジルフォードに近づいていった。

 ビスカはマグドの方に向かっていたが、レフィカルとジルフォードのやり取りを見て、

(ちょっと、これはどうなってるの?まさかと思うけど、あの子私達を助けようとして、失敗したって事なわけ?だとしたら、助けないと不味いよね。だけど、どうやって助けたら?私の魔法でも多分、五分五分か、負ける可能性の方が高い。)

 ビスカはどうしたらいいか考えていると、マグドがジルフォードの方に向かっているのが見え、

(マグド!どうするつもりなの?いくら眼鏡掛けてても、恐らくバレると思うんだけど。このままじゃ……てか、ガルドは何処?)

 ビスカは煙がまだ充満してる中を、目を凝らしながら、ユリィナとマリアンヌの方を見たが、そこにガルドはいなかった。

(えっ?確か、さっきユリィナの方に向かってたような気がしたんだけど?ガルド何処に行ったの?)

 ビスカは辺りを見渡したが見当たらなかった。

 ジルフォードはレフィカルの直ぐ側まで来ていた。

 レフィカルは震えながら短剣を構え、ジルフォードの動きを見ていた。

「あの世で後悔するんだな!」

 そして、ジルフォードはレフィカル目掛け剣を斜めに振り下ろした瞬間、何かが猛突進して来て、ジルフォードは近くの大きな岩まで弾き飛ばされ全身を強打した。

「グハッ……はぁはぁ。だ、誰だ!?この俺に、これ程の打撃を与えられる者……ま、まさか!?」

 ジルフォードは自分がいた場所を見ると、さっきまで煙でよく見えなかったが、徐々に煙が晴れ突進して来た者の姿を見ると驚いた。

 そう、そこにはガルドがいて、ジルフォードを睨み付けていたのだった…。
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