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第2章〜冒険の果て

53話〜激怒

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 ガルドはジルフォードを睨み付けていた。

 ジルフォードはガルドに弾き飛ばされ岩に全身を強打し剣を落としてしまい、胸を押さえながら慌てて剣を探した。

 ガルドはジルフォードを睨み付けながらじわりじわりと近づいていった。

「おい!!これはやり過ぎじゃねぇのか!?」

 ジルフォードはガルドが近づいてくる度に感じる威圧感にたじろいでいた。

「ガ、ガルド様、お待ち下さい!こ、これには……。」

 ガルドがジルフォードの側に来ると見下ろし更に睨み付けた。

「こんだけの事をやっておいて……待てだぁ?だったらお前は、コイツが同じ事を言ったら待つのか?」

「そ、それは……ですが、今の私は武器も何も持っていないのですが……。」

「じゃ、聞くが?もしお前が剣を持てば、俺がお前を半殺しにしてもいいってんだよな!?」

「ガルド様……そ、それは……。」

「じゃ、どうする?さっきコイツに言った言葉を、お前は覚えてるよな?」

 ガルドは剣を抜きジルフォードの目の前に突きつけた。

 ジルフォードは剣を目の前に突きつけられ、

「ヒッ!?そ、それは……。」

 ガルドのあまりの威圧感と恐怖で声が裏返り叫び手を挙げ震えていた。

(ん?何なんだ。コイツ……本当にさっきの奴なんだよな?そういえば、さっきも剣を鞘に収めた瞬間人が変わったように感じたが……。)

 ガルドは剣を右手で持ちジルフォードに突きつけたまま、左手で通信用の水晶をジルフォードや周りの者達に気づかれないように持ちマグドに思念を送った。

 “マグド、聞こえてるか?”

 マグドは通信用の水晶を用心の為に握っていた。

 “ガルド、ああ聞こえているが。思念を送って来たって事はジルフォードの事が聞きたいのか?”

 “ああ、何なんだ?コイツは、まるでさっきの奴と別人に見えるんだが?”

 “それはな。ジルフォードは、剣を持つと人が変わる。さっきみたいにな。その為、皆から狂気のジルと言われている。普段は穏やかな性格なのだがな。”

 “なるほどな。そういう事か。なら話は簡単じゃねぇか。コイツを気絶させて逃げるか?若しくは半殺しにするか?どうするマグド。”

 “何故俺に聞く?決めるのはお前だろう?だが、そうだな。流石に半殺しは困るがな……。”

 “ああ、そうだな。分かった。自分で決める。”

 ガルドは通信用の水晶をポケットにしまった。

(仕方ねぇか。コイツのした事を許したくねぇが。軽く痛めつけた後にと思ったが、後が面倒だし気絶させてその辺に転がしておいた方がよさそうだな。)

 ガルドはジルフォードに剣を突きつけていたが、鞘に戻した。

 ジルフォードはガルドが何故剣を鞘に戻したのか不思議に思った。

(何故、ガルド様は剣を鞘に戻したのか?私であればこのまま有無を言わせず相手を斬りつける。いったい何を考えていらっしゃるのだ?)

(ガルド。剣を鞘に収めて何をするつもりだ?)

(ガルドは何をするつもりなの?)

 ビスカはガルドの事が気になり心の中を覗いた。

(……なるほど、そういう事か。)

 ユリィナとマリアンヌは離れた所で見ていた。

(ガルド、何故剣を……?)

(……ガルド、まさかとは思うのですが?ジルフォードを甘く見ている訳ではないですわよね?)

 ジェシカとレフィカルは側で見ていた。

(クソッ!助けに来たのに、逆に助けられるって……どんだけなんだよ!)

 レフィカルは悔しくなり俯向き涙を浮かべていた。

 ジェシカはレフィカルを見て、

(レフィカル。悔しいよね。私ももっと強ければ……だけど、ガルドは何をしようとしてるの?)

 そして、ガルドは目蓋を閉じ深呼吸をし目蓋を開けると、瞬時に剣を抜きジルフォードの頭スレスレに斜めに振り上げ帽子を斬りつけた。

 ジルフォードは一瞬の事でなす術なく避ける事が出来なかった。

「ヒッ!!! 」

 ジルフォードは、目の前を刃が瞬時に通り過ぎ帽子と髪が斬りつけられ驚き恐怖し奇声を挙げ泡を吹き、岩に寄り掛っていたが滑るように倒れ気絶した。

 そして、その場にいた者達は余りの速さに、一瞬何が起きたか分からず、呆然とたたずんでいたのだった…。
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