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44 厄介なモノ
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「次は地球を侵略しようじゃないか!」
会議室一杯に声を響かせたのは、宇宙一の武力を誇るテトラジェネス星の総帥だ。
地球──だだっ広い銀河の1等外れにある癖に、何よりも美しい青い惑星。
誰もが溜め息を吐くけれど、その距離の為に使い物にならない偵察――地球ではUFOと呼ばれているとか――を出すのが精一杯の原初の惑星。
故に戦争を吹っ掛けるのは不可能だとどこの星も諦めていた。
それに未開の地球を一気に侵略するとなると、条例やらなんやらうるさい。なのでまずは一番序列が高い存在を排除し、500年単位で侵略しなければならない。
「空間折りたたみ転移法で攻め入る事は容易でしょうが、偵察もせずに攻めるのは条例違反になりかねません」
そう言ったのはテトラジェネス1の容姿を持つ女型軍人だった。その麗しさ故に今の地位を得ただけの。
総帥はムッとする。頭が悪い癖に何を偉そうに、と。
「じゃあお前が偵察に行けっ!!」
だから思わず命令していた。
「っ……はぁい」
この星では総帥に逆らえない。事実彼女はムスッとしながらも頷いていた。
「頼んだぞ」
本当はもっと適任者が居るのだが、その顔を見れて溜飲が下がると言う物だ。
***
UFOに乗った女型軍人は艦内で1人悩んでいた。
そもそも偵察とはどうすれば良いのだ。未知の惑星の何をどう報告すればいいのだろう。
「ん~……あっ」
ふと思い付いた。
どうせ地球の事なんて誰も知らないのだから適当を言ってしまえ、と。序列さえ分かった体にしてしまえば良いのだから。
「そうと決まればぁ……」
艦内モニターに映る地球人の暮らしを注視する。
少人数で暮らしていると言うのに窮屈な建物。それでも笑顔で、皆楽しそうだ。
「その中央で偉そうにしてるのが、きっと地球で一番序列が高い奴等ねぇ……って何アレ可愛いっ!!」
思わず声が漏れる。
テーブルの上に優雅に寝転がっている、黒と白の毛を持つ生き物——猫、とどうやら言うらしい——が居たのだ。
「かわ、可愛い……」
自由に尾を振り、気持ち良さそうに目を細め……正直、この生き物が地球の頂点なのも頷けた。この可愛さには誰もが屈する。
そうだ、あれが地球の頂点だ。
「よしっ、あれを報告しましょ~」
良い情報を入手出来た、と満足顔を浮かべる。宇宙船レバーを操作し、夜空を上昇していくのだった。
***
そして。
地球では猫が一番序列が高い、と共有される事になった。
「よし、では侵略だ!!」
テトラジェネスは勇み込んで地球に攻め込み――ピンポイントレーザーを駆使した結果、地球から猫をきれいさっぱり消し去ったのだ。
「猫が消えた!? 一体どうして!? わ、私の猫ちゃん……」
突然の事に人類は驚き、深く悲しんだ。同時に決意を固める。
突然猫が消えたこの奇怪な現象を解明してみせる、と。
——それから250年後。
「猫……猫……どうして居なくなっちゃったの……」
映像に残る猫は尚も人々を魅了し、自分達から猫を奪ったナニカを人類は憎み続けた。
そしてついに。
原因解明の為に宇宙に飛び出した人類は、それがテトラジェネス星の所業だと突き止めたのだ。
「猫の恨みー! 食らえー!」
地球は猫恋しさで発展した技術力を持って、敵討ちだとテトラジェネス星を燃やし尽くした。
それはもう、あっという間に。
見せしめに公開処刑されたテトラジェネスの総帥の、最期の言葉はこうだ。
「猫の魅力……厄介すぎだろ……!!」
銃弾が脳を貫く前、こうも思った。
猫の序列が高いと言う話に違和感がある。
これはつまり——。
カッとなって馬鹿に重要な事を任せた自分が、一番厄介だったのだ。
会議室一杯に声を響かせたのは、宇宙一の武力を誇るテトラジェネス星の総帥だ。
地球──だだっ広い銀河の1等外れにある癖に、何よりも美しい青い惑星。
誰もが溜め息を吐くけれど、その距離の為に使い物にならない偵察――地球ではUFOと呼ばれているとか――を出すのが精一杯の原初の惑星。
故に戦争を吹っ掛けるのは不可能だとどこの星も諦めていた。
それに未開の地球を一気に侵略するとなると、条例やらなんやらうるさい。なのでまずは一番序列が高い存在を排除し、500年単位で侵略しなければならない。
「空間折りたたみ転移法で攻め入る事は容易でしょうが、偵察もせずに攻めるのは条例違反になりかねません」
そう言ったのはテトラジェネス1の容姿を持つ女型軍人だった。その麗しさ故に今の地位を得ただけの。
総帥はムッとする。頭が悪い癖に何を偉そうに、と。
「じゃあお前が偵察に行けっ!!」
だから思わず命令していた。
「っ……はぁい」
この星では総帥に逆らえない。事実彼女はムスッとしながらも頷いていた。
「頼んだぞ」
本当はもっと適任者が居るのだが、その顔を見れて溜飲が下がると言う物だ。
***
UFOに乗った女型軍人は艦内で1人悩んでいた。
そもそも偵察とはどうすれば良いのだ。未知の惑星の何をどう報告すればいいのだろう。
「ん~……あっ」
ふと思い付いた。
どうせ地球の事なんて誰も知らないのだから適当を言ってしまえ、と。序列さえ分かった体にしてしまえば良いのだから。
「そうと決まればぁ……」
艦内モニターに映る地球人の暮らしを注視する。
少人数で暮らしていると言うのに窮屈な建物。それでも笑顔で、皆楽しそうだ。
「その中央で偉そうにしてるのが、きっと地球で一番序列が高い奴等ねぇ……って何アレ可愛いっ!!」
思わず声が漏れる。
テーブルの上に優雅に寝転がっている、黒と白の毛を持つ生き物——猫、とどうやら言うらしい——が居たのだ。
「かわ、可愛い……」
自由に尾を振り、気持ち良さそうに目を細め……正直、この生き物が地球の頂点なのも頷けた。この可愛さには誰もが屈する。
そうだ、あれが地球の頂点だ。
「よしっ、あれを報告しましょ~」
良い情報を入手出来た、と満足顔を浮かべる。宇宙船レバーを操作し、夜空を上昇していくのだった。
***
そして。
地球では猫が一番序列が高い、と共有される事になった。
「よし、では侵略だ!!」
テトラジェネスは勇み込んで地球に攻め込み――ピンポイントレーザーを駆使した結果、地球から猫をきれいさっぱり消し去ったのだ。
「猫が消えた!? 一体どうして!? わ、私の猫ちゃん……」
突然の事に人類は驚き、深く悲しんだ。同時に決意を固める。
突然猫が消えたこの奇怪な現象を解明してみせる、と。
——それから250年後。
「猫……猫……どうして居なくなっちゃったの……」
映像に残る猫は尚も人々を魅了し、自分達から猫を奪ったナニカを人類は憎み続けた。
そしてついに。
原因解明の為に宇宙に飛び出した人類は、それがテトラジェネス星の所業だと突き止めたのだ。
「猫の恨みー! 食らえー!」
地球は猫恋しさで発展した技術力を持って、敵討ちだとテトラジェネス星を燃やし尽くした。
それはもう、あっという間に。
見せしめに公開処刑されたテトラジェネスの総帥の、最期の言葉はこうだ。
「猫の魅力……厄介すぎだろ……!!」
銃弾が脳を貫く前、こうも思った。
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カッとなって馬鹿に重要な事を任せた自分が、一番厄介だったのだ。
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