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27 初恋の人
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俺には三分以内にやらなければならないことがあった。
それは、初恋の人に電話をかける事だ。
初恋の人――せっちゃんに会ったのは30年前。俺はマセていて大人ぶったクソガキ幼稚園児だった。
幼稚園のグラウンドで縄跳びをする子供達を「幼い」って言って、ベランダの柱に凭れ掛かって一人で居たような一匹狼タイプで。「俺は大人だからあんな遊びするもんか!」って強がってた。
お子様だったなあ、本当は彼らの輪に混じりたかったのにさ。
俺はこの時から馬鹿だったから「仲間に入れて」って一言が言えなくて、こっそりもじもじしていたんだよな。
でもさ。
せっちゃんはそんな俺に気が付いたみたいで。流石だよな。
『ほら、一緒に遊ぼうよ!』
って俺の手を引いて輪に入れてくれたんだよ。
その時のせっちゃんの笑顔が凄くキラキラしてて。手の温もりに胸が高鳴って。俺はあの時初めて恋を知ったんだ。
そんなせっちゃんに、俺は久しぶりに電話をする事になった。
……せっちゃん、俺の事覚えてるかなあ。
いやって言うかまず気付くわけないか。もう30年前だもんなあ、それに腐ってる俺を知られたくないし……。
もうタイムリミットは一分しか残ってない。駄目だ、勇気を出して電話をするんだ。
大きく息を吸って思い切ってボタンを押すと、秒で繋がってしまった。
もう戻れない。俺の運命はとても意地悪だ。
心臓が口から飛び出しそう。俺は震える声で第一声を口にした。
言うんだ、俺。
「もしもし、俺だけど」
定型文を口にした俺に、隣にいる面接官が満足そうに笑う。
オレオレ詐欺のカケコバイト、第一関門突破かな。良かった、借金返せる。
でもまさか、三分以内に電話をかけなきゃいけない、って言う一次試験の電話先がせっちゃんなんて。マセガキだった俺は幼稚園の先生──生意気にも気取って先生じゃなくてせっちゃんって呼んでた──が初恋の人だった。
『えっ?』
受話器越しに70を超えているだろうせっちゃんの声がした。
それは、初恋の人に電話をかける事だ。
初恋の人――せっちゃんに会ったのは30年前。俺はマセていて大人ぶったクソガキ幼稚園児だった。
幼稚園のグラウンドで縄跳びをする子供達を「幼い」って言って、ベランダの柱に凭れ掛かって一人で居たような一匹狼タイプで。「俺は大人だからあんな遊びするもんか!」って強がってた。
お子様だったなあ、本当は彼らの輪に混じりたかったのにさ。
俺はこの時から馬鹿だったから「仲間に入れて」って一言が言えなくて、こっそりもじもじしていたんだよな。
でもさ。
せっちゃんはそんな俺に気が付いたみたいで。流石だよな。
『ほら、一緒に遊ぼうよ!』
って俺の手を引いて輪に入れてくれたんだよ。
その時のせっちゃんの笑顔が凄くキラキラしてて。手の温もりに胸が高鳴って。俺はあの時初めて恋を知ったんだ。
そんなせっちゃんに、俺は久しぶりに電話をする事になった。
……せっちゃん、俺の事覚えてるかなあ。
いやって言うかまず気付くわけないか。もう30年前だもんなあ、それに腐ってる俺を知られたくないし……。
もうタイムリミットは一分しか残ってない。駄目だ、勇気を出して電話をするんだ。
大きく息を吸って思い切ってボタンを押すと、秒で繋がってしまった。
もう戻れない。俺の運命はとても意地悪だ。
心臓が口から飛び出しそう。俺は震える声で第一声を口にした。
言うんだ、俺。
「もしもし、俺だけど」
定型文を口にした俺に、隣にいる面接官が満足そうに笑う。
オレオレ詐欺のカケコバイト、第一関門突破かな。良かった、借金返せる。
でもまさか、三分以内に電話をかけなきゃいけない、って言う一次試験の電話先がせっちゃんなんて。マセガキだった俺は幼稚園の先生──生意気にも気取って先生じゃなくてせっちゃんって呼んでた──が初恋の人だった。
『えっ?』
受話器越しに70を超えているだろうせっちゃんの声がした。
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