見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二七

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「なあ……」

 俺は困惑しながら声を掛けた。

「あん?なんだ?」

 オオムカデンダルが不審そうに俺を見る。

「アンタのことを何と呼べばいいかと思ってな……」

 主従関係を受け入れて俺はこの力を手に入れたのだ。
彼女の治療もそうだ。

 対等な話し方も改めなければならないだろう。
だが俺は突然話し方を変えるのに戸惑っていた。

「あぁ、そうだな……ま、別に好きに呼べよ」

 オオムカデンダルは一瞬考える素振りを見せたが、すぐに面倒臭そうにそう言った。

「好きにと言われても……皆が呼ぶように呼ぶのは……」

 俺は困ってしまった。
こんな状況は初めてなのだ。
誰でもこんな経験をしたことはないと思うが。

「百足でも謙太郎でもオオムカデンダルでも好きに呼びな。お前が俺の役に立つならそこは気にしない。俺たちはもう『組織』ではないからな」

 組織?

「……面倒だから説明しない」

 それは口癖なのか。
オオムカデンダルはまたそう言って黙ってしまった。

「さて、屋敷に戻って準備するか。説明が面倒でもお前が知らなければならないことは説明しない訳にはいかないからな」

 オオムカデンダルはそう言って先に歩き出した。

 彼は非常にシンプルな男に見える。
だがそれは見た目だけで、実はとても複雑なのだと思う。
サッパリしているのは単に彼の性格なのだろう。

 俺はこの男の支配下に置かれることなったのだ。
これからは注意深く彼を見ていこうと思った。

「どうだった?」

 屋敷に戻ると女がそう言って迎えた。
確かウロコフネタマイトと言ったか。
女性に付ける名前ではないと思うが、彼らのことをとやかく言うのは無意味だ。

「おお、成功成功大成功だ。俺も驚いた」

 オオムカデンダルが楽しそうに言う。

「当たりだよ。大当たりだ。適合性が半端ない」

そう言ってオオムカデンダルは自分の席に座った。

 そっぽを向いていたアキツシマことオニヤンマイザーも興味に負けてこちらに向いた。

「たかが戦闘員の為の強化処置だろ。大袈裟な」

 オニヤンマイザーが鼻で笑う。

「まぁ、俺もそう思ってたんだけどな。あれは適合率一二〇……いや一五〇はいってるな」

「馬鹿も休み休み言え。一〇〇も滅多に出る数値じゃない。今までで一〇〇が出たことは一度しかない」

 オオムカデンダルの言葉にオニヤンマイザーが噛み付いた。

「そう。一度だけだ。その一度がこの俺だけどな」

 オオムカデンダルが自分を指してニヤリと笑った。

「だから俺は戦闘員から戦闘魔人に格上げになり、幹部の一員になったって訳だ」

 オオムカデンダルが誇らしげに言った。
俺には何の話やらさっぱり判らない。
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