見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八三

 ナイーダが俺の手を強く握ってきた。
俺はナイーダの顔を見る。

「……たぶん死ぬのと、絶対死ぬの、どっちがいい?」

 質問の意味が判らなかったが、ナイーダの表情は真剣だった。

「そりゃあ、『絶対』死ぬよりは……『たぶん』の方がいいだろ」

「そう……同じ答えでよかった。じゃあ覚悟してよね」

 そう言うとナイーダは石ころを拾った。
何をする気だ。
そんな俺の疑問を他所に、ナイーダは振りかぶるとコカトリスに石を投げた。

 ッ!?

 俺は頭が真っ白になった。
何をしでかしているのか判っているのか。

 コカトリスの足下へ石ころが転がる。
当然こちらの存在を察しただろう。

「おま……!」

 言いかけた俺を無視してナイーダが言う。

「戻るわよ!走って!」

 は?

 戻る?

 俺の思考は完全に停止していた。
 
「ちょっと待て!何を言っ……」

「いいから早く!」

 俺は訳が判らなかった。
だが、ナイーダの真剣な表情を見ていると、質問をしている場合ではないことだけは察しがつく。

「くそっ!あとで説明してくれよ!」

 俺は言われたように今来た道を戻った。

タタタタタタタタタタ!

 ナイーダを小脇に抱えて全速力で走る。

 ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ

 背後から乾いた足音が迫ってくる。
これはコカトリスの足音だ。

「おい!正面はバジリスクが来るぞ!どうするんだ!」

 俺はナイーダに問いかけた。

「……何とかやり過ごして」

 おい。無理だろ。

「何とかって何なんだよ!」

 もう間も無くバジリスクと鉢合わせする。

「元から一か八かなのよ。バジリスクがコカトリスを認識できればそれでいいわ」

 どういう事だ。
両者をぶつけると言う事か。

 大きな岩陰から採掘場前へ伸びる道に飛び出した。

「うおっ!」

 目の前にバジリスクがいる。
距離、約五〇センチ。
近すぎる。

 俺の心臓がドキッと音を発てるのが、耳で聞こえるほどに驚いた。

 バッ!

 とっさに横へ跳んだ。
何も考えなどない。
正面は不味いだろう、ただそれだけ考えて横っ飛びに跳んだ。

 その一瞬後。
一瞬前に俺がいた場所を、バジリスクが吐き出した毒がかすめ飛んだ。

 一秒の半分のそのまた半分くらいの時間だ。
危なすぎる。

 しかし。

 ゴロゴロゴロゴロ

 俺はナイーダを抱えて地面を転がった。
立ち上がる暇さえないだろう。
こんな場面で倒れるなど、死そのものを意味する。
モンスターとの戦闘中に足を取られただけでも、死ぬ場面は山ほどあるのだ。

 くそ……ここまでか。

「コケーッ!」

 耳をつんざく大音量でコカトリスが鳴いた。
俺は顔を上げ、見上げた。

「立って!はやく!」

 ナイーダが叫んだ。
俺も慌てて立ち上がる。

 だが、バジリスクの様子がおかしい。
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