見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二六三

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 夕飯は外で食べることにした。
俺は自炊など出来ないし、カルタスも同様に外食派だ。

 トラゴスは元山羊なので言うに及ばずだ。
じゃあ今まで何を食べていたのか。
基本的には草を食んでいたらしい。
人目を忍んで草むらで草を食む。
うら若き乙女がする事ではないが、元が山羊などとは誰も知らないので、見つかるわけにもいかなかったそうな。

 そこで三人で飯を食いに出掛けた。
たいした店ではない。
と言っては失礼だが、どこにでも良くある飯屋だ。

 三人でテーブルを囲んだものの、会話が無い。
トラゴスだけは嬉しそうだが。

 料理は適当に頼んだ。 
トラゴスは野菜が良いようで、肉は食べたくないらしい。
サラダをメインに野菜料理を注文していた。
俺とカルタスはもっぱら肉料理だ。
あと酒を少々。

「旨いか?」

 カルタスがトラゴスに尋ねた。

「はい。とても美味しいです」

 トラゴスがサラダを頬張りながら答えた。
こんなに美人なのに、山羊かと思うとそう見えてくるから不思議だ。 
紙も食うのかな。

「ところで……」

 俺は気になったことを口にした。

「君は生まれ変わったのではなくて、急に人間の体を得たのだと言ったな」

「はい」

 トラゴスがモシャモシャとサラダを噛みながら答える。

「誰だか判らないが願いを叶えてくれたのだとも」

 トラゴスが頷く。
願いを叶えてくれた者の存在を感じているのか。
そんな事が出来るのは、普通に考えれば神の奇跡だ。
だが、世の中には神と言っても色々な神が居る。

 そう、例えば『邪神』だ。

 俺は例の一件以来、純粋に神を受け入れることが難しくなっている。
邪神の存在を予感してしまったが故に。

 とは言え、トラゴスが邪な存在に見えるかと聞かれれば答えはノーだ。

「他に何か不思議な事はなかったか?何でもいい」

 俺はトラゴスに情報を求めた。

「おいおい。何をそんなに質問攻めにしているんだ?」

 カルタスがそう言ってジョッキの酒を飲み干す。
そして、ダンッとテーブルに置いた。

「俺は俺で目的がある。その為にオレコに仕事も依頼している。放っておいてもらおう」

 俺は冷たく言い放った。

「へえ。なんだ、その目的ってのは?」

 コイツ、首を突っ込む気か。
どうせ言っても判らんだろう。
それ以前に信じるとも思えない。

「良いじゃねえか。話しても減るもんじゃないだろ」

 ……ちっ。

 話さなければトラゴスに邪神の話を続けられない流れになってきている。

「はあ……」

 俺はため息を吐くと、仕方なく今までの事を話した。
それだけで軽く小一時間は使ってしまった。

「それでトラゴスに、謎の存在が何かを確めたいって訳か?」
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