見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三八二

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「本当か?お前、一度失敗してるじゃないか」

 俺の言葉に女は一瞬たじろいだ。

「……今度こそ大丈夫だ。命懸けで護ってみせる」

 何故そこまで言えるのかは謎だが、一応信じておこう。

「お前のトコの銀猫にも聞かなければならん事があるからな。伝えておけ」

「……わかった」

 俺はそう言い残すと、キロを女に預けた。

「ちょっと行ってくる。何かあったらまた呼べ」

「うん!」

「れおさま!気をつけてね!」

「すぐ帰ってきてね!」

 キロたちの返事を聞いて、俺はキロの居た店へと向かう。

 時刻的にはもう深夜だ。
子供が出歩いて良い時間ではない。
それどころか大人さえも、こんな時間に出歩く奴などそうそう居ない。
店に着くと俺は入り口から中へと押し入った。

「あ、ちょ、ちょっと!」

 入口の男が俺を制止する。

「バッケスはどうした。どこに居る?」

「え?オーナーは居ませんよ」

 なんだと?

「珍しく外出されました。今日は戻らないから後は頼むと……」

 ちっ。
勘の鋭い野郎だ。
それともこれもチクった奴が居るのか。

「どこへ行った?」

「さ、さあ。さすがにそこまでは。オーナーも何も言ってませんでしたし、店が終わったら閉めて帰るだけですからね、俺たちも」

 どうする。
俺は視界の光点を見る。
しかし、こんな時間に辺りを歩く光点は二つか、三つだ。
どれものんびりと進み、中には明らかな千鳥足も見える。

 ……しかし、一応確認だけはしておくべきか。

 俺は店を出て、ボードを呼び出した。
すぐにボードはやって来た。
すぐさま飛び乗って上から光点を追う。
一人目は千鳥足で歩く酔っぱらいだった。
引き返しもう一人の所へ向かう。

 二人目は怪しい男がキョロキョロしながら歩いていた。
見たところ空き巣か、こそ泥か。
声をかけるべきか迷ったが、まだ何もしていない奴に関わっている場合でもない。
俺はその場を離れた。

 もう一つの光点は家の中へ消えていた。
他に二人居るようだが、どう見てもただの家族としか思えなかった。
押し入って確認する訳にもいかんだろう。

 やはり無駄足だったか。
しかし片腕と称されるファズが死んだ事は、すぐに耳に入るだろう。
スラッグなる人物は、もう知っているのかもしれない。
ならばきっと向こうから動きはある筈だ。

 俺は銀猫の店へと戻った。
この店ももう閉店が近かった。
客の数も少なくなっている。
俺は中へ入ると階段を上がり、銀猫が居た部屋へと向かった。

「あれ?レオさま?」

 部屋に入ると、キロが不思議そうな顔で俺を見た。

「もう終わったんですか?」

「いや、バッケスは居なかった。逃げられた」

「そうですか……」

 キロは静かにそう言うと、それ以上何も言わなかった。
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