見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六二三

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「どう言う事だ」

 バルバが尋ねる。

「バトルスーツに守られたとは言え、センチーピードノヴァをまともに食らったからな。衝撃波で表面よりも中の損傷が酷い。そのまま蘇生しても結局死んでしまう」

「じゃあ、生き返らせるのは無理なんじゃねえか」

 ガイが舌打ちをする。

「だから治療と移植の二つが必要だ。治療はまあ何とかなる。だが移植の方はちょっと難しいな」

 オオムカデンダルはさらりと言ったが、俺も含めて完全に意味を理解できている者はここには居ない。
けどまあ、ふんわりとは判る。
体に何かを埋め込むとか、代わりを造って代替えするとかそんな感じの事なんだろう。

「結局出来るのか出来ねえのか!俺たちはそこにしか興味は無い!もっと判るように言いやがれ、このムカデ野郎!」

 ガイがテーブルを叩く。

「ふふふ。威勢が良いな。結構だ」

 オオムカデンダルはカップを片手に小さく笑った。

「なぁに、難しいとは言ったが物さえあれば事は簡単だ。実は心臓が欲しい」

 なんだって。

「心臓だと……?」

 ガイが眉をしかめる。

「馬鹿な。心の臓が欲しいとは……やはり悪魔か」

 バルバも気色ばむ。

「仕方が無いだろ。生き物は心臓が無いと生きていられない」

 確かにそうだが、オオムカデンダルは嘘をついている。
心臓だろうと髪の毛だろうと、全部機械仕掛けで造れてしまう事は判っている。
第一俺がその証拠だ。
俺の体もオオムカデンダルたちの体も、全身作り物の紛い物だ。

 ならば何故、九条晃には機械の心臓を使わないのか。

「じいちゃんにも意見を求めたんだが、どうやら晃は古代秘術によって不老不死を手にする見返りに、自分の体を髪の毛一本に至るまで旧神とやらに捧げているんだとさ」

 ……つまり、どう言う事だ。

「生贄と言うくらいだからな。ナマモノじゃなければならないんだとよ。機械の体は認められない。つまり義足も入れ歯も駄目って事だ」

 なるほど。
旧神とか言われてもピンと来ないが、オオムカデンダルと賢者サルバスが言うならそうなのだろう。

 ……旧神て何だよ。
危うく聞き流す所だ。

「さあね。この世界の事は色々規格外過ぎて考え始めると時間が足りないからな。今はそう言う物だとしておこうか。時間が出来たら後で考えるさ」

 オオムカデンダルはそう言って肩をすくめた。

「……つまり晃の生存には生身の心臓が必要だと言う事か」

 バルバが唸る。

「関係ねえよ。機械の体で生き返らせるなら今さら不老不死とかどうでも良いだろ。旧神などお呼びじゃない筈だ」

 ガイが鼻息を荒くする。

「……生贄の意味を理解しているか。これは契約だ。違えたら契約違反と見なされる」

「契約違反だと」

「契約違反には必ず罰則規定がある。晃の場合、相手は旧神だからな。どうなるかはだいたい想像がつくだろ?」

 借金の形に命をもらうと言うのは最もポピュラーな物だ。
生き返らせたそばから魂を持っていかれたんじゃ、本末転倒だな。

「ま、そう言う事だ」

 オオムカデンダルが、判ったかと言う風に頷いて見せた。
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