見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
666 / 826

六六五

 ヒポグリフ。
昼間は黒い馬の姿をしている。
だが、ただの馬でない事は一目見れば判る。

 燃えるような目、炎の息、鋭い牙。
そして背中の翼。

 一方、夜は変身してグリフォンの姿になる。
ただし、ライオンの後ろ足は馬の足に、頭は蛇に置き換わる。
全身は鱗で覆われ、とてつもない速さで空を駆け抜け、鋭い鉤爪で敵を引き裂く。

 ヒポとは『馬』を指す。
つまり馬のグリフォン。
ピポグリフとはそう言う名前なのだ。

「ひ、ヒポグリフ……!」

 兵士たちは完全に腰が引けている。
まずいぞ。

「ブルルルアアッッ!ヒヒヒーンッ!」

 いなないて、ヒポグリフが再び突進してくる。

「キシャアアアア!」

 ジャバウォックが標的をヒポグリフに切り替えた。
人間などよりも危険と認知したか。
餌は後回しと言う訳だ。

 どごおっ! 

 ヒポグリフが頭からジャバウォックに突っ込む。
しかし、今度はジャバウォックも堪えた。
来ると判っていれば踏ん張れもする。

「ルロロロロロロ……!」

 ジャバウォックが呪文らしき物を唱える。

「なんだ!?」

 辺りが薄暗くなったかと思うと、暗雲が一気に拡がる。

 ゴロゴロゴロゴロ…… 

 遠くで雷鳴が聞こえたかと思った瞬間。

 ピシャアーンッ! 
ドゴロゴロガラララロローッ……! 

 空気をつん裂き、落雷が降り注ぐ。
同時に豪雨が横殴りの風と共に巻き起こった。

「嵐だと!?」

「ヒヒヒヒーンッ!」

 ヒポグリフが落ち続ける落雷の合間を縫って空を走る。
何と言う光景だ。
この世の終わりか。
俺はジャバウォックに振り回されながら、二体のモンスターの間を揺れ動く。

「くそ……せめて地上なら……!」

 俺は地に足が着かない状態で翻弄されるしか無かった。
何とかしてジャバウォックに近付かないと。
話はそれからだ。

 このままでは何も出来ない。
俺は必死に触手を引き戻す。

 ずる……

「!」

 触手がジャバウォックから外れそうになる。
雨のせいで滑っているのだ。
ただでさえ鱗に覆われたジャバウォックの表面は滑りやすい。

 どかっ!

 ヒポグリフがすれ違い様にジャバウォックの頭を踏みつけて蹴飛ばす。

 ずる!

「うおあ!?」

 完全に触手がジャバウォックから離れた。
俺は真っ逆さまに、数十メートル落下する。

 どさっ!

 大雨でぬかるんだ地面に叩き落とされて、俺の体は弾む事なく地面に突っ伏した。

「うう……」

 俺はすぐに空を見た。
もはや手出しも出来ない。
あんなモンスター同士の争いに、いったいどうせよと言うのか。

「アンタたちも今のうちに……」

 俺は振り向いて兵士たちに逃げるように促した。

「キシャアアアア!」

 振り向くと、空からジャバウォックがこちらを見ていた。
不味いぞ。

「キシャアアアア!キシャアアアア!」

 餌が逃げると思ったのか、ジャバウォックはヒポグリフを無視してこちらに突っ込んで来る。

「ブルルルアアッッ!」

 それを逃がすまいと、ヒポグリフも後ろを追って来た。

「ひいいいっ!!」

 兵士たちは慌てて退却しようとするも、雨に脚を取られて馬が上手く転進出来ない。

「……ちっ!」

 俺はとっさに間に入ると、ジャバウォックを正面から迎え撃つ。
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

居酒屋の看板娘でしたが、歌の治癒魔法が覚醒して王女に戻されました〜幼い頃に出会った側近様と紡ぐ恋〜

丸顔ちゃん。
恋愛
生まれてすぐに誘拐され、死んだとされた王女── その赤子は、実は平民街にひっそりと置き去りにされていた。 病弱な父に拾われ、居酒屋の看板娘として育ったミリア。 白い小花を髪に挿し、歌うことが大好きな少女。 自分の歌に“治癒の力”が宿っていることなど知らずに、 父と平民仲間に囲まれ、穏やかな日々を送っていた。 ある日、市場にお忍びで来ていた皇太子とその側近が、ミリアの歌声を耳にする。 皇太子は“王族にしかない魔力の波動”を感じ、 側近は幼い頃の祭りで出会った白い小花の少女を思い出し、胸がざわつく。 その直後、父が危篤に。 泣きながら歌ったミリアの声は奇跡を起こし、治癒魔法が覚醒する。 「どうして平民の私に魔力が……?」 やがて明かされる真実── ミリアこそ、行方不明になっていた王女その人だった。 王宮に迎えられ、王女としての生活が始まる。 不安と戸惑いの中、そばにいてくれるのは、 幼い頃に一目惚れし、今も変わらず彼女を見つめる皇太子の側近。 「今度こそ、君を見失わない」 歌姫王女として成長していくミリアと、 彼女を支え続ける側近の、優しくて温かい恋の物語。

やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな
恋愛
有名な3人組がいた。 アリス・マイヤーズ子爵令嬢に、マーティ・エドウィン男爵令息、それからシェイマス・パウエル伯爵令息である。 整った顔立ちに、豊かな金髪の彼らは幼なじみ。 いつも皆の注目の的だった。 ネリー・ディアス伯爵令嬢ももちろん、遠巻きに彼らを見ていた側だったのだが、ある日突然マーティとの婚約が決まってしまう。 それからアリスとシェイマスの婚約も。 家の為の政略結婚だと割り切って、適度に仲良くなればいい、と思っていたネリーだったが…… 「ねえねえ、マーティ!聞いてるー?」 マーティといると必ず割り込んでくるアリスのせいで、積もり積もっていくイライラ。 「そんなにイチャイチャしたいなら、あなた達が婚約すれば良かったじゃない!」 なんて、口には出さないけど……はあ……。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。