見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七五三

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「どけえっ！ボヤボヤするな！俺が殺る！」

　正面の男を突き飛ばし、後ろの男が俺に襲い掛かった。

「あ！馬鹿、待て！」

　突き飛ばされた男が慌てて制したが、もう遅い。

　がしっ

「うぐぐぐ……ぐ！」

　俺は難なく男の顔面を掴まえた。
投げられたリンゴを受け止めるよりも簡単だ。

「で、でめえ！離じやがで！」

「なんだって？」

「ばなぜど言っでいるんじゃあー！」

　男がわめきながら腕を振り回す。
俺の顔に何発も拳が当たっているが、蚊が刺したほどにも感じない。

「これがフェンリルか？もっと真面目にやれ」

　俺は男を地面に転がした。

　どさっ

　ゴロゴロ

　慌てて男が立ち上がる。
そして剣を抜く。

「ふん。判りやすいパターンだな。雑魚の行動パターンだ」

「やかましい！この野郎、腕は立つみたいだな。こき使い甲斐がありそうだぜ！」

「お前如きに使われるか。殺されたく無ければ帰れ」

「抜かせえ！」

　男は帰るどころか向かって来た。
なぜこうも実力差が判らないのか。

　ドカドカドカドカドカドカ！

　俺は遠慮無しに男を打ちのめした。
顔と言わず腹と言わず全てだ。

　ばきいっ！

　最後にアゴを蹴り上げる。
男は弧を描いて後ろへ飛んだ。

　どさあっ！

　男たちの足下に雑魚が倒れ込む。
一同それを俺と交互に見比べた。

「人間は弱いからな。あんまり手加減出来ない。死んでも良いなら掛かってこい」

　俺はそう言って一歩詰め寄る。

「み、緑の谷の悪魔……！」

　誰かがそう呟いた。

「コイツが……！？」

　奴らの俺を見る目が変わった。

「そうとも、俺は普通の人間とは違うからな。素手でも貴様らを引き裂ける」

「ぐ……！」

「そんな訳ねえだろ！ハッタリだあ！」

　別の男が再び襲い掛かった。

　ガキインッ！

　腕で剣を受け止める。
ホンの少し肉が裂けるが、特に痛みもダメージも無い。
とは言え、あまり生身で武器による攻撃は受けない方が良いな。

「ひっ……！」

「お前は死んでも良いんだな？」

「ひっ、あ、いや……まって……！」

「子供もそう言わなかったか？」

「まって！待って下さい！お願いしま……！」

　俺は怒りに任せて男を殴り付ける。

　ぐしゃ！

　後味の悪い音がして、男は宙を舞う。
くるくると回転しながら血を撒き散らし、地面に落ちて弾んだ。

「し、死んでる……！」

「素手でだとぉ……！」

　俺は更に詰め寄った。

「次はどいつだ？」

「ひぃ……！」

　ざざっ

　誰かが後ずさった。

「うわああっ！本物だ！悪魔だあ！」

　一人が唐突に叫んで走り出す。

「あ、待て馬鹿！」

　そしてまた一人。
後はつられて全員が逃げ出した。
仲間の死体もそのままか。

　俺は逃げた奴らは無視して、倒れている死体を物色した。
特に何も無いな。
金目の物も無いし、身分を示すような物も当然無い。

　水とわずかな干し肉。
後は、剣とバックラー。
それだけだ。

　結局何者か判らない。
まあ、盗賊の一味に何を求めている訳でも無いが、さっきの言葉が気になった。
労働力だと言っていた。
また、さらってこなければならないとも。

　他でもこんな事をやっているのか。
子供ばかりと言う訳でも無さそうだ。
俺も連れて行こうとしていたしな。

　それよりも。

　俺は振り向いた。
この子を手当てしなければ。
間に合うだろうか。
俺はボードに乗ると、すぐに屋敷へと引き返した。

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