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七五四
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ひゅーん
すたっ
俺はひとっ飛びに屋敷に戻るとボードから飛び降りた。
その足でそのまま広間へと向かう。
「その子……」
アニーが近付いて来て心配そうに覗き込んだ。
「管理人。この子の手当てを頼みたい」
俺は管理人に呼び掛けた。
「……」
だが返事は無い。
おかしい。
さっきも返事は無かった。
いったいどうしたと言うんだ。
ミスリル銀山のアジトの方だけになってしまったのか。
「大丈夫。私がやるわ」
アニーがそう言って子供を受け取る。
「大丈夫か。かなり危険な状態だ。管理人でなければ……」
「管理人と一緒にやるのよ。だから心配いらないわ」
「そ、そうか」
俺は引き下がってアニーに任せる事にした。
しかし、管理人と一緒にするって。
つまり管理人は居るのだな。
ならばどうして返事が無いのだ。
「地下でナイーダにも声を掛けてくるわ。手伝ってもらわなきゃ」
アニーはそう言って出て行った。
さて。
俺は壁に掛かった巨大なモニターを見た。
「管理人。さっきの逃亡者を追えるか?」
だが、やはり返事は無い。
どうなってんだ。
プッ
突然モニターが映像を映し出す。
点いた。
モニターには森の中を走って行く男たちが映し出されている。
なんだ。
管理人はちゃんと居るのか。
俺はなぜ返事をしてくれないのか疑問に思いながら、まあ管理人だって機嫌の悪い時くらいあるのかもな、と思った。
しかし、コイツらまだ走っていたのか。
相当にビビらせてしまったようだ。
俺は奴らが東側に向かって走っているのに気付いた。
この先は川が流れている。
俺が最初に流された川だ。
コイツらいったいどこから来たんだ。
川を上ってきたのか。
そんな馬鹿な。
あの子を追ってきたのなら、子供が川を上ってきた事になる。
それはあり得まい。
しばらく見ていると、俺は段々と驚愕してきた。
川を渡り、更に森を行く。
緑の谷は驚くほどに深い。
まだまだ森を出そうには無い。
大人の足でも中々に厳しい。
それをあの子はずーっと一人で逃げてきた事になる。
子供の足でこの距離をか。
それを追ってきたコイツらもコイツらだが。
神さまみんなを助けて。
あの少年の言った言葉が脳裏をよぎった。
そこまでして何が彼を走らせたのか。
ただ逃げていただけではこの距離は走れない。
途中で心が折れて、諦めてしまうだろう。
みんなを助けて。
そうだ。
助けを呼びに来たのだ。
彼はおそらく残されているのであろう『みんな』の為に走っていたのか。
背中に矢を受けて尚、彼は走り続けたのだ。
俺は再び怒りが湧いてきた。
モニターに視線を戻す。
行き先を突き止めてやる。
延々と森が続く。
いったいどこから来たのか想像もつかない。
やがて夜が明け始めた。
朝日が昇り、森に光が差し込む。
まだか。
長引けば長引くほどに、少年の道程がまざまざと俺に突き付けられる。
こんなに走ったのか。
愕然とする。
そうして昼を過ぎた頃、俺は行き先の見当がついた。
ジョンビア。
捨てられた街。
かつてはジョンビアに接した国があった。
もう何十年も前に戦争で王国に敗れ、滅びた国だ。
ジョンビアはそこに隣接する街だった。
だが国が滅びた事により少しずつ衰退し、今では無人の街と化している。
特に産業も資源も無く、都市のベッドタウンとして存続していた街だ。
この先にはそこしか無い。
それより先は更に何百キロも離れた国まで何も無い。
遠い。
子供の足には、途轍もなく遠かった。
すたっ
俺はひとっ飛びに屋敷に戻るとボードから飛び降りた。
その足でそのまま広間へと向かう。
「その子……」
アニーが近付いて来て心配そうに覗き込んだ。
「管理人。この子の手当てを頼みたい」
俺は管理人に呼び掛けた。
「……」
だが返事は無い。
おかしい。
さっきも返事は無かった。
いったいどうしたと言うんだ。
ミスリル銀山のアジトの方だけになってしまったのか。
「大丈夫。私がやるわ」
アニーがそう言って子供を受け取る。
「大丈夫か。かなり危険な状態だ。管理人でなければ……」
「管理人と一緒にやるのよ。だから心配いらないわ」
「そ、そうか」
俺は引き下がってアニーに任せる事にした。
しかし、管理人と一緒にするって。
つまり管理人は居るのだな。
ならばどうして返事が無いのだ。
「地下でナイーダにも声を掛けてくるわ。手伝ってもらわなきゃ」
アニーはそう言って出て行った。
さて。
俺は壁に掛かった巨大なモニターを見た。
「管理人。さっきの逃亡者を追えるか?」
だが、やはり返事は無い。
どうなってんだ。
プッ
突然モニターが映像を映し出す。
点いた。
モニターには森の中を走って行く男たちが映し出されている。
なんだ。
管理人はちゃんと居るのか。
俺はなぜ返事をしてくれないのか疑問に思いながら、まあ管理人だって機嫌の悪い時くらいあるのかもな、と思った。
しかし、コイツらまだ走っていたのか。
相当にビビらせてしまったようだ。
俺は奴らが東側に向かって走っているのに気付いた。
この先は川が流れている。
俺が最初に流された川だ。
コイツらいったいどこから来たんだ。
川を上ってきたのか。
そんな馬鹿な。
あの子を追ってきたのなら、子供が川を上ってきた事になる。
それはあり得まい。
しばらく見ていると、俺は段々と驚愕してきた。
川を渡り、更に森を行く。
緑の谷は驚くほどに深い。
まだまだ森を出そうには無い。
大人の足でも中々に厳しい。
それをあの子はずーっと一人で逃げてきた事になる。
子供の足でこの距離をか。
それを追ってきたコイツらもコイツらだが。
神さまみんなを助けて。
あの少年の言った言葉が脳裏をよぎった。
そこまでして何が彼を走らせたのか。
ただ逃げていただけではこの距離は走れない。
途中で心が折れて、諦めてしまうだろう。
みんなを助けて。
そうだ。
助けを呼びに来たのだ。
彼はおそらく残されているのであろう『みんな』の為に走っていたのか。
背中に矢を受けて尚、彼は走り続けたのだ。
俺は再び怒りが湧いてきた。
モニターに視線を戻す。
行き先を突き止めてやる。
延々と森が続く。
いったいどこから来たのか想像もつかない。
やがて夜が明け始めた。
朝日が昇り、森に光が差し込む。
まだか。
長引けば長引くほどに、少年の道程がまざまざと俺に突き付けられる。
こんなに走ったのか。
愕然とする。
そうして昼を過ぎた頃、俺は行き先の見当がついた。
ジョンビア。
捨てられた街。
かつてはジョンビアに接した国があった。
もう何十年も前に戦争で王国に敗れ、滅びた国だ。
ジョンビアはそこに隣接する街だった。
だが国が滅びた事により少しずつ衰退し、今では無人の街と化している。
特に産業も資源も無く、都市のベッドタウンとして存続していた街だ。
この先にはそこしか無い。
それより先は更に何百キロも離れた国まで何も無い。
遠い。
子供の足には、途轍もなく遠かった。
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