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七七二
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「じゃあ行こう」
俺は子供たちの救出を約束させるとすぐに立ち上がる。
「もう行くのかい。いくら何でも早急だな」
「この瞬間にも苦しんでいる子供たちの前で、それを言ってみるんだな」
「オーケー。君の言う通りだね。僕らにとっての数時間は彼らにとっては地獄の数日だ。よし、行こう」
ケンはそう言うと自らも立ち上がった。
俺たちは店を出ると、早速ある場所へと向かった。
「ここはね、大通りから路地に入ってすぐの場所だ。意外だよね。大通りにほぼ面しているのに、ここが一番子供が消えている」
確かに。
人目に付きそうな物だが。
俺はその場所から振り返って大通りを見た。
しばらく考える。
逆に言えば、人通りがある程度確認出来る。
子供が来るのも待ち構えやすく、大人が居るのも丸分かりだ。
人さえ居なくなれば、子供を連れ去るのは容易い。
ただ、どうやって逃げる。
大通りから堂々と逃げるか。
それだと目撃者は居そうな物だ。
奥に進んで裏路地から裏路地へ移動するか。
となれば、アジトはこの先だと言っているような物だ。
騎士団がこれだけ探して見つからないのは、そんな判りやすく逃走はしていない事を示している。
ならばやはり俺が抑えるしかあるまい。
オオムカデンダルや蜻蛉洲が造り上げた、この機械仕掛けの人間が、必ず見つけ出してみせる。
「お前はどうする?」
「僕も一緒に見張ろう」
「良いのか?総隊長様が長期音信不通じゃ騎士団も心配するんじゃないのか?」
ケンはかんらかんらと笑いながら答える。
「なぁに。僕が居なくても優秀な各隊長たちが居るからね。自分で考えて行動するさ」
信頼しあっているのか。
結構な事だ。
俺は、ふと笑うと、容易く建物の屋根へと飛び上がる。
「わお、凄いなやっぱり」
「お前も屋根伝いは得意だろ」
「ふふ。まあね」
言うと、ケンも屋根へと飛び上がる。
「ここで待つ。お前は好きにしろ」
「冷たいなあ。一緒に居ると言っているのに」
「ずっと行動を共にするとは限らんだろ。二手に分かれる必要も考えろ」
「ちぇ」
ケンは舌打ちした。
「気配も消しておけ。相手はその辺の用心を重ねている。敏感な筈だ」
「ふふん。僕の隠密技術を甘く見ないで欲しいな」
ケンは鼻を鳴らす。
レンジャー系の技術も持っているのか。
「君こそ気配を消し給え。丸分かりだぞ」
ケンが言う。
「そうだな。コレを使うか」
俺は懐から虫を取り出す。
「なんだいそれは。虫?」
「まあな」
テクノセクトだ。
三匹ある。
蝶型のテクトパピヨン。
カブトムシ型のテクトビートル。
そして、バッタ型のテクトホッパーだ。
「俺は少し離れていよう」
俺はそう言ってテクノセクトを放つ。
「へーぇ。君、虫使いなの?なんでも出来るねえ」
ケンが感心する。
俺はそれを無視して管理人に語りかけた。
「管理人、聞こえるかい」
「どうしたのレオ」
管理人より先にアニーが出た。
まあ、良いか。
「アニー。俺の位置が判るか?」
「ええ、判るわ。モニターに映っているもの」
そうか。
それなら話は早い。
「この通りを監視したい。怪しい人影があったら監視と追跡を管理人に頼んで欲しい」
「……判ったわ」
アニーはそう言うと一旦通信を切った。
これでそうそう追跡を振り切れまい。
俺はゴロンと屋根の上に寝転がる。
「あ、ずるいぞ自分だけ」
「この方が姿勢も低くてバレにくいだろ。じーっと見ている方が相手も気付きやすい」
「じゃあ僕も」
ケンもうつ伏せになると、頭半分だけ屋根から覗かせた。
大丈夫なのかそれ。
直接目が合ったら隠密技術があっても見つかるだろ。
頼りになるのか抜けているのかイマイチ判らんヤツだ。
俺は子供たちの救出を約束させるとすぐに立ち上がる。
「もう行くのかい。いくら何でも早急だな」
「この瞬間にも苦しんでいる子供たちの前で、それを言ってみるんだな」
「オーケー。君の言う通りだね。僕らにとっての数時間は彼らにとっては地獄の数日だ。よし、行こう」
ケンはそう言うと自らも立ち上がった。
俺たちは店を出ると、早速ある場所へと向かった。
「ここはね、大通りから路地に入ってすぐの場所だ。意外だよね。大通りにほぼ面しているのに、ここが一番子供が消えている」
確かに。
人目に付きそうな物だが。
俺はその場所から振り返って大通りを見た。
しばらく考える。
逆に言えば、人通りがある程度確認出来る。
子供が来るのも待ち構えやすく、大人が居るのも丸分かりだ。
人さえ居なくなれば、子供を連れ去るのは容易い。
ただ、どうやって逃げる。
大通りから堂々と逃げるか。
それだと目撃者は居そうな物だ。
奥に進んで裏路地から裏路地へ移動するか。
となれば、アジトはこの先だと言っているような物だ。
騎士団がこれだけ探して見つからないのは、そんな判りやすく逃走はしていない事を示している。
ならばやはり俺が抑えるしかあるまい。
オオムカデンダルや蜻蛉洲が造り上げた、この機械仕掛けの人間が、必ず見つけ出してみせる。
「お前はどうする?」
「僕も一緒に見張ろう」
「良いのか?総隊長様が長期音信不通じゃ騎士団も心配するんじゃないのか?」
ケンはかんらかんらと笑いながら答える。
「なぁに。僕が居なくても優秀な各隊長たちが居るからね。自分で考えて行動するさ」
信頼しあっているのか。
結構な事だ。
俺は、ふと笑うと、容易く建物の屋根へと飛び上がる。
「わお、凄いなやっぱり」
「お前も屋根伝いは得意だろ」
「ふふ。まあね」
言うと、ケンも屋根へと飛び上がる。
「ここで待つ。お前は好きにしろ」
「冷たいなあ。一緒に居ると言っているのに」
「ずっと行動を共にするとは限らんだろ。二手に分かれる必要も考えろ」
「ちぇ」
ケンは舌打ちした。
「気配も消しておけ。相手はその辺の用心を重ねている。敏感な筈だ」
「ふふん。僕の隠密技術を甘く見ないで欲しいな」
ケンは鼻を鳴らす。
レンジャー系の技術も持っているのか。
「君こそ気配を消し給え。丸分かりだぞ」
ケンが言う。
「そうだな。コレを使うか」
俺は懐から虫を取り出す。
「なんだいそれは。虫?」
「まあな」
テクノセクトだ。
三匹ある。
蝶型のテクトパピヨン。
カブトムシ型のテクトビートル。
そして、バッタ型のテクトホッパーだ。
「俺は少し離れていよう」
俺はそう言ってテクノセクトを放つ。
「へーぇ。君、虫使いなの?なんでも出来るねえ」
ケンが感心する。
俺はそれを無視して管理人に語りかけた。
「管理人、聞こえるかい」
「どうしたのレオ」
管理人より先にアニーが出た。
まあ、良いか。
「アニー。俺の位置が判るか?」
「ええ、判るわ。モニターに映っているもの」
そうか。
それなら話は早い。
「この通りを監視したい。怪しい人影があったら監視と追跡を管理人に頼んで欲しい」
「……判ったわ」
アニーはそう言うと一旦通信を切った。
これでそうそう追跡を振り切れまい。
俺はゴロンと屋根の上に寝転がる。
「あ、ずるいぞ自分だけ」
「この方が姿勢も低くてバレにくいだろ。じーっと見ている方が相手も気付きやすい」
「じゃあ僕も」
ケンもうつ伏せになると、頭半分だけ屋根から覗かせた。
大丈夫なのかそれ。
直接目が合ったら隠密技術があっても見つかるだろ。
頼りになるのか抜けているのかイマイチ判らんヤツだ。
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