見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七九八

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「プロテクション」

 がきいん!

 男は更にプロテクションを張った。
俺はまた壁に突撃を阻まれた。
二重にプロテクションだと。
そんな使い方見た事が無いぞ。

「何者か知らんがその形、人間か。何故透明なんだ。魔法か、魔導具か?」

 男が俺を問い詰める。

「言葉は通じるのか。それともただの人型モンスターなのか?だとしたらそんなモンスターは聞いた事も無いが」

 あっちはあっちで俺の正体を見破りかねている。

 スクリューシェイブクロウ。

 俺は手首を高速回転させる。
これでプロテクションを破壊する。
もう何度もやった事だ。

「プロテクション」

 男は更にプロテクションを重ねて唱える。
いったい何枚プロテクションを重ねられる。
こんなに連発するには、相当な魔力量を誇っていなければ不安が残る。
いざと言う時に魔力が枯渇しては元も子もないからだ。

 こいつ、魔法職なのか。
考えようとするが、プラヴァケーションの効果で暴力衝動が抑えられない。
挑発の効果は、相手の思考力低下も効果に含んでいる。

 俺は再び真っ直ぐに男へと飛び掛かる。
猪突猛進が今の俺にはピッタリだろう。

 男は易々と俺をいなした。
プラヴァケーションは行動が猪突猛進になってしまうが故に、掛かった相手の行動を単純化しやすい。
見えない敵を相手にするには打って付けだ。

 戦力としてはたいした事は無いが、戦い慣れている事は明白だった。
こう言うタイプが実は一番怖いのだ。

「ウオオオオオオオオッ!」

 俺は遂に雄叫びまで上げてしまった。
もう、透明化の意味も無い。
俺は透明化の維持を解いた。

 俺の姿がぼんやりと現れる。
月明かりに照らされて俺のグロテスクな風貌は、より一層恐ろしく見えているに違い無かった。

「な、なんだ……貴様は……!」

 男がさすがに面食らう。
動揺が見て取れる。

「オオッ!」

 俺は更に突っ込むと、プロテクションを次々に破壊する。

 バキイイイン!
バリイインッ!

 砕け散ったプロテクションが、キラキラと光を反射しながら消えていく。

「くそ、プロテクションをこんなにあっさりと……!」

 シンプルな暴力は何よりも脅威だ。 
俺の改造人間としてのパワーは、男の対応力を上回っていた。
男が劣勢にあえぐ。

「おい!居たぞ!あそこだ!」

 背後から複数の声が迫ってくる。
仲間か。
男の顔に安堵の表情が浮かぶ。

「こいつだ。見た事も無い化け物だ!」

 男が仲間に向けて声を張り上げる。

 馬鹿め。

 物の数十名の仲間など、いったい何の役に立つのか。
改造人間がどう言う存在か、教えてやる。

 俺は衝動に突き動かされるまま、男を執拗に攻撃する。

「くっ!プロテクション!」

 男はまだプロテクションを唱えた。
しかし、次第に表情に苦しさが滲み出る。
さすがに唱えすぎだ。
現役の魔法職でもそろそろ厳しい筈だ。

「うおお!くたばれ化け物!」

 背後から別の男たちが、手に手に武器を俺に振り下ろす。

 ガシッ!
ばきっ!
どかっ!
どかっ!

 だが、何の痛みも無い。
蚊が刺すほどのダメージも無い。
棍棒は砕け、剣は欠け、槍は折れた。

 ヒュッ!
ヒュッ!

 カキン!
キン!

 そしてボウガンの矢さえも弾き返す。
これだけやられても、俺は目の前の耳飾りの男にしか敵意が向かない。
挑発の魔法とは、こう言う物なのだ。

 だからプラヴァケーションは、絶対の防御力を誇る衛士の専売特許なのである。
他の職種が使うと、自分を守り切れずに自滅してしまう可能性があるのだ。

「うわああ!」

 耳飾りの男が恐怖に声を上げた。
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