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八〇二
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「ぐっ……くくぅっ……!」
耳飾りの男が切断された自分の手を拾い上げた。
「ヒ……ヒール……!」
男は自分の腕をくっ付けてヒールを唱える。
治るのか。
傷口は無くならないものの、辛うじて腕はくっ付いた。
しかし見た所、完全に治ったとは言い難い。
あくまで、腕がくっ付いたと言うだけのようだ。
重傷である事は間違いない。
「両断された自分の頭もヒールでくっ付けてみるか?」
俺は、そう男に言った。
「化け物め……!」
忌々しげに男が言う。
「外道よりも化け物の方がマシだ。貴様らなど生きているに値しない」
「くそ……!何なんだ、貴様はあっ!」
男が吼える。
「……秘密結社ネオジョルトの行動隊長、サフィリナックス。我らが世界征服の野望の為に、貴様らのようなゴミは事前に掃除しておくのも俺の仕事だ」
「な、なにをぉ……!」
男が怒りと苦痛と驚きが混ざったような、複雑な表情になる。
「世界征服だとぉ。何を勝手な……!」
「勝手はお互い様だが、俺たちにはその力がある。邪魔をするなら全てを根こそぎ平らげる」
今や世界征服の野望は、俺にとってもおとぎ話では無くなった。
オオムカデンダルたちのやり方を実際に見て、そして約束通りアニーを蘇らせてくれた事にも、俺は純粋に忠誠心のような物が強く芽生えていた。
ネオジョルトの下でなら、世界はきっと素晴らしい物になる。
いや、それ以外の方法では世界はきっと救われない。
「ふ……ふざけるなよ……!」
男が苦痛に顔を歪める。
「何を勝手に世界征服などと抜かしやがる……!俺たちこそが天下を治めるのだッ。化け物が一人暴れたくらいで、そう簡単に世界が獲れるか!」
他は俺よりも強いんだがな。
「お前たちが天下を獲る?子供を拐って麻薬を流通させて、それで天下が獲れるのか?」
「ふん……笑いたければ笑え。だが、いづれ必ずそうなる!」
何を企んでいるのだ。
益々黒幕に興味が湧いてくる。
「そうか。ならば何が何でも貴様には吐いてもらおうか」
「くくく……そうはいかん。貴様にはここで俺たちと一緒に沈んでもらう!」
なんだと。
「やれ!」
耳飾りの男が叫ぶと、突然船が大きく傾いた。
「わああああ!やめろ!止めさせろ!」
「死にたくねえ!死にたくねえよ!母ちゃあん!」
船員たちが一斉に叫ぶ。
何事なんだ。
バキシッ!
ミシミシッ!
船の外から甲板に何かが入ってくる。
なんだこれは。
ニュルニュルと蠢いて、白い何かがはってくる。
これは。
ざざざざざざ
さばああああああ
水面が大きく盛り上がる。
山のように、いや、壁のように。
船はそれに乗って垂直に滑り落ちる。
「うわああああああ!」
大絶叫が響き渡る。
阿鼻叫喚だ。
俺は子供をしっかりと抱きかかえた。
「ははははははははは!貴様も俺たちも、そしてガキどももみんな死ねば、被害は最小限だ!残念だったなあ!」
もろとも死ぬつもりか。
恐れ入ったぜ。
ざざざざざざざっ
ざああああああんっ
盛り上がった海面を突き破って何かが現れる。
「ひいいいいいい!」
男たちの悲鳴と共に現れたそいつは。
「クラーケン……!」
超巨大な水棲モンスター。
ダイオウイカよりも数十倍デカい。
まるで島だ。
水棲モンスターの中でも、シーサーペント、リヴァイアサンと共に、三指に数えられる大きさと脅威を誇る災害級モンスター。
俺も実際に見るのは初めてだ。
この貨物船などおもちゃに見える。
とんでもない大きさだ。
野郎、これも使役したって言うのか。
つまり最後の切り札って訳だ。
しかも相討ち覚悟の自決用ときた。
俺だけならば何て事も無いが、船を沈めさせる訳にはいかない。
子供たちがまだ大勢残っている。
めきめきめきめきめきっ!
クラーケンの触手がマストに巻き付いて、容易くこれをへし折った。
耳飾りの男が切断された自分の手を拾い上げた。
「ヒ……ヒール……!」
男は自分の腕をくっ付けてヒールを唱える。
治るのか。
傷口は無くならないものの、辛うじて腕はくっ付いた。
しかし見た所、完全に治ったとは言い難い。
あくまで、腕がくっ付いたと言うだけのようだ。
重傷である事は間違いない。
「両断された自分の頭もヒールでくっ付けてみるか?」
俺は、そう男に言った。
「化け物め……!」
忌々しげに男が言う。
「外道よりも化け物の方がマシだ。貴様らなど生きているに値しない」
「くそ……!何なんだ、貴様はあっ!」
男が吼える。
「……秘密結社ネオジョルトの行動隊長、サフィリナックス。我らが世界征服の野望の為に、貴様らのようなゴミは事前に掃除しておくのも俺の仕事だ」
「な、なにをぉ……!」
男が怒りと苦痛と驚きが混ざったような、複雑な表情になる。
「世界征服だとぉ。何を勝手な……!」
「勝手はお互い様だが、俺たちにはその力がある。邪魔をするなら全てを根こそぎ平らげる」
今や世界征服の野望は、俺にとってもおとぎ話では無くなった。
オオムカデンダルたちのやり方を実際に見て、そして約束通りアニーを蘇らせてくれた事にも、俺は純粋に忠誠心のような物が強く芽生えていた。
ネオジョルトの下でなら、世界はきっと素晴らしい物になる。
いや、それ以外の方法では世界はきっと救われない。
「ふ……ふざけるなよ……!」
男が苦痛に顔を歪める。
「何を勝手に世界征服などと抜かしやがる……!俺たちこそが天下を治めるのだッ。化け物が一人暴れたくらいで、そう簡単に世界が獲れるか!」
他は俺よりも強いんだがな。
「お前たちが天下を獲る?子供を拐って麻薬を流通させて、それで天下が獲れるのか?」
「ふん……笑いたければ笑え。だが、いづれ必ずそうなる!」
何を企んでいるのだ。
益々黒幕に興味が湧いてくる。
「そうか。ならば何が何でも貴様には吐いてもらおうか」
「くくく……そうはいかん。貴様にはここで俺たちと一緒に沈んでもらう!」
なんだと。
「やれ!」
耳飾りの男が叫ぶと、突然船が大きく傾いた。
「わああああ!やめろ!止めさせろ!」
「死にたくねえ!死にたくねえよ!母ちゃあん!」
船員たちが一斉に叫ぶ。
何事なんだ。
バキシッ!
ミシミシッ!
船の外から甲板に何かが入ってくる。
なんだこれは。
ニュルニュルと蠢いて、白い何かがはってくる。
これは。
ざざざざざざ
さばああああああ
水面が大きく盛り上がる。
山のように、いや、壁のように。
船はそれに乗って垂直に滑り落ちる。
「うわああああああ!」
大絶叫が響き渡る。
阿鼻叫喚だ。
俺は子供をしっかりと抱きかかえた。
「ははははははははは!貴様も俺たちも、そしてガキどももみんな死ねば、被害は最小限だ!残念だったなあ!」
もろとも死ぬつもりか。
恐れ入ったぜ。
ざざざざざざざっ
ざああああああんっ
盛り上がった海面を突き破って何かが現れる。
「ひいいいいいい!」
男たちの悲鳴と共に現れたそいつは。
「クラーケン……!」
超巨大な水棲モンスター。
ダイオウイカよりも数十倍デカい。
まるで島だ。
水棲モンスターの中でも、シーサーペント、リヴァイアサンと共に、三指に数えられる大きさと脅威を誇る災害級モンスター。
俺も実際に見るのは初めてだ。
この貨物船などおもちゃに見える。
とんでもない大きさだ。
野郎、これも使役したって言うのか。
つまり最後の切り札って訳だ。
しかも相討ち覚悟の自決用ときた。
俺だけならば何て事も無いが、船を沈めさせる訳にはいかない。
子供たちがまだ大勢残っている。
めきめきめきめきめきっ!
クラーケンの触手がマストに巻き付いて、容易くこれをへし折った。
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