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本編
取ったどー!
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鬼の背中からジンは飛び降りた。
鬼から離れると、反対の角へ移動する。
そして部屋の角までくると、ジンは鬼を振り返った。
鬼もまた首を捻ってジンを見ていた。
自らの肩越しにジンが見える。
ウウアッ、と呻き声を発して鬼はジンを追い掛けようと身体を捻った。
這いつくばったまま追い掛けようと言うのか。
肘で身体を運ぶ。
「今だ、引いてみろ!」
ジンが叫んだ。
鬼の体勢は今、ジンを見る為に振り返るような形になっている。
下を見る形だ。
チャコは合図を受けてもう一度ベルトを引っ張った。
グググッと刀がわずかに動く。
三センチほど抜けたか。
「いよっと!」
更に力を加えて引き抜きにかかる。
ズボッ! と唐突に刀は抜けた。
勢い余ってチャコは、またしても鬼の背中から転げ落ちた。
「うわあっ!」
後頭部をぶつけたチャコの顔の横に、霊剣『鬼殺し』が落ちてきた。
ガチャガチャッと音をたてて地面で跳ねた。
「あっぶね!」
チャコが焦る。
急いで刀を拾うと、チャコはジンの元へと駆け寄った。
「やった! ジンさん、ほら!」
チャコが興奮気味に刀を差し出した。
日本刀の形をしているものの、細部は何処か機械的である。
一番の相違点は、刃の部分が光っていることだ。
刃文が無く、代わりにそこが光を放っている。
「これが……鬼殺し……?」
刃物のイメージと程遠い。
刃がないのだから当然か。
こんな物で本当に斬れるのか?
「ジンさん、とにかくここを出ましょう。細かい事は後で考えれば良いです」
チャコが珍しく冷静な意見を述べた。
ジンもその意見には賛成だった。
二人は迫りくる鬼を一瞥すると、鬼殺しを持って出口に走る。
チャコは落ちそうになるズボンを両手で掴まえて、ジンの後ろを着い行く。
壁の上部に開いた穴へ飛び上がる。
縁に掴まると、懸垂の要領で穴の中へと登っていった。
脱げそうになるズボンを何とか堪えて、チャコも通路によじ登った。
後は上まで登るだけだ。
来る時にあった松明は置いてきた為に、帰りの通路内は真っ暗闇であった。
冷たい金属の感触を感じながら、二人は通路の最上部に辿り着いた。
鬼はもう叫び声を上げてはいなかった。
怒りの気配は感じない。
刀は抜けたが、ここから出られる日は来ないだろう。
死ぬ事も出来ないなら、いつまでここに居れば良いのか。
チャコはそれを考えると、やっぱり鬼が可哀想に思えた。
ジンが入り口の扉を叩いた。
すぐに扉はゆっくりと開かれた。
「無事か。さ、早く上がれ」
琢磨翁はそう言うと、ジンとチャコを引っ張り出した。
二人は表へ這い出ると、地面に転がった。
圧迫感と緊張感から解放されて、しばらく二人は仰向けに転がったままでいた。
琢磨翁はジンの右手に握られた刀を見た。
「……霊剣鬼殺し。取りおったか」
愛弟子の快挙に琢磨翁は自然と笑みがこぼれた。
二人がかりとは言え、今まで誰も取る事の叶わなかった伝説の剣である。
「先生……」
ジンが琢磨翁を呼んだ。
「ん? なんじゃ」
琢磨翁がジンに答える。
今はゆっくり休ませてやろうと思った。
明日は久し振りに山羊でも絞めるか。
山羊汁は精力が付く。
「これで、後は金剛帯ですね……」
ジンが言った。
琢磨翁は驚いた。
もう次の事を考えているのか。
この男のタフネスには恐れ入る。
「……そうだな。だがまあ、今は休め」
琢磨翁はそう言うと、入り口の扉を閉めた。
そして厳重に施錠をすると、また元の様に藪の中へと覆い隠した。
鬼から離れると、反対の角へ移動する。
そして部屋の角までくると、ジンは鬼を振り返った。
鬼もまた首を捻ってジンを見ていた。
自らの肩越しにジンが見える。
ウウアッ、と呻き声を発して鬼はジンを追い掛けようと身体を捻った。
這いつくばったまま追い掛けようと言うのか。
肘で身体を運ぶ。
「今だ、引いてみろ!」
ジンが叫んだ。
鬼の体勢は今、ジンを見る為に振り返るような形になっている。
下を見る形だ。
チャコは合図を受けてもう一度ベルトを引っ張った。
グググッと刀がわずかに動く。
三センチほど抜けたか。
「いよっと!」
更に力を加えて引き抜きにかかる。
ズボッ! と唐突に刀は抜けた。
勢い余ってチャコは、またしても鬼の背中から転げ落ちた。
「うわあっ!」
後頭部をぶつけたチャコの顔の横に、霊剣『鬼殺し』が落ちてきた。
ガチャガチャッと音をたてて地面で跳ねた。
「あっぶね!」
チャコが焦る。
急いで刀を拾うと、チャコはジンの元へと駆け寄った。
「やった! ジンさん、ほら!」
チャコが興奮気味に刀を差し出した。
日本刀の形をしているものの、細部は何処か機械的である。
一番の相違点は、刃の部分が光っていることだ。
刃文が無く、代わりにそこが光を放っている。
「これが……鬼殺し……?」
刃物のイメージと程遠い。
刃がないのだから当然か。
こんな物で本当に斬れるのか?
「ジンさん、とにかくここを出ましょう。細かい事は後で考えれば良いです」
チャコが珍しく冷静な意見を述べた。
ジンもその意見には賛成だった。
二人は迫りくる鬼を一瞥すると、鬼殺しを持って出口に走る。
チャコは落ちそうになるズボンを両手で掴まえて、ジンの後ろを着い行く。
壁の上部に開いた穴へ飛び上がる。
縁に掴まると、懸垂の要領で穴の中へと登っていった。
脱げそうになるズボンを何とか堪えて、チャコも通路によじ登った。
後は上まで登るだけだ。
来る時にあった松明は置いてきた為に、帰りの通路内は真っ暗闇であった。
冷たい金属の感触を感じながら、二人は通路の最上部に辿り着いた。
鬼はもう叫び声を上げてはいなかった。
怒りの気配は感じない。
刀は抜けたが、ここから出られる日は来ないだろう。
死ぬ事も出来ないなら、いつまでここに居れば良いのか。
チャコはそれを考えると、やっぱり鬼が可哀想に思えた。
ジンが入り口の扉を叩いた。
すぐに扉はゆっくりと開かれた。
「無事か。さ、早く上がれ」
琢磨翁はそう言うと、ジンとチャコを引っ張り出した。
二人は表へ這い出ると、地面に転がった。
圧迫感と緊張感から解放されて、しばらく二人は仰向けに転がったままでいた。
琢磨翁はジンの右手に握られた刀を見た。
「……霊剣鬼殺し。取りおったか」
愛弟子の快挙に琢磨翁は自然と笑みがこぼれた。
二人がかりとは言え、今まで誰も取る事の叶わなかった伝説の剣である。
「先生……」
ジンが琢磨翁を呼んだ。
「ん? なんじゃ」
琢磨翁がジンに答える。
今はゆっくり休ませてやろうと思った。
明日は久し振りに山羊でも絞めるか。
山羊汁は精力が付く。
「これで、後は金剛帯ですね……」
ジンが言った。
琢磨翁は驚いた。
もう次の事を考えているのか。
この男のタフネスには恐れ入る。
「……そうだな。だがまあ、今は休め」
琢磨翁はそう言うと、入り口の扉を閉めた。
そして厳重に施錠をすると、また元の様に藪の中へと覆い隠した。
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