苦い果実

花野未季

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 そんな兄ちゃんですが、同じ家に住みながら、普段は離れにある小さな小屋で暮らしていました。

 朝は日の出と共に母屋に来て、その日の作業内容を作男さくおとこさん達と打ち合わせして働きに出る。

 そして、日中ずっと農作業に従事し、夕方仕事を終えると、薪割りをしたり、農具の手入れをしたりして、そしてまた小屋に戻っていく。

 兄ちゃんは食事どきは家族とは別、と言いますか、一段低い土間で食事を摂っており、会話にも参加しないのです。

 私は兄ちゃんの存在が不思議で、母に、「なぜ兄ちゃんはみんなと一緒にご飯を食べないの?」と尋ねたことがあるのですが、母は困ったような顔で、「さあ? お母さんにはわからないわ」と答えるのみでした。

 ねえちゃんにも、何度か聞いてみたことがあるのですが、彼女も、「そんな事はは知らなくてもええんじゃ」と笑うばかり。

 ねえちゃんが、兄ちゃんの部屋に遊びに行くのを何度も見たことがある私は、そんなねえちゃんの態度も不思議に思っていました。

 なぜなら、兄ちゃんの部屋に向かうねえちゃんは、いつも鼻歌混じりで足取りも軽く、いそいそといった様子でしたから。
 兄ちゃんの部屋からは、いつも楽しそうにおしゃべりする二人の笑い声が聞こえてきましたし。

 私はませていましたから、兄ちゃんとねえちゃんは好き同士なのかな、と疑っておりました。ふふふ。
 好きな人と、たわいのないおしゃべりに興じるのって、一番楽しいことじゃないかな? ね、皆さん。
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