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「兄ちゃん、ほんとうに戦争に行ってしまうんか?」
修平が尋ねました。
「そうじゃな」
兄ちゃんの返事は、一言だけ。
「なんで、行かんとだめなんじゃろ」
誰かの声がします。
「国民の務めじゃ」
兄ちゃんの答えに納得しない私達は黙りこみました。
私は、喉がつかえたようになり、口の中の金柑をうまく飲み込めません。
「毎朝なぁ、お堂の天子様にご挨拶してから学校行くじゃろ。あれ、めんどくさいねん」
唐突な山田くんの言葉に、みんな驚きました。
戦前は、神社のお堂に、天皇陛下と皇后陛下のお写真が飾られていました。
私達の学校の近くにも、小さな鎮守様があって、おふたりのお写真が掲げられていたのです。
私達生徒は、毎朝通学途中に鎮守様に寄って、必ず直立不動で一礼してから、学校に行くようにしていました。それは習慣のようなもので、面倒だとか思ったことはありません。
「僕とこからは、お堂は遠回りになるねん」
彼の言い分は、子供らしい発想です。でも、もし大人に聞かれたら、ただでは済まなかったでしょう。
私はゴクリと金柑を飲み込みました。
「そんなこと言うたらだめじゃ」
山田くんは頷いて、
「わかってるけど、父ちゃんも戦争に連れて行かれてるし。僕は嫌いや」
彼が言おうとしている次の言葉がわかった私は、咎めるように言いました。
「山田くん、それ以上は何も言うな。大人に聞かれたら大変じゃ」
「分かっとる」
そう答える山田くんは憮然としていましたが、彼はその後、ひょうきんな笑顔で言いました。
「さすがは級長はんや!」
彼の顔からは、先ほどまでの深刻な表情は消えていました。
修平が尋ねました。
「そうじゃな」
兄ちゃんの返事は、一言だけ。
「なんで、行かんとだめなんじゃろ」
誰かの声がします。
「国民の務めじゃ」
兄ちゃんの答えに納得しない私達は黙りこみました。
私は、喉がつかえたようになり、口の中の金柑をうまく飲み込めません。
「毎朝なぁ、お堂の天子様にご挨拶してから学校行くじゃろ。あれ、めんどくさいねん」
唐突な山田くんの言葉に、みんな驚きました。
戦前は、神社のお堂に、天皇陛下と皇后陛下のお写真が飾られていました。
私達の学校の近くにも、小さな鎮守様があって、おふたりのお写真が掲げられていたのです。
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「山田くん、それ以上は何も言うな。大人に聞かれたら大変じゃ」
「分かっとる」
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彼の顔からは、先ほどまでの深刻な表情は消えていました。
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