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薬の威力
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利尿剤基、魔力回復薬の効果は絶大だった。
用意されていた聖女の部屋は離宮にあるため、儀式を行っていた迎賓館からは馬車での移動になる。
馬車に乗り込んだ時にはもうトイレに行きたかったけれど、ここにあるのはあのおまるもどきだけ。
それに、さっきそのおまるに世話になったばかりで、またしたいなんて初対面のお姉さんに言えるわけがない。
でも、馬車は私が思ってる以上にずっと過酷だった。
自動車とは比べるのも可哀想なほど揺れた。文明に感謝を捧げたくなるほど揺れた。
その衝撃が容赦なく膀胱を揺らし、疲弊した括約筋を揺さぶった。
「ふっ……うぅ……」
しわくちゃになるまで握りしめた制服のスカートの中は、すでに温く湿っている。
気を逸らすようにすり合わせる膝も、もはや気休めにしかならない。
「サヤカさま、ご気分がすぐれませんか?」
アネッサさんが心配そうに顔色をうかがっている。我慢してるなんて一つも気付いてない様子にカッと赤面した。
この国の人たちは、「トイレ」という言葉が存在しないほど排泄をしないらしい。
回復薬を飲んだとはいえ、まさかついさっきおまるひたひたのおしっこをしたばかりの私がまた我慢してるなんて選択肢にものぼらないのだ。
「あ、わた、私…………ああっ……」
じゅっ……と新たなおちびりが内股を濡らし、言葉が止まる。
咄嗟に背を丸めてお股を押さえる。はあはあと荒い息を吐き出して、その衝動を抑え込むことに全霊を捧げる。
こんなにあからさまなのに、アネッサさんは本気で馬車酔いだと思っているようだった。
「もう間も無く離宮に到着しますわ。すぐにお休みになれるよう寝台を整えさせましょう」
「や、ち、ちがっ……!」
「無理なさらないでください。私はサヤカさまのお世話係です。体調不良を隠す必要などないのですよ」
「ほんとに違くて……! おしっこ! おしっこしたいの!!」
「え?」
アネッサさんは取り繕いもなく目を丸くした。
「漏れちゃ、あ、……やぁあっ!」
馬車が跳ねた衝撃でじゅじゅとおしっこが溢れ出た。スカートまで染みてきていて、もはや一刻の猶予もない。
指で蓋をするようにぴっちり出口を押さえて、足をバタつかせる。恥も外聞もない全力の我慢。
「まあ、本当に素晴らしい魔力量ですわ。流石聖女さま」
悠長に感心している場合じゃないのに! そもそもあなたが飲ませた薬のせいじゃない!
八つ当たり気味な文句は次から次へと浮かんでくるけれど、それを口にする余裕はかけらもなかった。
用意されていた聖女の部屋は離宮にあるため、儀式を行っていた迎賓館からは馬車での移動になる。
馬車に乗り込んだ時にはもうトイレに行きたかったけれど、ここにあるのはあのおまるもどきだけ。
それに、さっきそのおまるに世話になったばかりで、またしたいなんて初対面のお姉さんに言えるわけがない。
でも、馬車は私が思ってる以上にずっと過酷だった。
自動車とは比べるのも可哀想なほど揺れた。文明に感謝を捧げたくなるほど揺れた。
その衝撃が容赦なく膀胱を揺らし、疲弊した括約筋を揺さぶった。
「ふっ……うぅ……」
しわくちゃになるまで握りしめた制服のスカートの中は、すでに温く湿っている。
気を逸らすようにすり合わせる膝も、もはや気休めにしかならない。
「サヤカさま、ご気分がすぐれませんか?」
アネッサさんが心配そうに顔色をうかがっている。我慢してるなんて一つも気付いてない様子にカッと赤面した。
この国の人たちは、「トイレ」という言葉が存在しないほど排泄をしないらしい。
回復薬を飲んだとはいえ、まさかついさっきおまるひたひたのおしっこをしたばかりの私がまた我慢してるなんて選択肢にものぼらないのだ。
「あ、わた、私…………ああっ……」
じゅっ……と新たなおちびりが内股を濡らし、言葉が止まる。
咄嗟に背を丸めてお股を押さえる。はあはあと荒い息を吐き出して、その衝動を抑え込むことに全霊を捧げる。
こんなにあからさまなのに、アネッサさんは本気で馬車酔いだと思っているようだった。
「もう間も無く離宮に到着しますわ。すぐにお休みになれるよう寝台を整えさせましょう」
「や、ち、ちがっ……!」
「無理なさらないでください。私はサヤカさまのお世話係です。体調不良を隠す必要などないのですよ」
「ほんとに違くて……! おしっこ! おしっこしたいの!!」
「え?」
アネッサさんは取り繕いもなく目を丸くした。
「漏れちゃ、あ、……やぁあっ!」
馬車が跳ねた衝撃でじゅじゅとおしっこが溢れ出た。スカートまで染みてきていて、もはや一刻の猶予もない。
指で蓋をするようにぴっちり出口を押さえて、足をバタつかせる。恥も外聞もない全力の我慢。
「まあ、本当に素晴らしい魔力量ですわ。流石聖女さま」
悠長に感心している場合じゃないのに! そもそもあなたが飲ませた薬のせいじゃない!
八つ当たり気味な文句は次から次へと浮かんでくるけれど、それを口にする余裕はかけらもなかった。
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