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我慢とは意志の強さがものを言うのである

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 マリンが行きたくなってきたカモとか可愛こぶっていたその前から、湊の方はすでに明確な尿意に苛まれていた。

 そもそもこの領域に取り込まれた時点で最後にトイレに行ってから3時間経っていたし、部活中にはスポーツドリンクを1本飲んでいる。さらに領域内でももう1本飲んでいることはご存知の通り。

 なんなら部室を出た後トイレに寄ってから家に帰ろうと思っていたくらいなのだ。
 最初に限界に近づくのは明白だった。

 普通の姿勢でじっとしていられる状況はとうの昔に過ぎていて、我慢しやすい姿勢を探してこっそり何度ももぞもぞ動く。座り直したり足を組み替えたり、兎にも角にも落ち着きがない。
 普段で言うなら、次の休み時間までは我慢できそうだけど行き損ねたら授業中に抜け出す覚悟を決めるくらいの尿意。

 スカートの下にジャージを着込んでいるくらい寒さ対策はしているのに、寒さ由来じゃない尿意の前にはこんなにも無力だ。

 足を組み、付け根をぎゅっと押さえつける。姿勢は丸めてお腹を圧迫しないように。
 でも呼吸は抑えめに、周りに気付かれないように。

 湊はキレ散らかしたい気分だった。誰かに当たりたい気分だった。
 なんでこんな目に遭わなきゃいけないの。誰がこんなバカなこと考えたのよ。許さない。絶対に許さない。
 頭の中では暴れていたが、もう初めみたいに身体を動かして暴れる余裕はない。今下手に動き回ったらあふれてしまう。

 波が収まっているときにふと顔をあげると、マリンの相手をしている凪沙と目が合った。
 凪沙は薄く笑った。それが湊には見下されたように感じられて、一瞬尿意に怒りが勝った。

ーーバカにしてバカにしてバカにして! 涼しい顔してられるのも今のうちよ。絶対おもらしなんかしないんだから!

 キィっと睨みつけたが凪沙の視線は既に外れたあと。湊の怒りは静かに燃え上がっていた。


 ところで、おしっこ我慢の後半戦は意思の力が重要になる。膀胱が本当に伸びきってそれ以上入らない状態になるまでは、強靭な意思と括約筋で収縮したがる膀胱を捩じ伏せるのだ。
 今、湊は我慢に必要な強靭な意思がある。迷いが見え、意思に翳りが出るまでは耐えられるだろう。

 そのときまでに他の2人が限界を迎えているかは微妙なところだけれども。
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