怪異・おもらししないと出られない部屋

紫藤百零

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ルールとは裏をかくためにあるのである

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 マリンが尿意を自覚してから推定1時間。
 もう行きたいカモで済ませられないところまで来ていた。

 気を逸らすためにねだっていた凪沙の話にも集中できない。

 片手は腹に添えられて、足はばたばた忙しなく揺すられる。額には冷や汗がつたっていて、時折苦しそうに眉を顰める。誰が見てもおしっこを我慢してる人の図だった。

 それよりも酷い有様なのが湊だ。
 ついにソファに座るのすら辛くなってきて、踵で股間を押さえつけるでしゃがみ込んでいる。体重をかけて押さえる力を極限まで高める体勢だ。もしかしたら、もうチビってはいるかもしれない。
 視線は下を向いたままで、ただ荒い呼吸音だけが響いていた。


「湊ちゃん、ヤバそう……」

 マリンの目が不安げに揺れる。ここまで来ると流石にマリンも湊がかなり我慢していることに気がついていた。
 自分だって余裕があるわけではないから余計にその有様が心配になる。だってアレは未来の自分かもしれない。

「湊がもらした方がマリンには都合がいいでしょう?」
「や、そうなんだけどさ~」

 直截なものいいにマリンは思わずもじと膝を擦り合わせる。出口を開けろと暴れていい加減辛い。
 なんで凪沙は平然としてるんだろう。

「それじゃあ、マリンがもらす?」
「やだ。絶対耐えるから」
「そうだ。精神攻撃は禁止していなかったわね」

 凪沙が妖しく笑った。
 今日一嫌な予感がした。

「そこに未開封のペットボトルが2本残っているわ。ねえマリン。湊は水音に耐えられると思う?」
「待ってそれはやめよ? んんっ……ウチもヤバいからさ。ね?」
「じゃあどちらかは潰れるわね」

 凪沙は笑みを湛えたまま立ち上がった。
 そのとき、太ももが一瞬震えて動きを止めたのをマリンは見逃さなかった。

「……もしかして、凪沙ちゃんも結構ヤバい?」
「…………昼休みから、行けてないの」

 凪沙はカッと目元を赤らめて目線を逸らした。

「わぁ……かわいー……」

 思わず感嘆がマリンの口から零れる。
 ずっと冷静で、平然としていた凪沙が恥ずかしがって目元を染めている。自分も動いたら漏れそうな状態じゃなければ、抱きついて撫で回したい可愛さだ。
 マリンがきゅんきゅん目を奪われている間に、凪沙はさっとペットボトルを手にして、蓋を開ける。

「ね、これで誰がもらしたって恨みっこなしよ」

 凪沙は聖母のような笑みを浮かべてペットボトルを傾けた。
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