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守れない
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顔を上げると、ソラが長谷川を押さえつけるように抱き付いている。
身長差がありすぎて、親子みたいだ。
「なんだ、お前!」
すぐに突き飛ばされ、後ろにひっくり返ったが、ソラはそのまま体を起こすと、おもむろに正座をし、地面に手と頭を付けた。その一連の動きはなんだかとても優雅で、オレも長谷川達も息を呑んで、静かに見守っていた。
「ごめん…なさい。ぼ、ぼくの…せい…だから、ぼくを…蹴って…!」
今までに聞いた中で一番大きく、ハッキリと発せられたソラの言葉。
ソラは顔を上げると、真っすぐ長谷川の目を見た。
ソラ、やめろ!という間もなかった。
ドッという鈍い音と共に、ソラはそのまま後ろに仰向けに倒れた。
長谷川の足がソラのお腹を蹴りあげたのだ。
ゲホゲホっと咽せるソラの声が静かな公園に響く。
「ソラ!!」
オレはソラに駆け寄り、体を起こした。
「こいつ、軽っ!」
わははと大声で笑う長谷川をオレは睨みつけた。
長谷川はそんなオレを見て眉を吊り上げ、
「弱いくせに、正義の味方ぶるんじゃねえよ。バーカ!」
と言い、また大声で笑いながら二人を引き連れて立ち去った。
家に帰ると、腫れあがったオレの顔を見て、祖母が慌てふためいた。
「どうしたのよ!」
泣きそうな声で問いただす祖母に、
「ケンカした」
とだけ言って、汚れた服を脱ぐため脱衣所に向かう。
祖母はすぐに濡れタオルを持ってきて、「これで冷やしなさい」と言ってオレの顔に当ててきた。
二階に上がって、オレの部屋に入ると、オレはクソ!と言いながら、床に転がっていたクッションを蹴った。
長谷川に勝てるなんて、最初から思ってなかった。でも、ソラを守れなかった自分に腹が立つ。
いや、それよりも…、ソラがオレの盾になろうとしたことに苛立ちを覚えた。
「お前、弱いくせに出しゃばんじゃねえよ!」
扉の前に立ってオレを見ているソラに怒鳴りつけた。長谷川がオレに吐いた台詞と同じ。
ソラは下を向いて固まっている。
ソラの悲しむ顔はもう見たくないのに。
「ごめん…。ウソ。ありがとな」
オレはソラに歩み寄り、そっとその体を抱きしめた。
ソラの体温がオレの体に伝わる…。
温かくて柔らかかった。ソラはじっとオレの胸に体を預けている。
体を離すと、オレは急に恥ずかしくなった。
「お菓子とってくるな」
と笑顔を作り、ソラの後ろにあるドアノブに手をかけたその瞬間、腫れあがったオレの左頬をふわっと温かい感触が覆った。
ソラの手だった。
ソラは心配そうにその頬を優しく撫でる。
「痛い…?」
柔らかそうな眉をしかめ、自分の方が痛そうな顔で聞く。
思わずその手の上に自分のそれを重ねると、柔らかく温かい感触がそこから全身に広がった。
「全然」
部屋を出て階段を降りている間、オレの心臓がずっとうるさく騒いでいた。
身長差がありすぎて、親子みたいだ。
「なんだ、お前!」
すぐに突き飛ばされ、後ろにひっくり返ったが、ソラはそのまま体を起こすと、おもむろに正座をし、地面に手と頭を付けた。その一連の動きはなんだかとても優雅で、オレも長谷川達も息を呑んで、静かに見守っていた。
「ごめん…なさい。ぼ、ぼくの…せい…だから、ぼくを…蹴って…!」
今までに聞いた中で一番大きく、ハッキリと発せられたソラの言葉。
ソラは顔を上げると、真っすぐ長谷川の目を見た。
ソラ、やめろ!という間もなかった。
ドッという鈍い音と共に、ソラはそのまま後ろに仰向けに倒れた。
長谷川の足がソラのお腹を蹴りあげたのだ。
ゲホゲホっと咽せるソラの声が静かな公園に響く。
「ソラ!!」
オレはソラに駆け寄り、体を起こした。
「こいつ、軽っ!」
わははと大声で笑う長谷川をオレは睨みつけた。
長谷川はそんなオレを見て眉を吊り上げ、
「弱いくせに、正義の味方ぶるんじゃねえよ。バーカ!」
と言い、また大声で笑いながら二人を引き連れて立ち去った。
家に帰ると、腫れあがったオレの顔を見て、祖母が慌てふためいた。
「どうしたのよ!」
泣きそうな声で問いただす祖母に、
「ケンカした」
とだけ言って、汚れた服を脱ぐため脱衣所に向かう。
祖母はすぐに濡れタオルを持ってきて、「これで冷やしなさい」と言ってオレの顔に当ててきた。
二階に上がって、オレの部屋に入ると、オレはクソ!と言いながら、床に転がっていたクッションを蹴った。
長谷川に勝てるなんて、最初から思ってなかった。でも、ソラを守れなかった自分に腹が立つ。
いや、それよりも…、ソラがオレの盾になろうとしたことに苛立ちを覚えた。
「お前、弱いくせに出しゃばんじゃねえよ!」
扉の前に立ってオレを見ているソラに怒鳴りつけた。長谷川がオレに吐いた台詞と同じ。
ソラは下を向いて固まっている。
ソラの悲しむ顔はもう見たくないのに。
「ごめん…。ウソ。ありがとな」
オレはソラに歩み寄り、そっとその体を抱きしめた。
ソラの体温がオレの体に伝わる…。
温かくて柔らかかった。ソラはじっとオレの胸に体を預けている。
体を離すと、オレは急に恥ずかしくなった。
「お菓子とってくるな」
と笑顔を作り、ソラの後ろにあるドアノブに手をかけたその瞬間、腫れあがったオレの左頬をふわっと温かい感触が覆った。
ソラの手だった。
ソラは心配そうにその頬を優しく撫でる。
「痛い…?」
柔らかそうな眉をしかめ、自分の方が痛そうな顔で聞く。
思わずその手の上に自分のそれを重ねると、柔らかく温かい感触がそこから全身に広がった。
「全然」
部屋を出て階段を降りている間、オレの心臓がずっとうるさく騒いでいた。
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