ムーンライト

くるみぱん

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ディズニーランド

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キッチンに行くと祖母がホットミルクを入れてくれていたので、戸棚からお菓子をいくつか見繕って盆に載せ、部屋に戻った。

「食べようぜ♪」

オレは気持ちを切り替える。
盆をソラの前に置いて、どさっと腰を下ろした。

「ソラ」

オレの呼びかけにビスケットを口に入れようとしていたソラは手を止め、オレを見つめる。
ソラはオレやリンと話す時、何をしていても手を止めて、相手の目をじっと見ながら話を聞く。
そのしぐさがとても育ちの良さを感じさせ、こちらもついついかしこまってしまうことがよくあった。

「オレ、弱くてごめんな。お前を守るって言ったのに、お前に守られちまった。情けねー」

頭をボリボリと掻いて苦笑いするオレをソラはじっと見つめる。
妙に恥ずかしくなり、ホットミルクのカップを勢いよく口に付けて、「あちっ!」と叫んだ。


ふふっと笑ったソラの笑顔は瞳がキラキラして、薄ピンクの口びるが三日月の形に開いている。
小さめの鼻はツンと上向きにとんがっていて、人形みたいだ。

おかっぱのせいで、より丸く見える顔の両頬が、笑うとぷくっと丸く膨れる。

「ぷはっ!お前のほっぺたって、これとおんなじだぜ!」

オレは皿からビスケットをひとつ取り、ソラの頬っぺたの横に並べた。

丸くて温かみのある黄色のサクサクのビスケット。

ソラは一瞬目を丸くしたが、すぐにまたニッと笑った。
オレはその顔にまた大笑いし、腫れた頬が引き攣って、「いで~~~!」と叫んだ。



夕食時にはすっかり気分も晴れて、オレは今日の出来事をオレたちの武勇伝に仕立て上げ、父に身振り手振りを交えながら披露した。父は驚いたり、笑ったり、心配そうになったりしながら、オレの話に耳を傾けていた。


「今度の日曜日、みんなでディズニーランドに行くか」

食べ終わった食器をシンクに運びながら、父が言った。

「行く!!」

ソラと一緒に行くディズニーランド。想像しただけでワクワクした。
嬉しくてソラを見ると神妙な顔付きで俯いている。

「父さん、ソラのお母さんから連絡あった?」

「いや、まだない。また父さんから電話するよ。日曜日のことも伝えるから大丈夫だ」

それを聞いたソラは、安堵した様子でオレを見て微笑んだ。


その夜はなぜかなかなか寝付けなかった。ソラも同じようで、何度も寝がえりを打つ衣擦れの音が聞こえていた。

「ソラ?」

声をかけてみると、こちらを向く枕を摺る音が聞こえた。
オレは天井を見つめたまま、

「お前のとうちゃん…、ほんとうのとうちゃんは、今どこにいるんだ?」

「死んだ」

すぐに返ってきた返答に、心がざわめいた。

「いつ?なんで…死んだんだ?」

「三年生の時。車の事故…」

オレは、ソラを次々と襲う悲劇の始まりが今、明かされたような気がした。

「お父さんと…、ディズニーランドに行く約束してた」

「…!」

「でも、その前に死んだ・・・」
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