日本育ちの異世界人、里帰りする

若葉 なる

文字の大きさ
3 / 12
地方都市 伊勢会津

説明が短すぎる

しおりを挟む
俺のちょっとしたおちゃめな一面も垣間見えて疑問が解決したところで、我が家も集合場所に出発しとこうかーという話になってきた。
いやいやいやお待ちくだされ皆の衆。ご存知の通り市報を読んでなかったせいでこちとら何一つ準備らしい準備出来ていないんですが? せめてパンツ、パンツだけでもリュックに入れさせてください…!

「…ここ一週間ぐらい皆がいそいそと準備をしてるのに、一人だけ普通の生活をしてるなぁと思って一応用意しておいてよかったよ…。ほら、ここに私が準備したから持って行きなさい」

苦笑いで荷物が詰め込まれているであろうパンパンのリュックを差し出してくれたおとんはマジで神。

…神なのはいいんだけど、ついでとばかりに渡してくるこのバットケースとアタッシュケースは何ですか? 怪しい何かしらの取引用なの?

「……この子の適正は分かんないからこれぐらいいるんだよなぁ……ん? あ、これ? ケース見て分かる通り中にバットが入ったバットケースと、我が家の貴重品を詰め込んだアタッシュケースだよ。旅行先にちょっとしたグラウンドがあるらしくてね、そこで市民体育大会もやっちゃおうかって話らしいよ? そこで野球大会もあるらしいから持って行ってね。 アタッシュケースは特に気にせず持っておきなさい」

都市内にかなーりデカイ運動公園お持ちの癖によそでそういうのやるとかここの市長どうしたんだ、と問いたい。あとアタッシュケースの説明が雑。とはいえ旅行なんだから貴重品持ち出しは基本と言うべきか…。





そして場所は変わって伊勢会津市役所。時刻は10時になりました。
…全市民が集まってるから出来る事と言うべきか、市役所前の道路がものっそい数の市民で埋め尽くされている。ハハハハハ、見ろ! まるで人がゴげふんげふん。

『あーあー、テステス。ただいまマイクのテスト中。チェック、ワン、ツー…チェックワンツーワンツー、しょ、しょうなのぉ? あ、ごめんなさい今のはちょっとした冗談で痛ってぇ!!』

…出発前に『ここの市長どうしたんだ』なんて言ってたけど訂正するわ。既にどうにかしてたわこの市長。マイクチェックで『おおっとここでG〇くん!』みたいな事を言いそうな人のモノマネ挟んでくるとかどうかしてるぜ!



『…えー、市長が大変失礼をば致しました。皆様、今日は待ちに待った市民旅行の日となりました。恵まれた晴天でまさに旅行日和と言える素晴らしい日ですね』

今市長に代わって挨拶をしているのは副市長。女性ながらに素晴らしい手腕を揮う事で有名な、これまた美人なお方である。お名前は江風高子かわかぜたかこさん、皆さんご存知うちのお隣さんです。
ちなみに市長の名前は伊勢海人いせかいとさん。代々この都市で市長の家系なんだとか。そりゃあ家名に伊勢を背負ってりゃ当然……当然か?

『それではただいまより市民旅行を開催いたします! 簡単な手続きを行いますので順番に市役所の中へとお入りください』

開催の挨拶に盛り上がる市民一同。市役所に近い人々から順に市役所の中に入っていく。周りからは『楽しみだねー』とか『久しぶりでテンション上がるわー』とか楽し気な声が聞こえる中、俺は思った。



…いやいやいやどこ行くねーん!



説明短すぎない? これもあれか、市報読んでない俺が全面的に理解が出来てなくて悪いのか?

と、ここで! 更なるハプニングが俺を襲う!

いつの間にかスッと居なくなっていたおとんが、市役所入り口前で江風さんと何やらお話をしつつ俺の方をチラチラ見て指差しながらうんうん頷いている。そして…



『東條龍希たつきさんは別途手続きが必要との事ですので、至急市役所前にお越しください』



迷子のアナウンスよろしく、俺の名前が高らかに呼び出しを食らったのである!

おとぉぉぉぉぉぉぉぉぉん! なぁぁぁにしてくれとんじゃぁぁぁぁあああい!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

処理中です...