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愛の痕跡
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水の錬金術師が花の想いを読み取れるのは断片的なシーンであり、水の流れを繋ぎ合わせて編集しているに過ぎない。想像と幻想による占いだと、信じられないと疑う者もいるだろう。
『沈黙を解くキーワードは?』
洋介は三浦春希が山崎知子を心から愛していると花を通じて感じていたが、その証拠を依頼者に示さなければハーブの女王は未来へと踏み出せないだろう。
時の中に散りばめられた記憶の破片を探し、水の気泡が弾ける音に耳を澄まして沈黙の恋の理由を感じ取る。
その時、三浦春希は古い写真を見つめながらカフェラテを飲み、小田圭太との想い出に浸っていた。(洋介に見えるのはその表情だけで、心の中まで見る事はできない。)
それは高校三年生のサッカー部の最後の試合が終わった時に撮った写真で、肩を寄せ合って笑顔を浮かべているが、この頃すでに小田圭太は不治の病で余命宣告をされていた。
「春希。彼女のこと、宜しく頼んだぞ」
小田圭太はその頃から何かとそんな言葉を口にするようになった。時には笑顔で揶揄うように、時には瞳を涙で濡らして真剣な表情で春希に語った。
「お前はサッカーでもプライベートでもゲームメーカーだった。知子を一番理解しているのは春希だって、俺が知らない筈がないだろ?」
圭太のポジションはFWで、高校生からストライカーとして注目されていたが、春希と一緒に大学へ行きサッカーを続ける約束をしていた。
「それが俺たちの子供の頃からの夢だったからな。お前がスルーパスを出して俺が得点する。恋もそうだったけど、人生のラストパスは俺に出させてくれ」
春希はMFでゲームの流れをコントロールする役割を担っていた。そして読書好きで物書きにも興味があり、スポーツ趣味の圭太はLINEの返信に困ると春希に相談し、いつしかスマホを渡して代筆を頼んだ。
知子との遠距離恋愛の後半は圭太が病気の検査や治療もあって、学校や病院で春希がコメントを返すようになった。
「これでいいか?」
最初は圭太に見せて了解を得て返信していたが、そのうち任せられるようになる。好きな小説、作家、映画、音楽、絵画なと不思議なくらい山崎知子と三浦春希は話が合い、価値観が同じだったのである。
「あれどう思う?」
「うん、絶対そっちの方が好き」
しかし春希は知子が親友の彼女である事を忘れた事は一度もない。圭太が病気と戦い、知子を愛していた事もよく知っていた。圭太は治療を受けながら受験勉強をして、知子と春希と三人で同じ大学に入学する夢は捨ててなかった。
しかし運命は残酷だ。奇跡は起きず、圭太は病状が悪化すると春希に心から願った。
「俺、たぶん合格してもサッカーはできないし、恋も続けられない。だから、せめて恋だけはお前にバトンを渡したいんだ。彼女を頼んだぜ」
圭太は大学の合格通知を受け取ったが、入学金は支払わずに、東京で一度だけ彼女とのデートを楽しんで北海道へ戻り病院に入院した。
東京駅のホームで圭太が新幹線に乗り込む時、見送った春希は彼女へ別れのプレゼントを贈るように頼まれた。
「絶対に病気の事は知子に話さないでくれ。俺は笑顔のまま消え去りたいんだ。そして二人が新しい恋をスタートする事を願っている」
その半年後、原発不明癌が肺と肝臓まで転移して小田圭太は亡くなった。春希は圭太との約束を守り、大学の入学式の日に小田圭太の名前で富良野ブランドの「Moon incense」というラベンダーの香水を送った。
[サヨナラ]だけのメッセージ。
カフェの窓側の席で、その時の切なくて哀しい想いを胸に蘇らせながら、春希は御守りのように財布に入れてある「Moon incense」の商品タグを出して、陽射しのあたるテーブルの上に親友の写真と一緒に並べた。
水の錬金術師は涙に濡れた瞳に、そのシーンが映ったのを見逃さなかった。
『愛の痕跡。発見……』
『沈黙を解くキーワードは?』
洋介は三浦春希が山崎知子を心から愛していると花を通じて感じていたが、その証拠を依頼者に示さなければハーブの女王は未来へと踏み出せないだろう。
時の中に散りばめられた記憶の破片を探し、水の気泡が弾ける音に耳を澄まして沈黙の恋の理由を感じ取る。
その時、三浦春希は古い写真を見つめながらカフェラテを飲み、小田圭太との想い出に浸っていた。(洋介に見えるのはその表情だけで、心の中まで見る事はできない。)
それは高校三年生のサッカー部の最後の試合が終わった時に撮った写真で、肩を寄せ合って笑顔を浮かべているが、この頃すでに小田圭太は不治の病で余命宣告をされていた。
「春希。彼女のこと、宜しく頼んだぞ」
小田圭太はその頃から何かとそんな言葉を口にするようになった。時には笑顔で揶揄うように、時には瞳を涙で濡らして真剣な表情で春希に語った。
「お前はサッカーでもプライベートでもゲームメーカーだった。知子を一番理解しているのは春希だって、俺が知らない筈がないだろ?」
圭太のポジションはFWで、高校生からストライカーとして注目されていたが、春希と一緒に大学へ行きサッカーを続ける約束をしていた。
「それが俺たちの子供の頃からの夢だったからな。お前がスルーパスを出して俺が得点する。恋もそうだったけど、人生のラストパスは俺に出させてくれ」
春希はMFでゲームの流れをコントロールする役割を担っていた。そして読書好きで物書きにも興味があり、スポーツ趣味の圭太はLINEの返信に困ると春希に相談し、いつしかスマホを渡して代筆を頼んだ。
知子との遠距離恋愛の後半は圭太が病気の検査や治療もあって、学校や病院で春希がコメントを返すようになった。
「これでいいか?」
最初は圭太に見せて了解を得て返信していたが、そのうち任せられるようになる。好きな小説、作家、映画、音楽、絵画なと不思議なくらい山崎知子と三浦春希は話が合い、価値観が同じだったのである。
「あれどう思う?」
「うん、絶対そっちの方が好き」
しかし春希は知子が親友の彼女である事を忘れた事は一度もない。圭太が病気と戦い、知子を愛していた事もよく知っていた。圭太は治療を受けながら受験勉強をして、知子と春希と三人で同じ大学に入学する夢は捨ててなかった。
しかし運命は残酷だ。奇跡は起きず、圭太は病状が悪化すると春希に心から願った。
「俺、たぶん合格してもサッカーはできないし、恋も続けられない。だから、せめて恋だけはお前にバトンを渡したいんだ。彼女を頼んだぜ」
圭太は大学の合格通知を受け取ったが、入学金は支払わずに、東京で一度だけ彼女とのデートを楽しんで北海道へ戻り病院に入院した。
東京駅のホームで圭太が新幹線に乗り込む時、見送った春希は彼女へ別れのプレゼントを贈るように頼まれた。
「絶対に病気の事は知子に話さないでくれ。俺は笑顔のまま消え去りたいんだ。そして二人が新しい恋をスタートする事を願っている」
その半年後、原発不明癌が肺と肝臓まで転移して小田圭太は亡くなった。春希は圭太との約束を守り、大学の入学式の日に小田圭太の名前で富良野ブランドの「Moon incense」というラベンダーの香水を送った。
[サヨナラ]だけのメッセージ。
カフェの窓側の席で、その時の切なくて哀しい想いを胸に蘇らせながら、春希は御守りのように財布に入れてある「Moon incense」の商品タグを出して、陽射しのあたるテーブルの上に親友の写真と一緒に並べた。
水の錬金術師は涙に濡れた瞳に、そのシーンが映ったのを見逃さなかった。
『愛の痕跡。発見……』
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