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プロファイリング
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危険なコンタクトであったが、洋介は予想以上の成果を感じ、由香里と優花が帰って来ると作戦会議を兼ねて近くのレストランでランチをする事になった。
花屋はクローズ。テラス席には穢れを清めるようにホオズキ、アサガオ、クチナシ、ツユクサ、キキョウなどの草花が置かれている。
洋介は奥のテーブル席に着くと、窓の陽射しを背にしてベラドンナの目との対決を思い起こし『魔女のプロファイリング』を始めた。
『ふっざけんな。ありえねーわ。観客がびっくりするほどの美眼だからね』
声質と話し方=年齢25~35
『それなら、見られる者が繊細なのは知ってるだろ?』
『ふん、弱者ではスターになれないのさ。お前も繊細な騎士なんだろ?死ねば」
妄想による殺意=芸能界への怨恨
『なるほど。貴方はスターだったのですね?もしくは目指していた?』
自信過剰=夢のステップ、スター候補
洋介はテーブルに両肘を付いたまま、飲み物とサラダが並ぶのをよそ目に独り言のように推測を述べた。
「犯人は俳優や歌手をターゲットにし、自分が一番美しいと妄想を抱き、巧妙に自殺に追いやって恨みを晴らそうとしている」
由香里と優花、望美と千聖がグラスやお皿を持つ手を止めて洋介の話に注視した。
「アイメークが印象的な元アイドル。五年から十年前に事件を起こし、芸能界を追放されて恨み抱く毒女。そしてこれ程の魔術を使える者を僕は一人しか知らない」
「火の錬金術師だな?錬金術師なんて単なる詐欺師と思っていたが、これで納得した。俺の事はナッチと呼んでくれ」
千歳が洋介を水の錬金術師として認め、信頼の証として真剣な表情でそう告げたが、由香里と優花はギャップを感じて笑ってしまう。
「夏川千聖だから、ナッチなのね?」
「刑事さん。意外と可愛いとこあるんだ」
「いや、何故か署内でそう呼ぶ先輩がいるだけです」
千歳が由香里と優花に恥ずかしそうに答えるのを洋介と望美は戸惑いながらも頷いた。
よく考えてみれば事件の協力を依頼されたとはいえ、花を読み解く探偵のお試しであり、性格的に水と油の関係性でしかなかった。
「ナッチ。私はノゾミンで宜しく」
「僕はなんでもいいですよ」
「それではノゾミンとヨウスケと呼ばせてもらう」
違和感はあるが千歳なりの信頼の証と捉えて、洋介は話を戻して遠慮なく水の錬金術師として刑事に指示をした。
「じゃーナッチはアイドルを抱える芸能事務所を調べて欲しい。揉め事を起こして辞めた、目が印象的な元アイドル。たぶんスキャンダルを恐れて、公式な発表はしてないと思うけどね」
「五年から十年前だな?」
千歳は洋介が話した犯人像の分析をメモに取り、早急に調べると答えた。突然素直になり姉が微笑んで洋介の脇腹を肘で小突いたが、本格的な捜査はこれからである。
「私は目の写真を元にして、毒女のモンタージュをしてみるよ」
「優花も手伝う」
夏休みで暇だからと優花が笑顔で望美とハイタッチしたが、由香里に「あなたは勉強に集中しなさい」と注意された。
「師匠……」
優花はしょんぼりして洋介に助けを求めたが、瞑想のスイッチの入った洋介は繊細な騎士として、イメージの中で剣を抜いて戦っていた。
「この殺人には証拠が存在しない。犯人を捕まえて自白させ、ベラドンナの陰謀を企てた者と戦うしかない」
洋介はベラドンナの毒女よりも、陰謀の主を倒さない限りは、死に追いやられる者が絶えない社会になってしまうと危惧した。
魔女と鎧を纏った屈強な騎士に剣を振るっても、亡霊のように消えて剣は空を切るだけである。
「難解な事件だ……」
SNSによる誹謗中傷は激化し、ごく普通の人間による暴言で傷付き、自分にしか見えない血を流して、哀しみの海に溺れて自殺した者も少なくない筈だ。
「花を踏み潰すな」
洋介は思考をチェンジし、意見を聞こうと思ったが女性陣は食事とお喋りを楽しみ、独り言を呟く洋介を置いてけぼりにしていた。
「洋介。ぼーっとしてないで食べなさい。軟弱な騎士なんだから、マッチョになって魔女を倒すのよ」
「そうだな。しかし姉貴、言葉に愛が有るからいいけど。コメント的にはかなり傷付くぜ」
そう言って洋介が水の入ったグラスを持って光に透かすと、女性陣全員が「もう、いないよね?」と笑ったが、テーブルに置いたiPhoneが魚のように震えて一瞬凍り付く。
「ご心配なく」
洋介は水を一口飲んでから画面を見せて吉川弓枝からの電話だと教え、「網にベラドンナの目が掛かったかも」と微笑んだ。
花屋はクローズ。テラス席には穢れを清めるようにホオズキ、アサガオ、クチナシ、ツユクサ、キキョウなどの草花が置かれている。
洋介は奥のテーブル席に着くと、窓の陽射しを背にしてベラドンナの目との対決を思い起こし『魔女のプロファイリング』を始めた。
『ふっざけんな。ありえねーわ。観客がびっくりするほどの美眼だからね』
声質と話し方=年齢25~35
『それなら、見られる者が繊細なのは知ってるだろ?』
『ふん、弱者ではスターになれないのさ。お前も繊細な騎士なんだろ?死ねば」
妄想による殺意=芸能界への怨恨
『なるほど。貴方はスターだったのですね?もしくは目指していた?』
自信過剰=夢のステップ、スター候補
洋介はテーブルに両肘を付いたまま、飲み物とサラダが並ぶのをよそ目に独り言のように推測を述べた。
「犯人は俳優や歌手をターゲットにし、自分が一番美しいと妄想を抱き、巧妙に自殺に追いやって恨みを晴らそうとしている」
由香里と優花、望美と千聖がグラスやお皿を持つ手を止めて洋介の話に注視した。
「アイメークが印象的な元アイドル。五年から十年前に事件を起こし、芸能界を追放されて恨み抱く毒女。そしてこれ程の魔術を使える者を僕は一人しか知らない」
「火の錬金術師だな?錬金術師なんて単なる詐欺師と思っていたが、これで納得した。俺の事はナッチと呼んでくれ」
千歳が洋介を水の錬金術師として認め、信頼の証として真剣な表情でそう告げたが、由香里と優花はギャップを感じて笑ってしまう。
「夏川千聖だから、ナッチなのね?」
「刑事さん。意外と可愛いとこあるんだ」
「いや、何故か署内でそう呼ぶ先輩がいるだけです」
千歳が由香里と優花に恥ずかしそうに答えるのを洋介と望美は戸惑いながらも頷いた。
よく考えてみれば事件の協力を依頼されたとはいえ、花を読み解く探偵のお試しであり、性格的に水と油の関係性でしかなかった。
「ナッチ。私はノゾミンで宜しく」
「僕はなんでもいいですよ」
「それではノゾミンとヨウスケと呼ばせてもらう」
違和感はあるが千歳なりの信頼の証と捉えて、洋介は話を戻して遠慮なく水の錬金術師として刑事に指示をした。
「じゃーナッチはアイドルを抱える芸能事務所を調べて欲しい。揉め事を起こして辞めた、目が印象的な元アイドル。たぶんスキャンダルを恐れて、公式な発表はしてないと思うけどね」
「五年から十年前だな?」
千歳は洋介が話した犯人像の分析をメモに取り、早急に調べると答えた。突然素直になり姉が微笑んで洋介の脇腹を肘で小突いたが、本格的な捜査はこれからである。
「私は目の写真を元にして、毒女のモンタージュをしてみるよ」
「優花も手伝う」
夏休みで暇だからと優花が笑顔で望美とハイタッチしたが、由香里に「あなたは勉強に集中しなさい」と注意された。
「師匠……」
優花はしょんぼりして洋介に助けを求めたが、瞑想のスイッチの入った洋介は繊細な騎士として、イメージの中で剣を抜いて戦っていた。
「この殺人には証拠が存在しない。犯人を捕まえて自白させ、ベラドンナの陰謀を企てた者と戦うしかない」
洋介はベラドンナの毒女よりも、陰謀の主を倒さない限りは、死に追いやられる者が絶えない社会になってしまうと危惧した。
魔女と鎧を纏った屈強な騎士に剣を振るっても、亡霊のように消えて剣は空を切るだけである。
「難解な事件だ……」
SNSによる誹謗中傷は激化し、ごく普通の人間による暴言で傷付き、自分にしか見えない血を流して、哀しみの海に溺れて自殺した者も少なくない筈だ。
「花を踏み潰すな」
洋介は思考をチェンジし、意見を聞こうと思ったが女性陣は食事とお喋りを楽しみ、独り言を呟く洋介を置いてけぼりにしていた。
「洋介。ぼーっとしてないで食べなさい。軟弱な騎士なんだから、マッチョになって魔女を倒すのよ」
「そうだな。しかし姉貴、言葉に愛が有るからいいけど。コメント的にはかなり傷付くぜ」
そう言って洋介が水の入ったグラスを持って光に透かすと、女性陣全員が「もう、いないよね?」と笑ったが、テーブルに置いたiPhoneが魚のように震えて一瞬凍り付く。
「ご心配なく」
洋介は水を一口飲んでから画面を見せて吉川弓枝からの電話だと教え、「網にベラドンナの目が掛かったかも」と微笑んだ。
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