血と肉とあばら骨のキーボード

田丸哲二

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第三現象・消えたあばら骨

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「その前に、あの金について相談がある」

 圭介は美加に後で必ず連絡すると言って帰すと、夕食の支度をする祖母と台所で相談した。

 子猫はすっかり圭介になつき、食卓の無垢板の上で左手首のガガミラノの腕時計に戯れている。子猫にしては精悍な顔付きをして、体もしっかりしていた。

「そうだね。ちょっと待ってなさい」

 祖母がそう言ってまな板と包丁を洗い、収納庫の床下から米袋に入れたお金を持って来て食卓の上においた。
 
「まだ、半分くらいは残っているよ。由樹の治療費と介護施設の料金、それと圭介の学費に使っただけだからね」

 母はシングルマザーで圭介を育て、最期まで父親が誰か明かさず、このお金が見つかった時はもう何も覚えてなかった。

「訳ありのお金だろうけど、どうしたもんかね?いっそ、燃やしてしまおうかい」

「ああ、ずっとやってみたかった事がある」

 母がこの世に残したのは縁の下に隠してあった数千万円の札束と、過去と現在の不思議な事件。

 圭介はまずこの金を葬らないと、前に進めないと思っていた。

「帰る前に、呪いと思われる痣の刻印があった。それに母が男に惨殺される妄想を見た。単なる脅しだと思ったが、首と柘榴の花の贈り物にしても、犯人は呪術師であり、本条家が関わっていると考えるべきだ」

「本条道成なら、このくらいのお金は出すと、おばあちゃんも思う」

『本条家は豪族として古来より呪術師の力でこの地を守ってきたと伝えられている』

 圭介は迷信だと、真剣には聞いてなかったが、祖母の話では柘榴の家紋がその印であり、松田家は先祖代々より血霊チダマを使える能力者であった。

『数百年前の呪いか?』


 祖母は薪風呂が好きで、何度かリフォームを勧めたが風呂だけは昔のままがいいと譲らなかった。

「お金で風呂を沸かして、豪華に過去を消し去ろうぜ」

「それ、いいわね」

 圭介の提案に祖母が微笑み、裏の納屋から一緒に薪を運んで盛大に燃やして風呂を沸かした。

 そして丁度いい頃合いに百万円の札束をほどいて数万円ずつ薪と一緒にくべる。

 その時、祖母と圭介は炎の照り返しに笑みを浮かべ、子猫の鳴き声が家の中からして、母の霊だけではなく先祖の霊が集合して賑う妖しい雰囲気になった。

 風呂場は白いタイル張りで、浴槽は狭いが窓を開けると山間に沈む夕陽が見える。

 圭介は全裸になり、湯加減を見て湯船に浸かると、子供の頃こうやって外で薪をくべる祖母と話した事を懐かしく感じた。

「どうだい?圭介」

「ああ、いい湯だよ」

 圭介は細身に見えるが、格闘ジムで鍛えているので全身の筋肉は盛り上がり、体が温まると左の上腕に紅色の痣が浮き上がる。
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