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第三現象・消えたあばら骨
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「幼い頃、俺が生き埋めにされた時に何があったんだ?」
圭介はそれがトラウマになり、母と能力を嫌い、その事件の記憶を消し去って触れないようにしていた。
暫く祖母は何も言わなかったが、赤い炎を見ながらぼそぼそと話し始めた。
「本条家が昔、この地を支配していた事は知っとるだろ?」
「そんな昔話から始めるのか?」
「もちろんさ。その過去より、この町の者は呪われているんだ」
祖母はそう言って、薪と札束の燃え盛る炎の奥に血の海を見ていた。そこには幾多もの人間の体が切断され、首や腕や足が血の泥の中から突き出ていた。
老若男女問わず、子供までもが惨殺されて血塗られている。
「圭介、背中流してやるよ」
暫くすると、祖母がそう言って裾を捲って風呂場へ来て、湯船から上がった圭介の背中に石鹸をつけて洗い始めた。
「本条家の柘榴の木の下の土中には惨殺された死体が山のように眠っている。それが呪いの源になり、本条家は呪術師の力で他国の敵を呪い殺したと云われている。それがこの土地の部族が生き残る手立てだったそうだが、その血の呪いを信じて、本条家と呪術師を未だに恐れる者がこの町に存在する」
それは霊媒師だった曽祖母に、清子が子供の頃に聞かされた恐ろしい光景であるが、今でも頭の中に映像として鮮やかに焼き付けられていた。
「しかし、それが俺の幼い頃の事件とどう関係する?」
「おまえが誘拐されて、由樹は狂ったように町を探した。全員を疑っていたのさ。印のある子を殺してやると、脅かされていたからね」
「まさか?町ぐるみの犯行だったのか?」
「わからない。ただ、それで由樹は能力を使ってお前を探し救出した」
母は一人で夜の野山を彷徨って不思議な力を使い、生き埋めにされた圭介を掘り出した。
誰も信じる事が出来ず、狂ったように土を掘り起こしたのだろう。雨に濡れた土を素手で掘り、爪が剥がれて、血が吹き出しても必死に幼い我が子を救おうとした。
あの時、土の中で母の呼ぶ声が聴こえたのを夢のように覚えている。
「その一件で、さらに由樹は町の者に恐れられた」
圭介はフロントガラスに積る砂を掻き出す母の手の指先が、真っ赤な血で染まっていくシーンを頭の中に蘇えらせた。
「母は俺の頭の中にずっといる」
祖母は圭介のその呟きを吉兆のように、力を込めて圭介の背中を擦って諭した。
「圭介。おまえは強い子だ。母以上の能力があるかもしれない。でも、それを復讐の為などに使うなよ。町の者を助けてやればいいのさ」
「わかってる。今からでは遅いかもしれないが、俺も母のように全力で戦う」
そして左の上腕の痣が鮮やかな柘榴の実の断面になって皮膚に浮き上がり、圭介は瞳に溢れる涙で苦しみと悲しみを洗い流した。
『俺の心は埋もれたままだった』
[柘榴の家紋]
それは霊能力を持つ者の印である。
圭介はそれがトラウマになり、母と能力を嫌い、その事件の記憶を消し去って触れないようにしていた。
暫く祖母は何も言わなかったが、赤い炎を見ながらぼそぼそと話し始めた。
「本条家が昔、この地を支配していた事は知っとるだろ?」
「そんな昔話から始めるのか?」
「もちろんさ。その過去より、この町の者は呪われているんだ」
祖母はそう言って、薪と札束の燃え盛る炎の奥に血の海を見ていた。そこには幾多もの人間の体が切断され、首や腕や足が血の泥の中から突き出ていた。
老若男女問わず、子供までもが惨殺されて血塗られている。
「圭介、背中流してやるよ」
暫くすると、祖母がそう言って裾を捲って風呂場へ来て、湯船から上がった圭介の背中に石鹸をつけて洗い始めた。
「本条家の柘榴の木の下の土中には惨殺された死体が山のように眠っている。それが呪いの源になり、本条家は呪術師の力で他国の敵を呪い殺したと云われている。それがこの土地の部族が生き残る手立てだったそうだが、その血の呪いを信じて、本条家と呪術師を未だに恐れる者がこの町に存在する」
それは霊媒師だった曽祖母に、清子が子供の頃に聞かされた恐ろしい光景であるが、今でも頭の中に映像として鮮やかに焼き付けられていた。
「しかし、それが俺の幼い頃の事件とどう関係する?」
「おまえが誘拐されて、由樹は狂ったように町を探した。全員を疑っていたのさ。印のある子を殺してやると、脅かされていたからね」
「まさか?町ぐるみの犯行だったのか?」
「わからない。ただ、それで由樹は能力を使ってお前を探し救出した」
母は一人で夜の野山を彷徨って不思議な力を使い、生き埋めにされた圭介を掘り出した。
誰も信じる事が出来ず、狂ったように土を掘り起こしたのだろう。雨に濡れた土を素手で掘り、爪が剥がれて、血が吹き出しても必死に幼い我が子を救おうとした。
あの時、土の中で母の呼ぶ声が聴こえたのを夢のように覚えている。
「その一件で、さらに由樹は町の者に恐れられた」
圭介はフロントガラスに積る砂を掻き出す母の手の指先が、真っ赤な血で染まっていくシーンを頭の中に蘇えらせた。
「母は俺の頭の中にずっといる」
祖母は圭介のその呟きを吉兆のように、力を込めて圭介の背中を擦って諭した。
「圭介。おまえは強い子だ。母以上の能力があるかもしれない。でも、それを復讐の為などに使うなよ。町の者を助けてやればいいのさ」
「わかってる。今からでは遅いかもしれないが、俺も母のように全力で戦う」
そして左の上腕の痣が鮮やかな柘榴の実の断面になって皮膚に浮き上がり、圭介は瞳に溢れる涙で苦しみと悲しみを洗い流した。
『俺の心は埋もれたままだった』
[柘榴の家紋]
それは霊能力を持つ者の印である。
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