愛と禁欲のサーガ・腐食の魔法[第一部・人間界都市編]本格的異世界LOVEバトル・ファンタジー

田丸哲二

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第四章・人間界での戦い

スパックの情報

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 ウルズの泉で戦士チームが最終ゲートを通り抜けたのをスパイしたスパックは、カエル泳ぎで猛スピードで水中を潜って人間界へワープし、お台場の海から堤防に上がると、超音波の鳴き声をあげてエロガラスを呼んだ。

「ゲオ、ゲオ……」

 二本のツノの先にある目が揺れるのを夕暮れ空から見つけたエロガラスが上空を旋回し、ゆっくりと降下して来ると、スパックはツノを引っ込めて堤防を走りながらその背中に飛び乗った。

「ブェッ」

 人間界の伝書鴉は額に白いメスのマーク記号があり、全身は真っ黒なので普通の鴉とほとんど見分けがつかない。

 エロガラスがくすんだ夜空に舞い上がり、背中にしがみ付くスパックと会話しながら飼い主の元へ向かう。

「奴らがクルゲロ」

「スマフグをやっつけたか?」

「アア、ご主人様もアブナイゲロ」

 エロガラスもスパックも商人ヤズベルに飼われる身分だったが、異界の殆どの生物がヤズベルを嫌っていた。

 金の為なら汚い真似でも何でもやる最低の商人で、捕獲した生物は奴隷扱いされ、逆らうと首に埋め込まれた毒のカプセルで抹殺される。

 商品として売られた者は幸運で、優秀で賢い者ほどヤズベルは手元に置いて諜報員としてこき使った。

「オモシロクなるゲロ」

「しかし、あの魔術師はコエー」

「たしかにゲロ」

 スパックを背中に乗せたエロガラスは品川の高層ビル群の間をすり抜け、羽田空港が見えてくると多摩川沿いにある広い庭付きの邸宅へ舞い降りてゆく。

 ヤズベルが人間界に拠点を置き始めたのは神々の戦いで財産を没収され、流浪の商人となって辛苦を舐めていた頃にランスマンダーという魔術師と知り合ったからだ。

 恐ろしい計画を企んでいる事を耳にして、かつてのような地位と財産を築くチャンスかも知れぬと、ランスマンダーが住む近所に家を購入して情報を集めて商売に励んでいる。

「ヤズベル。スペアキーはないの?」

 マンダー家の長女ファラが広いリビングでヤズベルを四つん這いにさせて馬乗りになり、股を開いて鉄の下着の鍵穴を覗き込んで文句を言った。

(禁欲の鉄の下着はドルトンの原子記号が刻まれ、股の中央にライプニッツの四大元素を表す円型の図形があり、三角形の鍵穴があった。ヤズベルが闇の鍛冶屋に作らせた特殊な装着物である。)


「お前の事だから、それくらいは作ってあるんだろ。父には秘密にするから出しなさい」

 ファラは黒革のブラとコルセットをして、手に持った鞭でヤズベルの尻を叩いて責め立てた。

「なんで禁欲のパンツなんて作ったのよ」

「ファラさま。お許しください。鍵はランス様しか持ってないのです」

 ヤズベルはズボンを脱がされビシバシと尻を叩かれ真っ赤に腫れ上がっている。

 興奮したファラは馬乗りのままヤズベルを仰向けにさせて両腕を掴み、乳房を無理やり触らせ、赤い唇でヤズベルに迫ったが、窓ガラスをコツコツ叩く伝書鴉に気付き、慌てて悶えるファラを押し退けて立ち上がった。

「アゥ、アッアァ~」

 床に寝転がり、黒髪ロングの眼鏡美女はブラの中に赤いネイルの指をねじ込んで巨乳を揉み、鉄の下着を拳で叩いて絶頂を迎えた。

 窓の外からエロガラスとスパックがガラス越しに室内を眺めて苦笑いをしていると、ズボンを穿いて身なりを整えて近寄って来たヤズベルが窓を開けた。

「なんだ?」

 ヤズベルは威厳を保った表情で伝書鴉とスパックに問い、四つん這いになって尻を鞭で叩かれていた事など払拭している。

「ブェッ」

「お知らせ、戦士チームがキタゲロ」

「スマフグを倒して、最終ゲートを通ったというのか?」

 スパックは窓枠に座って丁寧に頷き、エロガラスは室内の匂いを嗅いで澱んだ空気に目を細めた。

「なんなの?ヤズベル」

「アルダリです。貴方のお父様の古きライバル
が人間界に現れたようだ」

「へえー、そうなんだ。また金儲けができるじゃない」

「いえ、戦いは苦手なので、静観させていただきますよ」

「ふん、策略家ですこと」

 ファラは鉄の下着で立ち上がり、黒革のブラとコルセットの上から赤いワンピースを着る。長身でスリットの入ったロングスカートから美脚を際立たせて窓辺へ歩いて来る。

 それを見たエロガラスは慌てて飛び立ち、スパックもツノを伸ばして目を回して動揺した。

「なんで逃げる」

 目尻を吊り上がらせ、両手で鞭を弓のように曲げて窓から放つと、空中で回転してエロガラスを掠め、もげた羽根を飛び散らして近くの公園へふらふらと降下してゆく。

「メスガラスなので、ファラさまのフェロモンが苦手なのですよ」

 ヤズベルはそう言ったが、鉄の下着で抽出されるエレメントを危険物と嗅ぎ取ったのだと思い、自分のペニスが萎えるのを感じた。

 エレメントの原液は無害であるが、秘密の調合により恐ろしい物質に変化する。

「ランス様にはファラさまから、アルダリ率いる戦士がこちらに来たとお伝えください。この情報は無料サービスです」

「当たり前よ。楽しんでるところを邪魔しやがって。異界の生物は嫌い。ちょっと知恵があると思って生意気なんだ」

「め、めっそうもないゲロ」

 スパックもマンダー家の者を恐れて逃げたかったが、蛇に睨まれたカエルのように心臓がバクバクして動けない。

「それで、そいつら、強いの?」

 そう言って赤いネイルの指をスパックの腹に食い込ませて摘み上げ、顔を近付けて赤い舌でスパックの顎を舐める。

「い、いえ。弱いゲロ」

 本当はめちゃ強くて、ヤズベルもマンダー家も負ければいいんだと、ドラゴンの神器でスマフグを倒した事は内緒にした。

「ガキと女の子とナンパなイケメンとスケベジジイ。強い戦士はいないゲロ」

「ふ~ん。ならスマフグはどうした?」

「金貨に目がくらんだゲロ」

 その言葉を聞いてファラはスパックを外に放り投げ、文句を言いたそうなヤズベルを睨んで人差し指を向けて女教師のように注意する。

「父はウルズの泉から入れるなと言ってた筈。ヤズベルの失態だと報告しておきますよ。さっきキスを押し退けたのもマイナスポイントとしますわ」

 ファラがそう言い捨ててリビングを出て行き、ヤズベルがぺこぺこと頭を下げて丁重に玄関まで見送ったが、心の奥底では顔を顰めて愚痴っていた。

『まったくヒステリックになると、手がつけられねーぜ』
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