愛と禁欲のサーガ・腐食の魔法[第一部・人間界都市編]本格的異世界LOVEバトル・ファンタジー

田丸哲二

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第四章・人間界での戦い

ウルガンの憂鬱

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 ウルガンがガレージからフォルクスワーゲンの旧車を出して通りに止め、ファラが現れるとドアを開けて後部席に乗せた。

「カッコいいじゃない」

 ソフトモヒカンのウルガンはサングラスをすると精悍なハリウッドスターに見えたが、不似合いな太い皮の首輪をシャツの襟を立てて隠している。

「いえ、とんでもないです」

 暫し異世界に住んでいた頃の話をして、ファラの機嫌は良かったのだが、住宅街を抜けてメインストリートに出ると、運転手の座席をファラが蹴って急に文句を言い始めた。

「しかし、たかが人間。なんで私なのよ?」

「ランス様がファラさんの力を認めているからです」

 四姉妹全員に言える事ではあるが、鉄の下着のストレスで機嫌が急降下する。特にウルガンは長女のファラが苦手だった。

「娘を都合良く使ってるだけだ。こんな生活なんて、もーうんざり」

「オレはけっこう好きですよ。人間界は嫌いですか?」

「当たり前だ。父が人間の研究などで我らの企みがバレると心配してるのが理解できない」

 憂さ晴らしとはいえ、黒髪を掻き乱し、赤いルージュの唇を突き出して愚痴を言うファラのギャップは著しい。

『人間の眼鏡美女に化けているが、本性は恐ろしい魔女だ』

 ウルガンは四姉妹が暗黒の黒い泥から作られた事を知っている。その長女ファラが鞭とリードを手にしているのをバックミラーで見て動揺した。

「まあ~、人間狩りは楽しいけどね」

 狼族のウルガンは聴覚臭覚とも優れ、追跡能力には自信があったが、それを発揮するには痛みを伴う。

『そこまでする必要があるかよ?』

 そう心の中で呟いたが、中山教授の家の付近に車を止めると、すぐに背後から首輪にリードを付けられた。

「行くわよ」

 先に車を降りたファラにリードを引き寄せられ、ウルガンは運転席で上着を脱いで首輪を緩めて通りに立った。

 すると屈辱感から怒りが湧き上がり、耳が三角に伸びて鼻面が前に飛び出す。

「ウグゥ、グッガァ……」と呻き、筋肉も盛り上がってシャツが破け、その背中をファラに鞭で打たれて四つん這いになる。

 狼族のウルガンは普段は懐古趣味の従順な性格なのだが、狼に変身する時の痛みで凶暴になり、殺戮の欲望に駆られた。

「まだ、殺しちゃダメよ。情報を聞き出すのが目的だからね」

 ファラはそう言って、勢いよく走り出そうとしたウルガンをリードを引き寄せて制したが、ウルガンが振り向くとその顔は笑っている。

「狩りがそんな楽しいか?」

「もちろんよ。ウルガンの醜い姿が好き。その舌でアソコを舐めるのを想像すると、鉄の下着がヌルヌルするんだ」

『フン、舌が腐るぜ』


 閑静な住宅街の通りを背の高い眼鏡美女が服を着た奇妙な大型犬を連れて歩いたが、あまりにも堂々と散歩しているので、二度見しただけで通り過ぎた。

「まっ、バレても警察が来る前にひと暴れして逃げればいいわ」

 ファラはウルガンを虐めればもっと筋肉が盛り上がり、無敵の狼族に変貌するのを知っていたが、人間一人を狩るだけなのでこの位で十分と満足している。
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