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第一章・幻の小説
霊界のパスワード
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「やっば、連くん変ですね」
教員室を出て隣の面談室へ入って行く連と景子先生を柱の陰に隠れて順也と久美子が見ていたが、連は完全にうわの空で気付かず、景子先生はチラッと振り向いて微笑む。
ピッ、ピッ、ツルゥルー……っと、パルス信号が耳鳴りのように聴こえ、連は景子先生が手にするiPhone9を背後から視線を釘付けにして面談室に入り、デスクを挟んで向かい合って席に着く。
「先生。脳がWi-Fiになってる感じがします」
「あらっ、私にも使わせて。パスワードは何かしら?」
「それが、まだ僕にも分からず。悩ましいです」
「そう。困ったわね」
連のユニークな発言に景子先生は微笑み、デスクの上に携帯電話を置いて親身になって話し始めた。個性的なのは良いとしても、もう少し協調性があればと思っている。
「先生が小説を書くように勧めたから、連くんが一生懸命なのは嬉しいのよ。でも、こんな事されたら、先生が間違った指導をしてることになるでしょ。ねっ……連くん、聞いてる?」
その時、連は微かにiPhone9が光ったのを見逃さなかった。先生が説教をし始めるが、それが気になって頭に入らない。
連はブツブツと呟き、パチパチと瞬きを繰り返す。口の中で舌を回転させ、頬を膨らませてプルプルさせ、明らかに症状がおかしいので流石に景子先生も慌て始めた。
「大丈夫?病気?それともふざけてるの?」
室内灯がチカチカと点滅し、景子先生は超常現象が起こっているのかと怖くなった。
しかも連の異常な動きは停止したが、テーブルの携帯電話が激しく震えて動き出し、地震かと勘違いしてテーブルの端を両手で掴んで押さえる。
「な、なんなの?」
連は目を閉じたまま景子の質問には答えず、瞼の裏に英字のテロップが映って左から右に流れて消えてゆくのを視て、一文字ずつゆっくり声に出して読んだ。
『g ・h ・o ・s ・t 』
「えっ?」
「ゴースト……パスワード」
理解したと同時に、連の脳がWi-Fiになって霊界のネットワークとつながり、頭の中に膨大な電波が流れ寄せ、連には春の風が頭の中を吹き荒れているように感じたが、デスクで震えているiPhone9に手を伸ばして掴むと、連の体が一瞬バチっとスパークして、感電したようにiPhone9を握り締めたままバタッと気絶したのである。
『オーバーヒート』
涎を垂らして、白目を剥いて不気味に微笑む連であったが、textデータが2.4GHz帯の周波数に変換されてiPhone9のメモアプリ書き込まれ、それと同時期にネットサイトにも掲載された。
不思議な事に、その小説は連のiPhone9・スペースブラックから投稿されたのである。
教員室を出て隣の面談室へ入って行く連と景子先生を柱の陰に隠れて順也と久美子が見ていたが、連は完全にうわの空で気付かず、景子先生はチラッと振り向いて微笑む。
ピッ、ピッ、ツルゥルー……っと、パルス信号が耳鳴りのように聴こえ、連は景子先生が手にするiPhone9を背後から視線を釘付けにして面談室に入り、デスクを挟んで向かい合って席に着く。
「先生。脳がWi-Fiになってる感じがします」
「あらっ、私にも使わせて。パスワードは何かしら?」
「それが、まだ僕にも分からず。悩ましいです」
「そう。困ったわね」
連のユニークな発言に景子先生は微笑み、デスクの上に携帯電話を置いて親身になって話し始めた。個性的なのは良いとしても、もう少し協調性があればと思っている。
「先生が小説を書くように勧めたから、連くんが一生懸命なのは嬉しいのよ。でも、こんな事されたら、先生が間違った指導をしてることになるでしょ。ねっ……連くん、聞いてる?」
その時、連は微かにiPhone9が光ったのを見逃さなかった。先生が説教をし始めるが、それが気になって頭に入らない。
連はブツブツと呟き、パチパチと瞬きを繰り返す。口の中で舌を回転させ、頬を膨らませてプルプルさせ、明らかに症状がおかしいので流石に景子先生も慌て始めた。
「大丈夫?病気?それともふざけてるの?」
室内灯がチカチカと点滅し、景子先生は超常現象が起こっているのかと怖くなった。
しかも連の異常な動きは停止したが、テーブルの携帯電話が激しく震えて動き出し、地震かと勘違いしてテーブルの端を両手で掴んで押さえる。
「な、なんなの?」
連は目を閉じたまま景子の質問には答えず、瞼の裏に英字のテロップが映って左から右に流れて消えてゆくのを視て、一文字ずつゆっくり声に出して読んだ。
『g ・h ・o ・s ・t 』
「えっ?」
「ゴースト……パスワード」
理解したと同時に、連の脳がWi-Fiになって霊界のネットワークとつながり、頭の中に膨大な電波が流れ寄せ、連には春の風が頭の中を吹き荒れているように感じたが、デスクで震えているiPhone9に手を伸ばして掴むと、連の体が一瞬バチっとスパークして、感電したようにiPhone9を握り締めたままバタッと気絶したのである。
『オーバーヒート』
涎を垂らして、白目を剥いて不気味に微笑む連であったが、textデータが2.4GHz帯の周波数に変換されてiPhone9のメモアプリ書き込まれ、それと同時期にネットサイトにも掲載された。
不思議な事に、その小説は連のiPhone9・スペースブラックから投稿されたのである。
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