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第ニ章・ゴーストの正体
幽霊の噂
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小説サイトに幻の小説と噂された『ミレフレ』が投稿された日の夜。藤枝景子はマンションの上階の一室から運河の流れる美しい五条市湊川町の風景を眺め、学校の面談室での出来事を思い起こした。
「不思議だわね……」
面談室で東野連と向き合って景子が話していると、連が何かに憑依され、ポルターガイストが起こったと恐怖したが、連は保健室で少し休むと元気を取り戻して友だちと一緒に帰った。
「まさかとは思うけど」
窓側のライティングデスクにMacBookが置いてあり、ワイングラスを横に置いて椅子に座ると、ネットワーク設定を開いてWi-Fi環境を調べ、パスワードを打ち込んで接続できるか試してみる。
「ghost……」
しかしどれも連が呟いたパスワードではWi-Fiスポットは繋がらず、景子は苦笑いしてワインを飲み、本棚から学生時代に出版された唯一の本『死神と私の恋愛考察』を手に取った。
「私ったら、何考えてんだろ?」
景子は作家になる夢を諦め、大学を卒業すると教師になり五条霧笛学園で国語の教鞭を執り、教育の一貫として物語の書き方を教えた。
特別選択教科として希望者に講義をし、連と文子と順也と久美子はその時の熱心な生徒たちで、高校に進学すると景子が担当するクラスになったのである。
そしてミステリーやファンタジー小説は今も大好きであるが、面談室での現象を気にかける理由がもう一つあった。
「あれは、何だったんだろう?」
五条霧笛学園は中高一貫校で、連たちが中学三年生の頃、校舎内で不思議な出来事が何度か起きて、幽霊がいると噂になった事がある。
景子も一年前の雨の日の夕方。学校の図書館で脚立に乗って本棚の整理をしていた時、本が宙に浮かび、少し離れた本棚に収まるのを目撃して、脚立から落ちてお尻を床に打ち付けてしまった。
更に教師と生徒から聞いた話しであるが、景子自身が経験した事もあり、全て嘘とは思えなかった。
[部活で帰りが遅くなった生徒が、暗い教室のガラス窓に白い人影が映っているのを目撃した。]
[消した筈の教室の黒板にドラエモンの絵が描いてあり、朝一番に登校した生徒が見つけた。]
[宿直の先生が誰もいない筈なのに、パソコンのキーボードが押されて文字が打たれた。と同僚の先生に漏らす。]
そんな幽霊が出るという都市伝説が学園全体に広がったが、数ヶ月後には怪奇現象は消え失せ、教師も生徒たちも何事もなかったように忘却した。
その当時、景子も小説サイトに出没する幻の小説の噂を耳にしたが、特に気に留めることもなく、幻の小説がサイトに出現し始めた頃と学校での幽霊の噂の時期が重なっていたが、景子を含めてこの二つを関連付けて考える者は皆無だった。
東野連の家は学園から二十分程歩いた住宅地にあり、文子と順也と久美子の家も歩いて帰れる距離なので、カフェ『Bi-hún』を出て通りで別れ、家族団欒の夕食のあと風呂に入り、自室に入って勉強の合間にスマホやタブレットで幻の小説を読み、真夜中になるとLINEで話題にした。
高台の一戸建ての二階に連の部屋があり、窓側に勉強机、本棚にはコミックとライトノベル小説が並び、壁にアイドルのポスターが貼られ、隅にギターが立て掛けてある。
連はベッドに横になって、毛布をはだけて大の字になって眠っていたが、窓ガラスに少女の上半身が薄っすらと映り、机の上のiPhoneに月明かりが差している。
少女はシルバーのミディアムヘアーで、ブルーラインの白いシャツ、襟元にピンクのリボンをして、スカートはチェック柄のスカートを穿き、机の上のiPhoneの画面を覗いて椅子に座った。
『私、一気読みしたよ』
『僕も拝読した。もー、感動もん』
『なんかスゴくて。自信喪失』
『こんなファンタジー、書いてみたい』
『ん?レンは?』
『寝たんじゃない。笑』
『しかし、連のパフォーマンスにはマジで驚いた』
『イリュージョン』
『魔術師の才能はあるね』
『じゃー、そろそろ寝る?』
『連みたいに授業中に居眠りしないようにな。バイバイ』
『おやすみ~』
『good night』
『オヤスミ』
最後のコメントは連のiPhoneからだったが、送信したのは少女のゴーストであり、連は何も知らずにベッドで寝返りをうち、スィート・ドリームに涎を垂らして微笑んでいる。
「不思議だわね……」
面談室で東野連と向き合って景子が話していると、連が何かに憑依され、ポルターガイストが起こったと恐怖したが、連は保健室で少し休むと元気を取り戻して友だちと一緒に帰った。
「まさかとは思うけど」
窓側のライティングデスクにMacBookが置いてあり、ワイングラスを横に置いて椅子に座ると、ネットワーク設定を開いてWi-Fi環境を調べ、パスワードを打ち込んで接続できるか試してみる。
「ghost……」
しかしどれも連が呟いたパスワードではWi-Fiスポットは繋がらず、景子は苦笑いしてワインを飲み、本棚から学生時代に出版された唯一の本『死神と私の恋愛考察』を手に取った。
「私ったら、何考えてんだろ?」
景子は作家になる夢を諦め、大学を卒業すると教師になり五条霧笛学園で国語の教鞭を執り、教育の一貫として物語の書き方を教えた。
特別選択教科として希望者に講義をし、連と文子と順也と久美子はその時の熱心な生徒たちで、高校に進学すると景子が担当するクラスになったのである。
そしてミステリーやファンタジー小説は今も大好きであるが、面談室での現象を気にかける理由がもう一つあった。
「あれは、何だったんだろう?」
五条霧笛学園は中高一貫校で、連たちが中学三年生の頃、校舎内で不思議な出来事が何度か起きて、幽霊がいると噂になった事がある。
景子も一年前の雨の日の夕方。学校の図書館で脚立に乗って本棚の整理をしていた時、本が宙に浮かび、少し離れた本棚に収まるのを目撃して、脚立から落ちてお尻を床に打ち付けてしまった。
更に教師と生徒から聞いた話しであるが、景子自身が経験した事もあり、全て嘘とは思えなかった。
[部活で帰りが遅くなった生徒が、暗い教室のガラス窓に白い人影が映っているのを目撃した。]
[消した筈の教室の黒板にドラエモンの絵が描いてあり、朝一番に登校した生徒が見つけた。]
[宿直の先生が誰もいない筈なのに、パソコンのキーボードが押されて文字が打たれた。と同僚の先生に漏らす。]
そんな幽霊が出るという都市伝説が学園全体に広がったが、数ヶ月後には怪奇現象は消え失せ、教師も生徒たちも何事もなかったように忘却した。
その当時、景子も小説サイトに出没する幻の小説の噂を耳にしたが、特に気に留めることもなく、幻の小説がサイトに出現し始めた頃と学校での幽霊の噂の時期が重なっていたが、景子を含めてこの二つを関連付けて考える者は皆無だった。
東野連の家は学園から二十分程歩いた住宅地にあり、文子と順也と久美子の家も歩いて帰れる距離なので、カフェ『Bi-hún』を出て通りで別れ、家族団欒の夕食のあと風呂に入り、自室に入って勉強の合間にスマホやタブレットで幻の小説を読み、真夜中になるとLINEで話題にした。
高台の一戸建ての二階に連の部屋があり、窓側に勉強机、本棚にはコミックとライトノベル小説が並び、壁にアイドルのポスターが貼られ、隅にギターが立て掛けてある。
連はベッドに横になって、毛布をはだけて大の字になって眠っていたが、窓ガラスに少女の上半身が薄っすらと映り、机の上のiPhoneに月明かりが差している。
少女はシルバーのミディアムヘアーで、ブルーラインの白いシャツ、襟元にピンクのリボンをして、スカートはチェック柄のスカートを穿き、机の上のiPhoneの画面を覗いて椅子に座った。
『私、一気読みしたよ』
『僕も拝読した。もー、感動もん』
『なんかスゴくて。自信喪失』
『こんなファンタジー、書いてみたい』
『ん?レンは?』
『寝たんじゃない。笑』
『しかし、連のパフォーマンスにはマジで驚いた』
『イリュージョン』
『魔術師の才能はあるね』
『じゃー、そろそろ寝る?』
『連みたいに授業中に居眠りしないようにな。バイバイ』
『おやすみ~』
『good night』
『オヤスミ』
最後のコメントは連のiPhoneからだったが、送信したのは少女のゴーストであり、連は何も知らずにベッドで寝返りをうち、スィート・ドリームに涎を垂らして微笑んでいる。
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