ゴーストに恋して

田丸哲二

文字の大きさ
24 / 84
第四章・暗黒エネルギーの流出

青いビー玉の両眼

しおりを挟む
 頭を押さえ付ける力が弱まったので、景子は江国の手を振り払って逃れたが、宙を浮くアルミホイルの箱とリビングに黒い蛾の群れが渦巻くのを見て腰を抜かした。

「嘘でしょ?」

 アルミホイルでスマホと江国から流れる暗黒のエネルギーを遮断した事で、MOMOEは暗黒の磁場が弱まり、ポルターガイスト現象を起こして景子の体を支えて玄関へ運ぶ。

『何なの?』

 フワッと風に包まれ、景子は居間を出て玄関へ駆け寄るが、江国が頭部のアルミホイルを剥がしてスマホを持って追いかけて来た。しかし画面にアルミホイルがピッタリ張り付いて洗脳ができない。

「ムカつく!このままトースターで焼けってか?」

 その隙に景子は靴を持ってドアを開けようとしたが、黒い蛾が目の前に飛んで来て視界を塞がれた。

『MOMOE……』

 黒い蛾は江国の背後に集結し、司祭の上半身を形作り、リアルな顔面にアイマスクの蛾がヒラヒラと止まり、暗く窪んだ眼窩がんかを覆うと、黒縁の眼鏡に変化して青いビー玉の瞳が現出してレンズ代わりになる。

『これで、お前がよく見える』

『司祭。心の目を取り戻しなさい』

 MOMOEは景子の前でフクロウのペンを持ち、司祭と対峙して光のエネルギーが回復するのを待った。(フクロウのペンは何度も使用できず、特に複雑なアイテムを描いてリアル化すると消耗してインク切れになる。)

『フン、生に憧れるゴーストが神の使いに物申すか⁈』

『貴方のボスって、魔王じゃん』

 江国はまだ司祭の声は聞こえなかったが、黒い蛾が暗黒のエネルギーを放出し、司祭の力がその空間に現出している事を感じている。

「取れたわよ。景子先生。貴方もコレを見て仲間になるのです」

 アルミホイルの剥がれたスマホを前に向けて、江国が笑いながら景子に迫り、景子は手を翳して背を向けたが、ドアノブに黒い蛾が止まり掴めない。

『消えろ』

 フクロウのペンが飛び付き、その蛾をペン先で攻撃して消し去ると、景子はドアを開けて外へ出て靴を持って裸足で走り、MOMOEも数匹の黒い蛾に襲われたが、振り払いながら一緒に外へ飛び出した。

 江国が靴を履いて通りへ出て数歩追ったが、通行人の目を気にして立ち止まり、足踏みをして悔しそうに景子の後ろ姿を眺めている。

『蛾だよ』

『シツコイわね』

 MOMOEとフクロウのペンは景子の頭上を飛び、振り返ると江国の背後に司祭の黒い影が浮かび上がり、黒縁の眼鏡の青いビー玉の両眼を輝かせてこっちを睨み、黒い蛾が数匹ヒラヒラ舞いながら迫って来た。

『モモ、もう使えるかも』

『了解です』

 フクロウのボディのエネルギー・ランプが点滅し、MOMOEが宙に昆虫取りの網を描いて手に触れてリアル化し、黒い蛾を網で掬うと中で次々と消えた。

『闇に帰りなさい』

 その時、黒い蛾の鱗粉リンプンがMOMOEの肘に付着したのを司祭のビー玉の両眼が捉え、赤い唇の口角を吊り上げて黒い煙となり家の中へ流れ込む。

『戻るぞ……』

 江国は頭の中で司祭の声を聴き、景子を洗脳するのは失敗したが、上々の滑り出しだと理解して目を細めて微笑む。

「これからよ。貴方より私の方が優れている事を身をもって教えてあげるからね」

 景子がよろけながら靴を履いて走り去るのを見送り、握り締めたスマホをポケットに入れ、家の中へ入ってドアを閉めて厳重に施錠した。

 リビングのデスクの上にはタブレットとノートPCがあり、無数の星が流れ落ちる画面の中央に暗黒の書物『禁断の書』が浮かび、江国がこの世界に完コピするのを待ち望んでいる。

「司祭さま。もう少しお待ち下さい……」

 江国は黒い蛾が集結した空間に頭を下げて、リビングのデスクの椅子に背筋を伸ばして座り、猛スピードでタイピングを開始すると、黒い蛾が再現され室内に増殖した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...