ゴーストに恋して

田丸哲二

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第五章・学園長の変貌

七人のゴースト職人

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 工房にはDIYの工具と部品が棚に山積みになり、メインスペースには異次元プリンターがあって、藤堂司の過去シーンを病院の窓ガラスに映写し、割れたガラス片が四角い箱の中に散らばっている。

 七人の少女は作業を中断して寝室のベッドに倒れ込んだMOMOEの様子を見に集まり、濡れた服を脱いで毛布にくるまって眠るMOMOEの寝顔を眺めてから、工房のテーブル席に着いて休憩した。

「もっとパワーアップしないとダメね」

 リーダー的存在であるクルミがゴーグルと帽子を取って、コップにお茶を注ぐとユカとミチが、アキ、ナホ、ポエム、カンナへと回し、それぞれがお菓子や果物を皿に盛って摘み始めた。

 フクロウのペンはテーブル中央のペン立てに腰掛け、ゴースト職人の話し合いを聞いている。

「このままだと司祭がエネルギーを蓄えて、こっちの世界へ魔王を呼ぶわよ」

「レンくんの助けが必要ね」

「想像力があるのは認める」

「うん、ユニークな少年。アイデア、借りてるし」

「でも、まだゴーストの電波を受信できるだけだよ」

「フクロウのペンは使えない」

「パワーが足りね~」

「クルミ。なんかいい方法ないの?」

「やっぱ恋の力でしょ。初体験させて、エネルギーアップさせようぜ」

 クルミがチョコを口に放り込んで微笑むと、他の少女たちも楽しそうにお菓子を食べて、寝室の方をチラッと横目で見て微笑み、「まさか……」とフクロウのペンが白い翼をバタつかせて狼狽うろたえている。

 少女たちは若くして病気や事故で死ぬと、ドワーフの小人の棲む森で修行をしてタフなゴースト職人となり、魔王と戦うMOMOEに協力して人間界に住む東野連とのコンタクトに成功した。

『レン……』

 ベッドの上でMOMOEが寝返りを打ち、スポーツブラの左下にある手術痕と両脇の電気ショックの痣が見えた。

 MOMOEは心臓の病いで大学病院の難病研究センターに入院し、四歳年上の藤堂司と知り合い友だちになったが、司の目の病は悪化して精神も病み疎遠になってしまった。

『希望の光りは消えないよね?』

 四歳年上の藤堂司は目の手術の前日に百恵の笑顔は忘れないと誓ったが、視覚を取り戻す事なく、両眼から血を流して痛みに苦しみながら死んでしまった。

 霊感の強かった百恵はその日から悪夢を見るようになり、司が鬱で病室にこもって描いた残虐な絵を医師に見せてもらい、魔王が支配する暗黒の世界に堕ちたと思った。

 そして心臓が止まって死の世界を浮遊した時に、暗黒の世界で魔王に使える司祭を見て藤堂司だと確信した。

『司くん!』

 暗い地下の書庫で蝋燭を灯し、本棚から暗黒の書物を取り出してデスクの上で開いた司祭がふと顔を上げ、童顔の少年がダーク司祭の険悪な顔付きに変貌したと唖然とする。

 百恵は電気ショックで蘇生され病院のベッドから起き上がるが、友だちが闇に堕ちて魔王の司祭になった事が悲しく、頭を抱えて天を仰いだ。

 MOMOEはその時の事を夢の中で断片的に思い出し、ダーク司祭と戦うのは避けられないが闇から救い出す方法はないのかと悩む。

『レン、どうしたらいいの?』

 工房ではゴースト職人が休憩を終えて仕事に取り掛かり、百恵が入院していた頃の映像を真空管デッキ、オープンリール、フィルム機材などでアナログ編集して、異次元プリンターで東野連に送信し、『恋ね~』とフクロウのペンがテーブルのペン立てに寄り掛かって不安そうに呟く。
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