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第六章・ミレフレ vs. 禁断の書
データベースの消失
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編集部の席で新人の深野が『禁断の書』のページを開き、白目を剥きそうになるが非公開になり意識が戻って頭を振っている。
「大丈夫?」
石塚が心配して声を掛け、深野は深呼吸をして胸を押さえ、椅子に座ったまま床を足で蹴ってパソコンの画面から離れた。
「なんか、これ読むと頭がクラクラした。きっと危険な本なんだと思う」
指を差して注意を促す深野の横に石塚が立ち、他の編集者も周辺に集まって『禁断の書』のページ画面を注視した時、突然アプリがクラッシュして、画面が真っ暗になり自動的に再起動すると、作家ページが次々と消えてゆく。
「クリエイターの作品が……」
野上と高木もシステム部の大型液晶モニターで投稿された作品が消失し、画面に空白のページが増えるのを苦渋の表情で眺めた。
「どういう事だ?」
「全部、消えてしまうぞ」
ハードディスクの機器から煙が噴き出し、ガラス張りの室内が曇るのを見て高木が走り出し、パックアップサーバーの機器を取り外す技術員を手伝うが、小説サイト・エディバーは壊滅的な状態に陥り、トップページは本も広告も無い空虚なサイトへと化す。
数十分前、黒い蛾の浮遊する死体安置所で休養していたダーク司祭は半裸で台に乗せられた死体の胸に両手を突っ込み、心臓を掴み取って霊魂を絞り出し、口から吸い込んで数回目の霊エネルギーを補充した。
「ヴァーグゥ、ズーザァー」
乾涸びた遺体が司祭の周辺の台に転がり、損傷した体を回復させた司祭は満足気に祭服を着て、黒い蛾の揺らめく空間に『エディバー』の小説サイトを映し出し、MOMOEが『禁断の書』に触れた事を知る。
「お前も動き出したか?」
両腕を広げて前に出す司祭の合図で、『エディバー』に拡散した蠢く文字が群れになってMOMOEを襲う。
「何よ。文字の虫め」
古代ヘブライ語に追われたMOMOEのアイコンは『ミレフレ』の本の中に逃げ込み、本を閉じて黒い文字を防御するが、白い表紙に文字が貼り付き食い荒らし、破れた穴から光が漏れて闇のエネルギーと衝突して爆発した。
「ふん、逃したか?」
MOMOEは寸前で黒い文字とプログラミング言語が飛び交うネットワークからジャンプして脱出したが、炎の爆風でデータベースが破壊され『禁断の書』も吹き飛んだが、『ミレフレ』も粉々になって文字と紙切れが飛散する。
「ミレフレが消えた」
会議ルームでエディバーの小説サイトを見ていた文子と久美子と順也がスマホを持って頭を抱え、景子先生は連が微笑むのを見て少し安堵して声を掛ける。
「連くん。大丈夫なのね?」
「会社的には最悪な状態ですが、もしかして希望はあるのですか?」
「禁断の書も消えたから、五分五分だ」
文子がそう答え、編集部の松田町子は東野連を中心にして不思議な行動と会話をする来客者がこの不可解な現象に関係していると思い始めた。
「貴方達はこの書物をご存知なのですね?」
「ハイ。ミレフレの作者、MOMOEがそこにスタンバイしてます」
連はiPhoneの画面枠に手を掛けて抜け出すMOMOEのアイコンを見て、最悪の事態が回避された事を喜んだ。ヘッドセットに変身していたフクロウのペンは宙を飛び、窓辺に立ってシルバーの髪に付いた文字の残骸を振り払うMOMOEの肩の上に止まっている。
「大丈夫?」
石塚が心配して声を掛け、深野は深呼吸をして胸を押さえ、椅子に座ったまま床を足で蹴ってパソコンの画面から離れた。
「なんか、これ読むと頭がクラクラした。きっと危険な本なんだと思う」
指を差して注意を促す深野の横に石塚が立ち、他の編集者も周辺に集まって『禁断の書』のページ画面を注視した時、突然アプリがクラッシュして、画面が真っ暗になり自動的に再起動すると、作家ページが次々と消えてゆく。
「クリエイターの作品が……」
野上と高木もシステム部の大型液晶モニターで投稿された作品が消失し、画面に空白のページが増えるのを苦渋の表情で眺めた。
「どういう事だ?」
「全部、消えてしまうぞ」
ハードディスクの機器から煙が噴き出し、ガラス張りの室内が曇るのを見て高木が走り出し、パックアップサーバーの機器を取り外す技術員を手伝うが、小説サイト・エディバーは壊滅的な状態に陥り、トップページは本も広告も無い空虚なサイトへと化す。
数十分前、黒い蛾の浮遊する死体安置所で休養していたダーク司祭は半裸で台に乗せられた死体の胸に両手を突っ込み、心臓を掴み取って霊魂を絞り出し、口から吸い込んで数回目の霊エネルギーを補充した。
「ヴァーグゥ、ズーザァー」
乾涸びた遺体が司祭の周辺の台に転がり、損傷した体を回復させた司祭は満足気に祭服を着て、黒い蛾の揺らめく空間に『エディバー』の小説サイトを映し出し、MOMOEが『禁断の書』に触れた事を知る。
「お前も動き出したか?」
両腕を広げて前に出す司祭の合図で、『エディバー』に拡散した蠢く文字が群れになってMOMOEを襲う。
「何よ。文字の虫め」
古代ヘブライ語に追われたMOMOEのアイコンは『ミレフレ』の本の中に逃げ込み、本を閉じて黒い文字を防御するが、白い表紙に文字が貼り付き食い荒らし、破れた穴から光が漏れて闇のエネルギーと衝突して爆発した。
「ふん、逃したか?」
MOMOEは寸前で黒い文字とプログラミング言語が飛び交うネットワークからジャンプして脱出したが、炎の爆風でデータベースが破壊され『禁断の書』も吹き飛んだが、『ミレフレ』も粉々になって文字と紙切れが飛散する。
「ミレフレが消えた」
会議ルームでエディバーの小説サイトを見ていた文子と久美子と順也がスマホを持って頭を抱え、景子先生は連が微笑むのを見て少し安堵して声を掛ける。
「連くん。大丈夫なのね?」
「会社的には最悪な状態ですが、もしかして希望はあるのですか?」
「禁断の書も消えたから、五分五分だ」
文子がそう答え、編集部の松田町子は東野連を中心にして不思議な行動と会話をする来客者がこの不可解な現象に関係していると思い始めた。
「貴方達はこの書物をご存知なのですね?」
「ハイ。ミレフレの作者、MOMOEがそこにスタンバイしてます」
連はiPhoneの画面枠に手を掛けて抜け出すMOMOEのアイコンを見て、最悪の事態が回避された事を喜んだ。ヘッドセットに変身していたフクロウのペンは宙を飛び、窓辺に立ってシルバーの髪に付いた文字の残骸を振り払うMOMOEの肩の上に止まっている。
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