ゴーストに恋して

田丸哲二

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第八章・狙われた学園

ダークマター・ピンセット

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 夜のTVニュースで「突然白眼を剥いて倒れて気を失う『テンカン発作』の症状を起こす者が増えている」とアナウンサーが注意し、殆どの者が自分には関係ないと捉えたが、景子と連と文子と久美子と順也、エディバーの数名の社員は暗黒の書物に感染していると不安視した。

「禁断の書……?」

 景子は眠れずにパジャマ姿でデスクに向かい、ノートPCでネット検索をして黒い表紙の本を読んだ者を調べ、眩暈や視界の異常が発生する症状が起こっている事を知る。

[花畑が白黒に見える。]と嘆くコメントがあり、モノクローム化が始まったと頭を抱えると、突然、パソコンの横に置いたスマホにメッセージが表示された。

『景子先生、ベッドに横になってください』

「えっ?MOMOEさん」

 その時、魔文字がスマホを威嚇して手首の皮膚から浮き上がり、景子が飛び退いて驚く。

「あっ、暗黒の文字?」

『はい。魔文字をあの男に埋め込まれたので、ちょこっと心霊手術しますね』

 声は聞こえないが景子はスマホで指示され、薄っすらとデスクの横にMOMOEが立っているのが見え、魔文字の影響で霊視が可能になったと思ったが、それを喜んではいられない。

「手術?こ、コレ取り出せるの?」

『脳に入り込まれてないから大丈夫。お任せください』

 景子は暗黒に魅せられて脳に侵入されたら、取り出す事も不可能になるのかと理解し、意識を鮮明にして唇を噛み締め、手首の肌に透ける黒い文字を押さえてベッドへ向かう。

「私は国語の教師、言葉に負ける筈がない」

 自分にそう言い聞かせ、景子がパジャマを脱いでベッドの上に仰向けに寝ると、MOMOEは『着てても良かったのですが』と微笑み、景子の前に立って霊光レイコウに輝くピンセットを手にした。

『ダークマター・ピンセット』

 MOMOEは江国の家からフクロウのペンと一緒に図書館の工房へと飛び、ゴースト職人と一緒に魔文字の対処法を相談し、連の意見も聞きながら異次元プリンターでフクロウのペンの新しい変形を開発した。(ネーミングは連のアイデアである。)

「部屋はカラーだから、洗脳されてない……」

『景子先生。痛みは無いので、リラックスして』
 
 古代ヘブライ語の二文字が腕から胸へと逃げ回り、MOMOEはお腹の辺りにダークマター・ピンセットを差し込んで、一文字摘んでガラス瓶に入れ蓋をして閉じ込めた。

「なんか、ムズムズする」

 ピンセットがスケルトンになって体内に差し込まれ、まるで水槽の中を泳ぐ黒い文字が太ももの方へ移動して行く。

『こら、逃げるな』

 MOMOEはその一文字も摘み上げてガラス瓶に放り込むと、『ダークマター・ピンセット』をフクロウのペンに変えてガッツポーズをした。

『コレで研究材料ができた。景子先生、もう安心しておやすみください。また明日、よろしくね』

 景子は消えてゆくMOMOEとフクロウのペンに手を振り、「ありがとう」と呟いて仰向けのまま大きく深呼吸をした。
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