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第八章・狙われた学園
小説『ゴーストに恋して』2
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意識が電波に乗ってネットを飛び、夢から覚めたように現実に戻ると、僕はサークルの仲間にその事を伝え、ゴーストを救出する方法はないか相談した。
三人とも小学校の頃からの友だちで、ファンタジー小説に魅了され、中学生になると小説サイトに投稿するようになった。
「少女の部屋が一瞬だけ見えたけど、名前しかわからない」
「モモエ?でも、名前だけでは探しようがないよ」
「電撃のショックでゴーストになって、小説サイトで遊んでいるなんて誰も信用しない」
「読んだ者にしか、この感情は理解できないだろうな?」
学校でも休憩時間になるとゴーストの話をして、放課後は町の中心地にある市の図書館に集まって対策を練る。
「空想の塗り絵だけが、少女の楽しみなんだ」
「想像がリアルに感じたのは想いが強いから」
「しかし、なんて父親だ。酷すぎる」
「最低な父親から、ゴーストを助けよう」
「でも、どうやって?あれから見てないだろ」
初めて幻の小説に遭遇してから一週間が過ぎ、『ミレフレの塗り絵』はサイトから消え、僕もゴーストにコンタクトする事はできず、仲間もモモエの身を心配した。
『まさか……ほんとのゴーストに?』
土曜日の午後、いつものように僕らが図書館に集まっていると、派手な服を着てベールを被った老婆に声をかけられた。
「ふーん、面白い話をしているね?」
「はい。リアルでファンタジーな物語です」
高台の古い屋敷に住む老婆を町の年寄りはオカルト小説家だと笑ったが、世間付き合いをしない老婆の実態を知る者はいない。
「ネットのゴーストかい?」
僕らは陰で『魔女先生』と呼び、図書館に現れる頃に閲覧テーブルに集まり、興味を惹くように聴こえるか聞こえないくらいのボリュームで喋り、話題に入るのを待っていた。
「ええ、モモエという少女です」
「幻の小説がネットにあり、少女が見て触れると鮮やかでリアルな世界に変わる」
「でも、少女は部屋に囚われていて」
「スタンガンだろ?これでも地獄耳でね。殆ど盗み聴きして理解してるさ」
そう言って魔女先生は微笑み、ある方法を提案したが、試すのは自己責任だと言って念を押し、ある小説のストーリーを引用して話し始めた。
『ゴーストにはゴースト』と切り出した魔女先生は後日、白髪のカツラとメイクを取って有名な美人ファンタジー作家である事を僕らに明かしたが、それはずっと先の事である。
「……霊能探偵が消えた少女を探す為に家族を森の中の古いお屋敷に集め、リビングの広い円卓を囲んで霊的な実験をした」
魔女先生の語りは臨場感があり、幽霊屋敷の情景が目に浮かび、僕らは息を呑みながら図書館のテーブルの上に電圧を調整する装置を思い浮かべた。
「この機械は?」
「まさか、スタンガンの代わり?」
「心配ない。至って安全ですから」
「蜘蛛の巣、張ってるし」
「旧日本軍が拷問に使っていた機械だからね。これで電流に乗って、ネットをランデブーしましょう」
僕らは登場人物になったつもりで質問し、魔女先生も話を合わせて付き合ってくれたが、それくらいこの場に居合わせたメンバーはファンタジーを信じていた。
そして日曜日の夜、各自が自主的にスタンガンや電圧機器を用意して体に電流を流し、モモエのゴーストにコンタクトを試みた。
『凄い。みんな成功したんだね?』
『友だちを信じてるからね』
『それと魔女先生のおかげです』
『じゃー、ゴーストを探索しようか』
四人の中学生と魔女先生は波長のチャンネルを合わせ、ほぼ同時期に意識がネットワークに入り込んでアバターを形成した。
『カッコいい』とみんなで笑い、僕らは深夜0時にネットサイトを飛び回り、幻の小説とモモエの痕跡を追跡し、三日後に『ミレフレの塗り絵』を発見してモモエの部屋に入った。
…………(省略)このシーンから想像を超える展開となり、数年後を経て恋物語に進展してゆく。
『僕は今でも、ゴーストに恋をしている……』
end.
三人とも小学校の頃からの友だちで、ファンタジー小説に魅了され、中学生になると小説サイトに投稿するようになった。
「少女の部屋が一瞬だけ見えたけど、名前しかわからない」
「モモエ?でも、名前だけでは探しようがないよ」
「電撃のショックでゴーストになって、小説サイトで遊んでいるなんて誰も信用しない」
「読んだ者にしか、この感情は理解できないだろうな?」
学校でも休憩時間になるとゴーストの話をして、放課後は町の中心地にある市の図書館に集まって対策を練る。
「空想の塗り絵だけが、少女の楽しみなんだ」
「想像がリアルに感じたのは想いが強いから」
「しかし、なんて父親だ。酷すぎる」
「最低な父親から、ゴーストを助けよう」
「でも、どうやって?あれから見てないだろ」
初めて幻の小説に遭遇してから一週間が過ぎ、『ミレフレの塗り絵』はサイトから消え、僕もゴーストにコンタクトする事はできず、仲間もモモエの身を心配した。
『まさか……ほんとのゴーストに?』
土曜日の午後、いつものように僕らが図書館に集まっていると、派手な服を着てベールを被った老婆に声をかけられた。
「ふーん、面白い話をしているね?」
「はい。リアルでファンタジーな物語です」
高台の古い屋敷に住む老婆を町の年寄りはオカルト小説家だと笑ったが、世間付き合いをしない老婆の実態を知る者はいない。
「ネットのゴーストかい?」
僕らは陰で『魔女先生』と呼び、図書館に現れる頃に閲覧テーブルに集まり、興味を惹くように聴こえるか聞こえないくらいのボリュームで喋り、話題に入るのを待っていた。
「ええ、モモエという少女です」
「幻の小説がネットにあり、少女が見て触れると鮮やかでリアルな世界に変わる」
「でも、少女は部屋に囚われていて」
「スタンガンだろ?これでも地獄耳でね。殆ど盗み聴きして理解してるさ」
そう言って魔女先生は微笑み、ある方法を提案したが、試すのは自己責任だと言って念を押し、ある小説のストーリーを引用して話し始めた。
『ゴーストにはゴースト』と切り出した魔女先生は後日、白髪のカツラとメイクを取って有名な美人ファンタジー作家である事を僕らに明かしたが、それはずっと先の事である。
「……霊能探偵が消えた少女を探す為に家族を森の中の古いお屋敷に集め、リビングの広い円卓を囲んで霊的な実験をした」
魔女先生の語りは臨場感があり、幽霊屋敷の情景が目に浮かび、僕らは息を呑みながら図書館のテーブルの上に電圧を調整する装置を思い浮かべた。
「この機械は?」
「まさか、スタンガンの代わり?」
「心配ない。至って安全ですから」
「蜘蛛の巣、張ってるし」
「旧日本軍が拷問に使っていた機械だからね。これで電流に乗って、ネットをランデブーしましょう」
僕らは登場人物になったつもりで質問し、魔女先生も話を合わせて付き合ってくれたが、それくらいこの場に居合わせたメンバーはファンタジーを信じていた。
そして日曜日の夜、各自が自主的にスタンガンや電圧機器を用意して体に電流を流し、モモエのゴーストにコンタクトを試みた。
『凄い。みんな成功したんだね?』
『友だちを信じてるからね』
『それと魔女先生のおかげです』
『じゃー、ゴーストを探索しようか』
四人の中学生と魔女先生は波長のチャンネルを合わせ、ほぼ同時期に意識がネットワークに入り込んでアバターを形成した。
『カッコいい』とみんなで笑い、僕らは深夜0時にネットサイトを飛び回り、幻の小説とモモエの痕跡を追跡し、三日後に『ミレフレの塗り絵』を発見してモモエの部屋に入った。
…………(省略)このシーンから想像を超える展開となり、数年後を経て恋物語に進展してゆく。
『僕は今でも、ゴーストに恋をしている……』
end.
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