ゴーストに恋して

田丸哲二

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第八章・狙われた学園

恋の伝導率

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 久美子と順也は文子が書いたラストページの追憶シーンを読んで涙し、連はそこに行き着く前に感動でナイアガラの涙を頬から流し、フクロウのペンと一緒に部屋に現れたMOMOEに慰められた。

「大丈夫?レン」
「泣き過ぎじゃないの?」
「いや、だってモモエは……酷い父親を守ろうとすんだ」

 文子はモモエが父親にDVを受けている理由と母親の関係性を詳しく書き込まなかったが、同級生の仲間と魔女先生がモモエにコンタクトすると、『私じゃなくて、父を助けて』と懇願するシーンに力を込めて描いた。

「フミコが書いたんだな?」
「うん。流石だね」

 MOMOEが連のiPhoneを借りて『ゴーストに恋して』を読み始めると、フクロウのペンがMOMOEの肩に乗って覗き込んでいる。

『モモエ』は『僕』と仲間たちに閉じ込められた部屋から救出されるが、救急車で運ばれた病院のベッドで微笑みを残して逝ってしまう。

 しかし最期まで心に光を灯し、絶対に境遇を恨まず、優しかった頃の父親に戻ると『希望』を失ってはなかった。

 そして『僕』のガールフレンドの心の中にゴーストとなって残り、友だちから恋人になる感じを楽しみ、初めてキスした時にモモエは雨上がりの空に架かる虹の上を飛び、『僕』はモモエが恋人の中に生きていると感じる。

 現実の時刻、深夜0時数分前に景子はパジャマを着直してベッドに腰掛け、スマホの画面を見て「魔女先生が美人で良かった」と微笑み、久美子と順也も同じように部屋のベッドの上で小説『ゴーストに恋して』の余韻に浸っている。

 文子もベッドで座禅を組み、スマホで小説のラストページを見て「ガールフレンドはそれを知っているけど、許してるってのが、この物語のテーマって感じかな」と呟く。

 そしてゴースト職人は工房の通信機器の波長を調整し、エネルギーゲージの針が微動してアップするのを見て、連の波長が文子と久美子と順也と景子先生にピッタリ合うのを願い、七人のゴーストが担当機器の前で目配せする。

「やるよー、みんな。用意はいいかい?」

 クルミの掛け声で「ラジャー」とメンバーが頷き、レバーを上げて異次元プリンターのボックスに電流を送った。

 すると連の部屋でフクロウのペンが受信し、空中に次々とハートマークを描き、部屋中にリアル化して散らばり、MOMOEの周辺を白い翼のハートが舞う。

「やだ、何してんの?」
「ピンク色に輝いてますが?」

 ハートマークがMOMOEに触れるとピンク色の光が弾け飛び、ベッドに寝転がる連にも光の粉が降りかかる。

『恋のエネルギーを吹き込む。私たちの想いも込めてね』

 クルミの声がMOMOEの頭の中に聴こえて、胸の中に入ったハートがドキドキと高鳴り、連への恋心が最高潮に達し、MOMOEは連の上にダイブして涙に濡れた頬を両手で掴み、上から唇を押し付けてファーストキスをした。

 フクロウのペンは目を見開いて驚く連の真上に浮かび、MOMOEと連の恋のエネルギー波が部屋から夜空に発信されるのを見届けた。

『グッドタイミング』

 フクロウのペンからの映像を見るゴースト職人の呟きがMOMOEにも聴こえ、仕組まれたと呆れながらも目を閉じてキスの感触を味わう。

『フレるって、温かい……』

 若くしてゴーストになった少女たちはキスの経験もなく、工房でMOMOEの意識を唇に感じ、目を閉じて生きていた頃を想い出す。

 連もMOMOEの背中と髪に触れ、緑色の草原に寝転がりキスをするシーンを思い浮かべた。

 その時、授業中に連がiPhoneで電撃を受けたように、文子と久美子と順也と景子先生はスマホを持つ手から電流が走り、体が痺れて脳に衝撃を受ける。

『スタンガン?』
『電圧機……』
『日本軍の拷問装置?』

 それぞれが小説『ゴーストに恋して』の幽霊屋敷で魔女先生に説明を受け、深夜0時に電流を体に流してネットサイトにランデブーするシーンを夢見て数秒間ベッドに倒れてしまう。

 そして現実の深夜0時過ぎ、文子と久美子と順也と景子先生は目を覚まし、連が霊界のプラットフォームになって霊的なパワーを与えたと感じた。

『レンがブルートゥースになった?』
『ゴーストの波長?』
『ファンタジーの力ですね』
『希望の光が、見えた……』

 連自身も恋の波長でMOMOEと連動し、フクロウのペンを手にすると体の中に光り輝くパワーが伝わり、ベッドの端で恥ずかしそうに座っているMOMOEに微笑みかける。

「これで、司祭とも戦えそう」
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