ゴーストに恋して

田丸哲二

文字の大きさ
59 / 84
第八章・狙われた学園

恋の伝導率

しおりを挟む
 久美子と順也は文子が書いたラストページの追憶シーンを読んで涙し、連はそこに行き着く前に感動でナイアガラの涙を頬から流し、フクロウのペンと一緒に部屋に現れたMOMOEに慰められた。

「大丈夫?レン」
「泣き過ぎじゃないの?」
「いや、だってモモエは……酷い父親を守ろうとすんだ」

 文子はモモエが父親にDVを受けている理由と母親の関係性を詳しく書き込まなかったが、同級生の仲間と魔女先生がモモエにコンタクトすると、『私じゃなくて、父を助けて』と懇願するシーンに力を込めて描いた。

「フミコが書いたんだな?」
「うん。流石だね」

 MOMOEが連のiPhoneを借りて『ゴーストに恋して』を読み始めると、フクロウのペンがMOMOEの肩に乗って覗き込んでいる。

『モモエ』は『僕』と仲間たちに閉じ込められた部屋から救出されるが、救急車で運ばれた病院のベッドで微笑みを残して逝ってしまう。

 しかし最期まで心に光を灯し、絶対に境遇を恨まず、優しかった頃の父親に戻ると『希望』を失ってはなかった。

 そして『僕』のガールフレンドの心の中にゴーストとなって残り、友だちから恋人になる感じを楽しみ、初めてキスした時にモモエは雨上がりの空に架かる虹の上を飛び、『僕』はモモエが恋人の中に生きていると感じる。

 現実の時刻、深夜0時数分前に景子はパジャマを着直してベッドに腰掛け、スマホの画面を見て「魔女先生が美人で良かった」と微笑み、久美子と順也も同じように部屋のベッドの上で小説『ゴーストに恋して』の余韻に浸っている。

 文子もベッドで座禅を組み、スマホで小説のラストページを見て「ガールフレンドはそれを知っているけど、許してるってのが、この物語のテーマって感じかな」と呟く。

 そしてゴースト職人は工房の通信機器の波長を調整し、エネルギーゲージの針が微動してアップするのを見て、連の波長が文子と久美子と順也と景子先生にピッタリ合うのを願い、七人のゴーストが担当機器の前で目配せする。

「やるよー、みんな。用意はいいかい?」

 クルミの掛け声で「ラジャー」とメンバーが頷き、レバーを上げて異次元プリンターのボックスに電流を送った。

 すると連の部屋でフクロウのペンが受信し、空中に次々とハートマークを描き、部屋中にリアル化して散らばり、MOMOEの周辺を白い翼のハートが舞う。

「やだ、何してんの?」
「ピンク色に輝いてますが?」

 ハートマークがMOMOEに触れるとピンク色の光が弾け飛び、ベッドに寝転がる連にも光の粉が降りかかる。

『恋のエネルギーを吹き込む。私たちの想いも込めてね』

 クルミの声がMOMOEの頭の中に聴こえて、胸の中に入ったハートがドキドキと高鳴り、連への恋心が最高潮に達し、MOMOEは連の上にダイブして涙に濡れた頬を両手で掴み、上から唇を押し付けてファーストキスをした。

 フクロウのペンは目を見開いて驚く連の真上に浮かび、MOMOEと連の恋のエネルギー波が部屋から夜空に発信されるのを見届けた。

『グッドタイミング』

 フクロウのペンからの映像を見るゴースト職人の呟きがMOMOEにも聴こえ、仕組まれたと呆れながらも目を閉じてキスの感触を味わう。

『フレるって、温かい……』

 若くしてゴーストになった少女たちはキスの経験もなく、工房でMOMOEの意識を唇に感じ、目を閉じて生きていた頃を想い出す。

 連もMOMOEの背中と髪に触れ、緑色の草原に寝転がりキスをするシーンを思い浮かべた。

 その時、授業中に連がiPhoneで電撃を受けたように、文子と久美子と順也と景子先生はスマホを持つ手から電流が走り、体が痺れて脳に衝撃を受ける。

『スタンガン?』
『電圧機……』
『日本軍の拷問装置?』

 それぞれが小説『ゴーストに恋して』の幽霊屋敷で魔女先生に説明を受け、深夜0時に電流を体に流してネットサイトにランデブーするシーンを夢見て数秒間ベッドに倒れてしまう。

 そして現実の深夜0時過ぎ、文子と久美子と順也と景子先生は目を覚まし、連が霊界のプラットフォームになって霊的なパワーを与えたと感じた。

『レンがブルートゥースになった?』
『ゴーストの波長?』
『ファンタジーの力ですね』
『希望の光が、見えた……』

 連自身も恋の波長でMOMOEと連動し、フクロウのペンを手にすると体の中に光り輝くパワーが伝わり、ベッドの端で恥ずかしそうに座っているMOMOEに微笑みかける。

「これで、司祭とも戦えそう」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...