ゴーストに恋して

田丸哲二

文字の大きさ
63 / 84
第九章・ダーク司祭との戦い

図書館での攻防

しおりを挟む
 ダーク司祭は江国に田代の事を任せると、死体安置所で霊エネルギーを補充し、MOMOEが仲間と手引書を消すのを感じ取って、一冊残っているこの図書館に現れるのを待ち受けた。

「遅かったですね。これをお探しですか?」

 テーブルの上に置いた手引書を手に取り、端の本棚の上でまん丸の目を向けるフクロウのペンに見せつける。

 階段側の出入り口からすぐにMOMOEが現れ、フロアの階段を上がって来た連と文子と合流し、MOMOEは司祭に歩み寄って5メートル程の位置で止まり、両サイドに連と文子が並び立つ。

「あんたが司祭?意外と普通ですね」
「イケメン……」

 連は夢の中で病院で少年が闇に堕ちて司祭になった事は知っていたが、実際に対面するのは初めてで、想像より眼鏡をした好青年に見え、文子に至っては長髪で青い瞳の外人モデルかと思った。

 そして久美子と順也、少し遅れて景子と松田も階段を駆け上がり連と文子の後ろから恐る恐る司祭を覗き見た。

「みなさん、霊力がアップして私が見えているようだ」
「そっちこそ暗黒のエネルギーで回復した?」
「ええ、死体安置上で死者の魂を吸い込み、完全体になりました」

 痩せこけた頬もあばらの肉も復元され、長身のロングヘアーでメイクをした若者に変貌したが、司祭の返答を聞いて女性陣から嗚咽が漏れる。

「でも、魔王を呼ぶのは失敗した?その手引書を返しなさい。もうこれ以上、洗脳者は増やさせません」

 MOMOEがそう言うと、魔文字バスター・チームがカラークリップと消しゴムを構えて左右に広がり、フクロウのペンは本棚から飛び立ちMOMOEの肩にとまった。

「モモ、危険だ。司祭はアイテムを使えないのを知っている」

「えっ、どういうコト?」

 MOMOEに囁いた言葉であるが連が聞き耳を立てて反応し、魔文字バスター・チームもカラークリップをカチカチさせ、消しゴムを手で擦ってエネルギーが放射してないと慌てた。

「大学病院でお前の仲間を捕らえたのを忘れたか?」

 司祭は椅子に腰掛けたまま祭服の中から『禁断の書』を取り出し、テーブルの上で開いてこっちに向け、少年と少女が暗い牢獄の中に座り込み、明かりが差して顔を上げるページを見せた。

 二人とも痩せ細って憔悴しているのが一目で分かり、MOMOEは悔しさで唇を噛み締めて司祭・藤堂司を睨んだ。

「病院で苦難を共にした友だちでしよ?」

「ですから、生かしておいたんです。お陰様で、ゴーストの仲間がこの図書館の隠れ家にいる事を教えてもらった」

 司祭は手引書をテーブルの端まで滑らせ、『禁断の書』を閉じて微笑み、MOMOEの返答を待つ。

「交換しませんか?手引書とフクロウのペン。それと捕虜の二人とMOMOE。どちらも悪い取引ではないと思いますよ」

「ダメだ。手引書の代金、それと人質の身代金を全額僕が支払います」

「レン、もしかして賞金?」

 連の申し出に文子が唖然とし、久美子と順也も口を挟む。
 
「三百万?」
「連くん太っ腹だけど、賞は保留のはず」
「松田さ~ん。レンが変なこと言ってる」

 司祭の姿も声も聴こえない松田は訳も分からず名前を呼ばれ、景子が苦笑いして説明する。

「賞の賞金でダーク司祭に交渉しているのですが、無理かと思われます」

 司祭は連のパフォーマンスにも動じず、冷静な顔付きで首を傾げて連を足元から眺めて値踏みした。

「そいつが連というふざけた少年だな?悪いが君には興味がない。MOMOEが好意を持っているのが不思議だよ」

「あっ、ジェラートだ?」
「ジェラシーに訂正します」

 司祭は連と文子のやり取りにうんざりして、祭服を開いて黒い蛾を空中に飛ばし、『禁断の書』を懐に仕舞ってMOMOEの仲間を攻撃させた。

「早く決めないと、犠牲者が増えます。私は力付くで全滅させる事も可能だ。霊力があるとはいえ、所詮は人間に過ぎない」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...