ゴーストに恋して

田丸哲二

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第十章・学園での決戦

『禁断の書』序章

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 教頭と教師が校舎の玄関口から走って江国学園長を呼びに来て、マスクの黒い液体で髪と肩が濡れているのも気にせず、振り向いた江国の額の魔文字を見つめて声を合わせて伝えた。

「江国学園長、準備が整いました」
「お客様をお連れください」
「わかってます。礼儀を知らないこの者たちに忠告してたのよ」

「レンのことだ」
「問題児でしたからね」
「根にもたれている?」
「私も同じくです」

 景子がそう言って顔を顰め、江国が振り返りすぐに微笑んだが、連はペコちゃんの変顔をして文子と順也と久美子が前に立って隠した。

「行くわよ」

 江国学園長と教師たちが揃って歩き出し、連たちと湊家族も洗脳者に追い立てられ、玄関に入って廊下を進み体育館へ向かう。

 景子はその途中で仲の良い夏目先生に話しかけようとしたが、うなじの魔文字を見て断念した。今まで顕著に現れてなかった魔文字が活発になり、皮膚に露出して蠢いている。

「見て、魔文字が増えている」
「もう、隠す必要もないってか?」
「人だけじゃないよ。あちこちにいる」

 文子も順也も久美子も廊下の床や壁に浮き出る魔文字を見つけ、体育館の方から校舎全体に広がっているのを指差して驚き、湊夫妻は嗚咽を漏らして震え、先頭の江国学園長は笑顔で自分の頬に増えた魔文字を手で撫でた。

 学園近くの駐車場に車を入れた野上と長谷部が通りの塀側に並ぶ洗脳者を見て、異変が顕著になっている事に驚く。

「憑依された者の多さに唖然としたが、更にボルテージが上がってないか?」
「ええ、あの文字に取り憑かれている」

 運転席から出た二人の横に松田が加わり、洗脳者よりも校舎の建物を眺めて危険を感じた。

「急ぎましょう。建物にも異変が生じてます。長谷部さんたちはゴーストを呼ぶ準備を急いでください」

 魔文字で体育館の屋根が黒ずみ、深野と石塚がバッグを持って駐車場を出る準備をし、長谷部はワゴン車の荷台の衛星アンテナとネットワーク機材を設置する安川と角田に協力した。

 野上たちは学園に侵入し、危険な儀式が行われている事を世間に知らしめ、人間とゴーストの力を集結させる。

「こっちです」

 松田が誘導して野上と深野と大塚が背後から路地を走り、予め調べた手薄なグランドの裏側へ向かう。

 通りの洗脳者は視線を向け、首を振るウェーブを見て「ホラーだ」と深野がスピードを緩め、石塚に手を引っ張られた。

「早くしろ。間に合わないぞ」

 野上が振り返って二人に叫び、グランドの金網とコンクリート塀の隙間から松田が入り野上も続くが、遅れた深野と石塚は洗脳者に捕まってバッグを投げ入れて二人に託した。

「すいません。後はお願いします」

 野上がバッグを拾い、洗脳者が外と中からも集まり出し、松田と並んでグランドを一直線に体育館へと全力で走る。

 体育館での儀式は序章が進行し、中央に長机や学習机、パイプ椅子に体育道具がピラミッド型に積まれ、頂上に田代が半裸で立ち、周辺に並べられた椅子に生徒、教師や一般の洗脳者はその外側に立って魔文字を体現する田代に注目した。

 湊香奈江は教師の中で、ピラミッドを這い上り田代の足元から上半身に移動する魔文字を見ていたが、背後に立つ祖父母に何か手渡しされ、人間の眼玉と知り慌てて手の中に隠した。

『何なの?』

 祖父母は家のリビングで拾った眼を香奈江に見せ、唯一あの恐ろしい者が苦しんだ物がその眼だと教えたかった。

 しかし声が出せず、頬をピクピクさせて瞬きをすると白目を剥きそうになり、二人とも感情を消して無表情になる。

『祖父母も魔文字に抵抗している……』と一瞬香奈江は振り返ったが、危険を感じて儀式に集中した。

 連たちは体育館の出入り口で黒い蛾の身体検査を受け、連は指で転がすマジックで銀色ドングリ弾を検査を終えた文子に渡して検査をパスする。

 江国学園長は連たちと湊家族を壇上近くの招待席に通し儀式を見学させた。

「アリーナも洗脳者でいっぱいだ」
「黒い蛾も増えている」
「ねっ、魔文字は壇上から広がってない?」
「ああ、司祭が書物から抜き出してんだ」

 その会話を聴いて、江国学園長が壇上の司祭を指差して嬉しそうに説明する。

「司祭は『種をまく人』、そしてあの田代という者が魔王へと育つのです」

「ミレーの名画?」と景子は江国の喩えに反吐が出たが、表情には出さずに壇上を見上げ、「暗黒の聖書バイブルだったのか?」と呟く。
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