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第五楽章・天使の歌声
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公園前のマクドナルドで涼子と猫たちと別れた友太は三ツ沢上町の駅前でタブレットに連動させたスマホを手にして、涼子からのLINEのコメントを見て夢のような進展を実感した。
『これから、よろしくね』
『こちらこそ、宜しくお願いします』
そう返信して笑顔で改札を通り抜けると、この前の駅員がこっちを見てグッドサインを送ってくれて、友太は僅かだが拒絶していた世界に招かれる兆しを感じた。
『何か楽器は弾ける?』
『ギターなら少し』
それから友太は部屋の押し入れからギターを出し、弦を張り替えて練習を重ね、夜間学校の帰りに地下鉄の駅前で猫たちを引き連れて現れる涼子を待って、毎日のように電車に乗ってレコーディングに参加した。
休日には涼子の家で音源のダビング。レイロクから微かに聞こえる音を取り出し、猫の鳴き声とリズムセクションにパート分けする。
それをマルチトラックに重ねてミキサーでボリュームの調整。友太の担当はギターのコード進行とストロークのアレンジ。涼子はキーボードを担当してピアノ演奏と弦楽器のフレーズを加えた。
そして試行錯誤して練習と録音を重ね、少し楽器演奏も上達した頃にある重要な音を発見をした。
「コレ、おばあちゃんの声だ」
不思議だが微かな歌声が猫の鳴き声の裏音に隠されていて、それを取り出すことに成功する。
「天使みたいに澄んだ声だな」
あまりの美声に友太は唖然とし、信じ難られなくて涼子に問いただす。
「これ、ほんとにおばあちゃんの声?」
「そうだって。なんか若返ってるけど、おばあちゃんだよ」
「天国に行って、天使の声になったか?」
「それだ。友太いいこと言うねー。きっとおばあちゃんは天使になって猫たちと歌ってんだよ」
「そうなのかな~」
「しかし、友太って猫に好かれてる。私にしかなつかない猫だったんだよ」
友太が涼子の家に来るようになって、近所の野良猫も集まり、猫の亡霊が居座っていても怖がらずに一瞬に遊んでいる。
今は黒猫とロシアンブルーに混じって野良猫がソファに座って、静かに演奏に耳を傾け音楽会を鑑賞しているみたいだ。
「オレのせいじゃなくて、レイロクを聴きに集まってるんだろ」
地下鉄でのレコーディングは50回を越え、つなぎ合わせた曲は5分くらいになり、おばあちゃんのパートを組み込めば10分の組曲になりそうだ。
そして涼子がとんでもない提案をした。
「この曲が完成したら、駅前でコンサートしようよ」
「嘘でしょ?」と友太は言ったが、これは誰かに聴かせるために流れ着いたんだと涼子が話す。
「あの日、猫もいっぱい死んだってことだよね。その追悼歌なのかもよ」
「わかった。でもコンサートが終わってもオレと付き合ってもらうからな」
「なによそれ」
涼子はデリカシーが無いと文句を言ったが、否定はしなかったので友太は少し安心して、楽器の練習と組曲の完成に励んだ。
『これから、よろしくね』
『こちらこそ、宜しくお願いします』
そう返信して笑顔で改札を通り抜けると、この前の駅員がこっちを見てグッドサインを送ってくれて、友太は僅かだが拒絶していた世界に招かれる兆しを感じた。
『何か楽器は弾ける?』
『ギターなら少し』
それから友太は部屋の押し入れからギターを出し、弦を張り替えて練習を重ね、夜間学校の帰りに地下鉄の駅前で猫たちを引き連れて現れる涼子を待って、毎日のように電車に乗ってレコーディングに参加した。
休日には涼子の家で音源のダビング。レイロクから微かに聞こえる音を取り出し、猫の鳴き声とリズムセクションにパート分けする。
それをマルチトラックに重ねてミキサーでボリュームの調整。友太の担当はギターのコード進行とストロークのアレンジ。涼子はキーボードを担当してピアノ演奏と弦楽器のフレーズを加えた。
そして試行錯誤して練習と録音を重ね、少し楽器演奏も上達した頃にある重要な音を発見をした。
「コレ、おばあちゃんの声だ」
不思議だが微かな歌声が猫の鳴き声の裏音に隠されていて、それを取り出すことに成功する。
「天使みたいに澄んだ声だな」
あまりの美声に友太は唖然とし、信じ難られなくて涼子に問いただす。
「これ、ほんとにおばあちゃんの声?」
「そうだって。なんか若返ってるけど、おばあちゃんだよ」
「天国に行って、天使の声になったか?」
「それだ。友太いいこと言うねー。きっとおばあちゃんは天使になって猫たちと歌ってんだよ」
「そうなのかな~」
「しかし、友太って猫に好かれてる。私にしかなつかない猫だったんだよ」
友太が涼子の家に来るようになって、近所の野良猫も集まり、猫の亡霊が居座っていても怖がらずに一瞬に遊んでいる。
今は黒猫とロシアンブルーに混じって野良猫がソファに座って、静かに演奏に耳を傾け音楽会を鑑賞しているみたいだ。
「オレのせいじゃなくて、レイロクを聴きに集まってるんだろ」
地下鉄でのレコーディングは50回を越え、つなぎ合わせた曲は5分くらいになり、おばあちゃんのパートを組み込めば10分の組曲になりそうだ。
そして涼子がとんでもない提案をした。
「この曲が完成したら、駅前でコンサートしようよ」
「嘘でしょ?」と友太は言ったが、これは誰かに聴かせるために流れ着いたんだと涼子が話す。
「あの日、猫もいっぱい死んだってことだよね。その追悼歌なのかもよ」
「わかった。でもコンサートが終わってもオレと付き合ってもらうからな」
「なによそれ」
涼子はデリカシーが無いと文句を言ったが、否定はしなかったので友太は少し安心して、楽器の練習と組曲の完成に励んだ。
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