あふれる愛に抱きしめられて

田丸哲二

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愛の伝道師

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 神野洋介とは幼馴染みであるが、紗織は人生で一番苦手なタイプであった。とにかくポジティブな性格で、マイナス思考の紗織を揶揄からかいながら、雨の戦地に向かわせようとする。

 しかも地元で葡萄園を経営する傍ら、愛の伝道師と世間にもてはやされる人気者。マッサージが得意で、片手間に始めた被災地へのボランティア活動が評判になり、あの男の手にかかると身体は癒され、心まで晴れやかになると評判になっている。

『悲しみの雨上がりに虹を架ける男なんて、私にとっては嫌味な男でしかく、所謂、雨女の天敵と言っていいだろう』


 そんな愛の伝道師が紗織に仕掛けた罠が、この前の妹を巻き込んだ食事会であった。正直、紗織は久しぶりに大勢の人に囲まれていただく美味しい食事に、この上ない至極の幸せを感じた。

 しかも雨女は悪くない。貴方はこんなに沢山の人を助けたではないか?と絶賛され、紗織は神野洋介のほくそ笑む笑顔が目に浮かんできた。

『悔しいけど、愛の伝道師はそうやって私を何度となく救っている』

 紗織は雨を降らせては自らの心をカラカラにし、もう生きていけないと何度も落ち込み、渇き切ってぼろぼろになったが、そのギリギリの時を見透かしたように彼は暖かい手で抱きしめてくれた。

『ある意味、神野洋介を作ったのは私かもしれない。しかも私と結婚するのが運命だと予言する、摩訶不思議な男なのだ』
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