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雨のハンター
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故郷で雨の日に洋介とめぐり逢い、強く抱きしめられて別れてから、早一年間が過ぎ去っていたが、エネルギーを注入された紗織はその間精力的に活動した。
吉祥寺のアンティークショップで仕事をしながら、雨の予感がすると長期の休暇を取って旅へ出かけ災害地へと向かう。
天気予報も参考にするが、雨女の勘を重視して、五感を研ぎ澄ませて地域と時刻のポイントを読み取り、フル装備で戦地へ向かって雨の匂いを追う。
『私は心のコンパスと長靴と雨合羽にスコップを武器に雨を追うハンターである』
そして八割の確率で人命救助に成功し、鹿児島と愛媛と広島と和歌山で表彰されたが、いずれの写真も二本の指で両眼を隠して犯罪者のように写っている。
紗織はこの成績を経て、少しだけ雨女の不運と罪を返したつもりになり、プラスマイナスゼロの気分を味わった。
『しかしそれが油断を招き、雨女は最悪の悲運を自ら引き当ててしまう……』
『紗織ちゃんは、雨女の中でも、最強のスーパー雨女だよ』
洋介が小学生の時にそう呼び始めたのが紗織のニックネームになり、ずっとそれを嫌悪して数十年間生きて来た。でもそれを少しだけ払拭し、少しは役目を果たしたと思って、自分ご褒美に春先に温泉旅行に行くことにした。
それも安全と復興を兼ねて洪水の被害にあった栃木県の温泉地へ向かった。しかしそれが裏目になり、その日の真夜中に局地的な大雨が降り、土砂崩れが起こって小さな温泉旅館が崩壊して流された。
前回の大雨でぬかるんだ地盤の二次災害だったが、紗織は温泉に疲れを癒され、美味しい料理に舌鼓を打ち、お酒もけっこう飲んで酔っ払ってしまい、何の予測も予兆も感じずに熟睡してしまった。
そして胸騒ぎがして目が覚めた時にはもう遅かったのである。轟音と共に流木と土砂で崩れた家屋の下敷きなり、身動きさえできない雨の被災者となって暗闇の中で助けを待つしかなかった。
吉祥寺のアンティークショップで仕事をしながら、雨の予感がすると長期の休暇を取って旅へ出かけ災害地へと向かう。
天気予報も参考にするが、雨女の勘を重視して、五感を研ぎ澄ませて地域と時刻のポイントを読み取り、フル装備で戦地へ向かって雨の匂いを追う。
『私は心のコンパスと長靴と雨合羽にスコップを武器に雨を追うハンターである』
そして八割の確率で人命救助に成功し、鹿児島と愛媛と広島と和歌山で表彰されたが、いずれの写真も二本の指で両眼を隠して犯罪者のように写っている。
紗織はこの成績を経て、少しだけ雨女の不運と罪を返したつもりになり、プラスマイナスゼロの気分を味わった。
『しかしそれが油断を招き、雨女は最悪の悲運を自ら引き当ててしまう……』
『紗織ちゃんは、雨女の中でも、最強のスーパー雨女だよ』
洋介が小学生の時にそう呼び始めたのが紗織のニックネームになり、ずっとそれを嫌悪して数十年間生きて来た。でもそれを少しだけ払拭し、少しは役目を果たしたと思って、自分ご褒美に春先に温泉旅行に行くことにした。
それも安全と復興を兼ねて洪水の被害にあった栃木県の温泉地へ向かった。しかしそれが裏目になり、その日の真夜中に局地的な大雨が降り、土砂崩れが起こって小さな温泉旅館が崩壊して流された。
前回の大雨でぬかるんだ地盤の二次災害だったが、紗織は温泉に疲れを癒され、美味しい料理に舌鼓を打ち、お酒もけっこう飲んで酔っ払ってしまい、何の予測も予兆も感じずに熟睡してしまった。
そして胸騒ぎがして目が覚めた時にはもう遅かったのである。轟音と共に流木と土砂で崩れた家屋の下敷きなり、身動きさえできない雨の被災者となって暗闇の中で助けを待つしかなかった。
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