3-days love story.

田丸哲二

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第一章・イースター(復活祭)

幽体と天使

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 青葉台駅から15分程歩くとセレモニーホールがあり、妙子は喫煙室の窓側で通りに立って賢士を待つ輝を眺め、一つ離れた席から聴こえる故人の親戚らしい二人の男性の話し声に耳を傾ける。

「カフェに車が突っ込んだらしい」
「高齢者の運転ミスか?老夫婦は即死だって」
「ああ、客は無事だったが、バイトの女性も巻き添えになったらしい」

 喫煙室の磨りガラスにタクシーが止まって賢士が賢士が降りるのが見え、妙子は吸いかけの煙草を灰皿に押し付けて消し、くゆらせた煙の向こうに幽体の悠太ユウタが映った。

『僕が愛してやまない、賢士くんが現れたようですね……』

 賢士はタクシーから降りると、セレモニーホールの前で待つ輝に軽く挨拶した。電話では何度か話しているが、会うのは久し振りで、短髪と胸の厚みに黒い喪服がマッチして貫禄が増していると微笑む。

「ヤー、アキラ。ちゃんと来ただろ?」
「当たり前だ。自慢げに言うことか。小学生じゃあるまいし」
「妙子は?」
「中にいる。さっきお前にフラれた文句言ってたぞ」
「いや、僕はフってない」

 玄関口に現れた妙子が腕を組んでこっちを睨み、賢士が手を振るとすぐに微笑んで手招き、戦いを挑んでいるように見えて苦笑する。

「女タラシの登場だ」
「こんな場所で、人聞きの悪いこと言わないでくれ」
「だって、今日は復活祭。茨の冠を贈られたんでしょ?」
「その話は後にして、受付を済ませよう。もうすぐ通夜の時間だぜ」

 輝が二人の会話を遮り、悠太の葬式に来た事を思い出させ、フロアを三人で並んで歩いて行くと、もう一人の同級生が背後から続く。

 誰にも見えなかったが、悠太は嬉しくて笑みが零れ、高校の同級生とこうやって一緒に歩くなんて夢のようだと思った。

 憧れの人がすぐ目の前にいて、少し髪が伸びただけであの頃と全然変わってない。悠太は三人の後ろでぴょんぴょん跳ね、受付では賢士に近寄り、記帳する美しい横顔を頬に手をあてて眺め、うっとりとした表情でこの時間を楽しむ。

 そして三人が香典を渡して葬儀場に入って行くと、悠太もその後から中へ入り、賢士たちは一般席の後ろの方の席に着き悠太は祭壇へと進む。

「通夜が終わったら、手紙渡すからな」
「ラブレターらしいよ」
「葬儀の場だ。口を慎め」

 賢士は悠太の想いが嘘じゃなければ同性でも真摯に受け止め、この席で揶揄うのは礼儀に反すると真剣な表情で注意した。

『男だったよな?』と、輝に言ったのは本心ではない。

 悠太は自分の遺体が入っている棺桶の上にちょこんと座り、祭壇から会場の席を見回して出席者の殆どが親戚だったが、急な葬式に数十人が集まってくれて嬉しかった。

 最前列に両親が座り、一人息子の突然の死に項垂れて、親不孝だと遺影写真を振り返り、本人が暗い顔でどうすんだよと、写真と同じ笑顔をみんなに振り撒く。

 そこへ僧侶が到着して葬儀担当者の進行で読経が唱えられ、喪主・遺族からの焼香が始まり、昨夜知り合った青年が翼を背中に装着して天井から舞い降りて来た。

 悠太はその四角い鞄を持つ『天使』を見て、悲惨な事故で死んだ経緯と、幽体になって天使に出逢った事を想い起す。
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