のんちゃんシリーズ 【のんちゃんのおるすばん】【のんちゃんのふしぎなぼうけん】

零兆

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星のなみだ

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きらきらと夜空に浮かぶ星の中に、一つだけ光の強さを失い、ぽつりと涙のように輝く星がありました。それは「ほしのなみだ」。星の国からこぼれ落ちた、だいじなひとつぶ。

 のんちゃんと、ねこのもふにゃんは、ふしぎな世界を旅していました。くじらに乗って空をとび、ほしのなみだを見つけるために——。

「もふにゃん、あれ見て! あそこに、星がひとつだけ、泣いてるみたいにちっちゃく光ってる!」

「ニャ~……これは、ただの光じゃないニャ。かなしい想いがつまってるニャ。」

「……えっ? もふにゃん、今……しゃべった!?」

 のんちゃんは、目をまんまるくして、ぽかんと口をあけました。

「え、え、いつからそんなことできたの!?」

「にゃっはっは。ふしぎな世界に来てるときだけ、しゃべれるんだニャ~」

「ええ~~っ!? じゃあ……おうちの時は、ただの“にゃー”だったの!?」

「たぶんニャ。でも、のんちゃんがちゃんと分かってくれてたから、さみしくなかったニャよ」

 のんちゃんはちょっと照れながら、もふにゃんのお腹をぎゅっと抱きしめました。

 二人は、星の涙が落ちた場所をめざして、ふしぎな花が咲く夜の森をこえ、風のトンネルをくぐり、とうとうたどりついたのは、金色の砂がしきつめられた丘の上。

 そこに、星の涙がつくった小さな湖がありました。水面には、小さなのんちゃんの顔と、もふにゃんの顔がうつって、きらきらと揺れていました。

「ここが……星のなみだの落ちた場所?」

 のんちゃんが湖に手を伸ばすと、水面に触れたその指先から、ぽうっと光が広がりました。そして湖の真ん中から、星のように光る小さな球体がふわりと浮かびあがったのです。

「すごい……! 星のなみだだ!」

 そのとき、風がささやくように語りかけてきました。

『この星は、大切な想いを忘れてしまった誰かの涙……心が思い出せば、光を取りもどすでしょう』

 のんちゃんは、そっと目を閉じました。すると、今までの冒険のことが頭に浮かんできました。

 空をとんだくじら、ふしぎなキャンディの森、踊る葉っぱたち、そして——夜空の奥から聞こえてきた、あの小さな歌声。

「あっ、あのうた……『キラリ、ほしの なみだのうた~♪』って……」

 のんちゃんは、あの時に聞いたメロディを口ずさみました。すると、もふにゃんも、ぴょんと肩にのって、にゃ~にゃ~と合わせて歌います。

 歌が湖に響きわたると、光の玉がいっそう強く輝き、空に向かってスルスルと昇っていきました。

 そして空には、ひときわ明るく光る新しい星が生まれたのです。

「やった……! 星のなみだ、笑ったみたい!」

「ニャニャッ、やったニャー! ……って、もしかしてこのあと帰るのかニャ?」

 のんちゃんは、しばらく空を見上げたあと、小さくうなずきました。

それは、夢の続きのような景色だった。

 空の島に咲いた“星のなみだ”は、静かに光を取り戻し、そのまばゆい光は、のんちゃんの頬にそっと触れた。

 「……きれい……」

 のんちゃんは、言葉を失いながらも、涙ぐんだ笑顔で花を見つめた。

 そのときだった。  ひゅるる、と小さな風が巻き起こり、空のどこからか、ふわりと姿を現したのは──そよちゃん。

 「のんちゃん……!ありがとうっ!」

 そよちゃんは、ふんわりとしたスカートを揺らして宙に浮かびながら、まるで風そのもののような笑顔で近づいてくる。

 「星のなみだが、元の光を取り戻してくれたの。きっと、のんちゃんの“気持ち”が届いたんだね。ほんとうに、ありがとう!」

 のんちゃんは一瞬目を見張った。

 「そよちゃん……!また会えた……!」

 嬉しさが込み上げる中で、のんちゃんはふと尋ねた。

 「……ねえ、これって……夢なの?本当に……私、空の島に来たのかな……?」

 少し不安そうに見上げるのんちゃんに、そよちゃんはふわりと微笑み、手を差し伸べた。

 「それは、のんちゃんの心が覚えているはずだよ。……でも、忘れちゃっても大丈夫。ちゃんと“思い出せるように”──これを、渡しておくね」

 そう言って、そよちゃんが手渡したのは、小さな“風の羽”の形をした透明な羽根。

 「これは、空の島の風のかけら。のんちゃんのことを、風がずっと見守ってくれるように……お守りだよ」

 のんちゃんは、そっと羽根を受け取った。ほんのり暖かいその羽は、手のひらの上でくるくると風に舞うように揺れ、のんちゃんの胸の奥に、小さな灯火をともした。

 「ありがとう……そよちゃん」

 そよちゃんはもう一度微笑んで──光の粒となって、空へと還っていった。

 ──そして。

 目が覚めたのは、自分のベッドの中だった。

 のんちゃんはそっと起き上がり、カーテンの向こうに目をやる。

 すると。  窓の外から、ひらひらと何かが舞い込んできた。

 それは──まるで、そよちゃんがくれた“風の羽”にそっくりな、羽根のような形をした木の葉だった。

 のんちゃんは、その葉っぱを両手でそっと包み込む。

 「……やっぱり、夢じゃなかったんだね」

 優しい風が、頬をなでた。

 風の島で交わした想いも、そよちゃんの笑顔も──すべて、ちゃんと心に残っている。

 窓の外で、空が青く広がっていく。

 ──夢と現実が、ひとつにつながった朝だった。


「もふにゃん……また、行こうね……」

 毛布の中から、小さな「にゃあ」が返ってきました。

 こうして、のんちゃんのふしぎな冒険は終わりを迎えました。
 でも、空のどこかでは——今も星のなみだが光っています。
 次に流れ星を見つけたら、そっと願ってみてください。


おしまい

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