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一部最終章
帰還
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草むらから飛び出したネロは荷馬車に飛び掛かるようにジャンプをし、器用に魔獣化を解除しながら荷台に転がり込んだ。
「お母さんは良いのか?」
「うん。むしろ追い出されたにゃ!にゃはは」
照れ隠しをしつつもネロはグレイ達を見て空元気ではない本当の笑顔で。
「改めて!よろしくにゃ!」
森を抜け、平原を駆け、街道を走ること数日。巨大な壁を携えた街が見えて来た。次第に街道を歩く冒険者などともすれ違うようになり、ジークなどは久しぶりに会う知り合いに軽い挨拶を交わしていく。
街に入る為の列に並び門兵に荷物などを確認されるが、ほぼ建前で久しぶりに帰って来たグレイ達と話したいようで話しながらとなった。
「へぇー獣人の国にね~」
「おう、俺たちがいない間変なこととか無かったか?」
「ないない!……あ~あるとすればロベドの奴がギルドの教官になったことくらいか。最近は酒場に姿がないもんでそろそろ槍でも降ってくるんじゃねぇかとヒヤヒヤしてるくらいさ」
門兵との雑談混じりの検閲も終わり、グレイ達はホリックへと帰還を果たした。
久しぶりに帰る第二の故郷は全く変わらずに平穏な生活を営んでいた。
荷馬車から荷物を下ろしたグレイ達はひとまず家に荷物を置きに行く事に。
「ただいまー!ゴホッゴホッ埃っぽい!」
「うーん、かなり家を空けてたから掃除しないとね……」
「野宿は嫌にゃね……」
かなりの日にち空けていた家は少しテーブルを撫でただけで埃が玉のように指につく程にまで汚れていた。
流石に家の隣で野宿するわけにもいかず掃除するしかないのだが、長旅の疲れもあり大掃除を予感させる家の有り様に皆やる気が出ない。
『取り敢えずキッチンだけでも綺麗にする』
グレイは洗濯などが必要ないキッチンやリビングをルーンで綺麗にしていく。流石に各々の部屋となると、ベッドなどの布類までも洗わなければならないので拭いて綺麗になる範囲のみだ。
ジーク達はグレイがルーンで掃除がしやすいように物を片付けていく。
そうして街の灯りが灯り始めた頃、ようやく家の掃除が終わった。
とはいえ、寝室の方は手付かずの為リビングで寝る事に。
「あったかいし眠くなる触り心地だ……」
「ジーク……それ、あまり言わない方がいい……ふぁ」
「もふもふ……」
今は魔獣化をある程度抑えた省エネモードの少し小さめのネロに全員がくっつく形で寝転がっている。
当の本人は既に寝ているのでジークの若干デリカシーに欠ける発言は聞かれずに済んだ。
◇◇◇
その翌日、早朝に起きたグレイ達は軽く朝食を食べた後、ギルドへと向かった。
ギルドマスターであるシオの依頼を報告するためだ。後は、教官となったと聞いたロベドの冷やかしも兼ねている。
ジークが勢いよくギルドの扉を開けて一番最初に入っていく。
「ただいま!」
ジークの声にびっくりする冒険者達。だが、すぐにジークの帰還に長期間の依頼を労う声やジークがいない間の愚痴などを一斉に話し出す。
「さ、馬鹿は置いてギルドマスターの部屋に行きましょ」
『置いて行っていいの?』
「ジークに説明出来ると思えないし」
『確かに』
辛辣過ぎるレイラの言葉にグレイは確かにそうだと冒険者に囲まれて楽しそうに話しているジークを置いて奥へと進んでいく。ジークとの付き合いが短いネロは「いいのかなぁ」と言った様子でグレイとジークをキョロキョロと見るがグレイについていく。
部屋に入るとシオが忙しそうに机で書類を捌いていた。
「や、やぁ帰って来たのは知らせで聞いていたけど元気そうでよかった。あれ?ジークは?」
「入り口で囲まれてます」
「あ、そう」
そこまでジークに興味もなかったのかそれとも何か怪我でもあるのかと考えたのか、シオはレイラの言葉を聞いてジークの話題を終えた。
「それで、依頼の方はどうだったかな」
「スタンピードの件ですが原因が分かりました」
「本当かい!?」
ジークの時とは違い机に置いてあった書類をバサバサと落としながらシオは興奮した様子で立ち上がった。
「はい。ただ私よりもこの子、ネロから話を聞いた方がいいと思います。ネロ、良いかな?」
「うん、私が説明するにゃ」
レイラから説明役を代わったネロはスタンピードのあらましを話した。そして、その元凶の今も。
シオはその予想だにしない調査結果に椅子に座り直して聞いた情報を整理していく。
「えっと?スタンピードはベスティアに居た聖獣が復活した時に逃げた魔獣がこの街に来るっていう仕組みだった……しかもその聖獣は君たちが倒した、と。にわかには信じがたいけど、獣王の血縁者が言うんだからそうなんだろうなぁ」
「あ、代替わりしたから血縁じゃないにゃ」
未だ全ての情報を噛み砕けないシオであったが十年後もその後もスタンピードが起きないということは理解し、そして安堵した。
ホリックに平穏が訪れたのだから。
「一人いないけど依頼達成ありがとう!みんなのお陰でこの街が次の厄災に怯えることがなくなった。ありがとう」
実の所、シオの捌いていた書類は聖獣が復活した段階で活発化し始めた魔獣の報告書だった訳なので、これ以上増えないという歓喜の感情もあった。
だが、大変なのはこれから。
「それで、新獣王から書状を受け取ってます」
「え。僕に?」
シオは一国の王がなぜ自分に?、と首を傾げながら書状を開いた。
その日、滅多に大声を出さないシオの珍しく情けない声がギルドに響いたという。
「お母さんは良いのか?」
「うん。むしろ追い出されたにゃ!にゃはは」
照れ隠しをしつつもネロはグレイ達を見て空元気ではない本当の笑顔で。
「改めて!よろしくにゃ!」
森を抜け、平原を駆け、街道を走ること数日。巨大な壁を携えた街が見えて来た。次第に街道を歩く冒険者などともすれ違うようになり、ジークなどは久しぶりに会う知り合いに軽い挨拶を交わしていく。
街に入る為の列に並び門兵に荷物などを確認されるが、ほぼ建前で久しぶりに帰って来たグレイ達と話したいようで話しながらとなった。
「へぇー獣人の国にね~」
「おう、俺たちがいない間変なこととか無かったか?」
「ないない!……あ~あるとすればロベドの奴がギルドの教官になったことくらいか。最近は酒場に姿がないもんでそろそろ槍でも降ってくるんじゃねぇかとヒヤヒヤしてるくらいさ」
門兵との雑談混じりの検閲も終わり、グレイ達はホリックへと帰還を果たした。
久しぶりに帰る第二の故郷は全く変わらずに平穏な生活を営んでいた。
荷馬車から荷物を下ろしたグレイ達はひとまず家に荷物を置きに行く事に。
「ただいまー!ゴホッゴホッ埃っぽい!」
「うーん、かなり家を空けてたから掃除しないとね……」
「野宿は嫌にゃね……」
かなりの日にち空けていた家は少しテーブルを撫でただけで埃が玉のように指につく程にまで汚れていた。
流石に家の隣で野宿するわけにもいかず掃除するしかないのだが、長旅の疲れもあり大掃除を予感させる家の有り様に皆やる気が出ない。
『取り敢えずキッチンだけでも綺麗にする』
グレイは洗濯などが必要ないキッチンやリビングをルーンで綺麗にしていく。流石に各々の部屋となると、ベッドなどの布類までも洗わなければならないので拭いて綺麗になる範囲のみだ。
ジーク達はグレイがルーンで掃除がしやすいように物を片付けていく。
そうして街の灯りが灯り始めた頃、ようやく家の掃除が終わった。
とはいえ、寝室の方は手付かずの為リビングで寝る事に。
「あったかいし眠くなる触り心地だ……」
「ジーク……それ、あまり言わない方がいい……ふぁ」
「もふもふ……」
今は魔獣化をある程度抑えた省エネモードの少し小さめのネロに全員がくっつく形で寝転がっている。
当の本人は既に寝ているのでジークの若干デリカシーに欠ける発言は聞かれずに済んだ。
◇◇◇
その翌日、早朝に起きたグレイ達は軽く朝食を食べた後、ギルドへと向かった。
ギルドマスターであるシオの依頼を報告するためだ。後は、教官となったと聞いたロベドの冷やかしも兼ねている。
ジークが勢いよくギルドの扉を開けて一番最初に入っていく。
「ただいま!」
ジークの声にびっくりする冒険者達。だが、すぐにジークの帰還に長期間の依頼を労う声やジークがいない間の愚痴などを一斉に話し出す。
「さ、馬鹿は置いてギルドマスターの部屋に行きましょ」
『置いて行っていいの?』
「ジークに説明出来ると思えないし」
『確かに』
辛辣過ぎるレイラの言葉にグレイは確かにそうだと冒険者に囲まれて楽しそうに話しているジークを置いて奥へと進んでいく。ジークとの付き合いが短いネロは「いいのかなぁ」と言った様子でグレイとジークをキョロキョロと見るがグレイについていく。
部屋に入るとシオが忙しそうに机で書類を捌いていた。
「や、やぁ帰って来たのは知らせで聞いていたけど元気そうでよかった。あれ?ジークは?」
「入り口で囲まれてます」
「あ、そう」
そこまでジークに興味もなかったのかそれとも何か怪我でもあるのかと考えたのか、シオはレイラの言葉を聞いてジークの話題を終えた。
「それで、依頼の方はどうだったかな」
「スタンピードの件ですが原因が分かりました」
「本当かい!?」
ジークの時とは違い机に置いてあった書類をバサバサと落としながらシオは興奮した様子で立ち上がった。
「はい。ただ私よりもこの子、ネロから話を聞いた方がいいと思います。ネロ、良いかな?」
「うん、私が説明するにゃ」
レイラから説明役を代わったネロはスタンピードのあらましを話した。そして、その元凶の今も。
シオはその予想だにしない調査結果に椅子に座り直して聞いた情報を整理していく。
「えっと?スタンピードはベスティアに居た聖獣が復活した時に逃げた魔獣がこの街に来るっていう仕組みだった……しかもその聖獣は君たちが倒した、と。にわかには信じがたいけど、獣王の血縁者が言うんだからそうなんだろうなぁ」
「あ、代替わりしたから血縁じゃないにゃ」
未だ全ての情報を噛み砕けないシオであったが十年後もその後もスタンピードが起きないということは理解し、そして安堵した。
ホリックに平穏が訪れたのだから。
「一人いないけど依頼達成ありがとう!みんなのお陰でこの街が次の厄災に怯えることがなくなった。ありがとう」
実の所、シオの捌いていた書類は聖獣が復活した段階で活発化し始めた魔獣の報告書だった訳なので、これ以上増えないという歓喜の感情もあった。
だが、大変なのはこれから。
「それで、新獣王から書状を受け取ってます」
「え。僕に?」
シオは一国の王がなぜ自分に?、と首を傾げながら書状を開いた。
その日、滅多に大声を出さないシオの珍しく情けない声がギルドに響いたという。
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