それは演技なの?〜俳優デビューをかけて、擬似カップルになりました。7日間イチャイチャ配信で天下をとります!?〜

御堂どーな

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Day2 - 水戸くんは、恥ずかしくないの?

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 スコンと抜ける音が響いて、体育館の天井めがけて、シャトルが宙を舞った。
 僕はその軌道を目で追い、軽くいなして打ち返す。
 水戸くんのラケットを空が切り、シャトルはぽとりと床に落ちた。

「すごいね、理空、バドミントン得意なんだ」
「中学のときバド部だったから」

 ラケットでシャトルをすくい上げ、開いた左手でぱっと掴む。
 水戸くんは爽やかに汗を拭いながら言った。

「これだけうまくラケットがさばけるなら、2.5次元ミュージカルいけるんじゃない?」
「え!? いや、テニスとバドミントンは違うし、僕は歌が下手だし、ミュージカル科の人たちとは違うしっ」
「理空が出るなら、絶対観に行くけどな」

 一瞬だけもやんと想像して、自分で噴き出してしまった。
 ちょっとカラフルなウィッグをつけて、ガッチガチに緊張しながらラケットを振る自分は、どう考えてもテニスの騎士ではなかった。

「はい、水分補給」
「ありがと」

 手渡されたスポドリを半分まで飲み、かたわらのベンチに腰掛ける。
 昼下がりに本気でバドミントンをしているのは、当然、僕たちだけだった。
 というか、他の人たちは多分、学生視聴者の下校時刻に合わせて自室に戻っているはずだ。
 僕たちもそうした方がよかったのかもしれないけど、水戸くんが『運動しよう』とさわやかに言ったので、素直にそうした。

 健康的な人なんだなと思う。
 役者は体力勝負だし、こうやって体づくりをするのが大事なのかもしれない。

「次、カフェに行ってみない? 無料で食べ放題らしいよ」
「へー、すごいね。メロンソーダあるかな」

 飲食代も、ゲーセンなども、すべて無料。
 擬似デートなので、遊び放題だ。

 カフェに移動すると、おしゃれな店内には、5組ほどのカップルがいた。
 明らかに演技がかっている人もいれば、普通に友達同士みたいな人たちもいる。
 僕たちの後ろの席の人たちは、びっくりするほどあざとかった。

「はい、あーん」
「おいしー。たっくんすきー」

 水戸くんは肩をすくめ、苦笑いしている。

「この会話って、視聴者さんたちには聞こえてるんだよね?」
「うん。共用部分は施設ごとに映るから、複数カップルを観察できる仕組みってことみたい」

 耳をそばだてて、学ぼうとする……と、水戸くんは俺の手を握り、難しい顔をして首を振った。

「理空、いま、他の奴のこと考えてたでしょ」
「えっ? え、まあ……うん。僕、付き合ったことないから、正解が分かんないし、参考にしよっかなって思って」
「だめー」

 水戸くんは僕の手を取り、手首に口づけながら言った。

「俺とのデートなんだから、俺のことだけ考えてください」
「ちょ、ちょっとこれ、はずかし……」

 ふと、レジの上のディスプレイを見ると、参加者の名前がずらりと並んでいた。

「あ、水戸くん。あれ、ランキングかな?」
「そうだね。初日のポイントが出てるはず」

 カップルは50組。
 無意識に下から数えて、全然見つからない。

「あれ、なんで無いん……」
「18位」
「ん?」
「俺たち、18位らしいよ」
「へ、ぇ?」

 すっとぼけた声が漏れてしまった。
 こんな無名の僕が? いや、水戸くんの力か。

「すごいね水戸くん」
「なんで他人事みたいに言うの」
「え? きっと、水戸くんのファンの人が入れてくれたんだよ。優しいね」
「……はあ。君は」

 何か言いかけたところで、パフェが運ばれてきた。
 美しい顔の人の目の前に、巨大チョコバナナ。
 さっき昼ごはんのときも思ったけれど、水戸くんは、痩せの大食いタイプだ。

 僕がメロンソーダのアイスを崩していると、水戸くんが「あーん」と言った。
 何かと思って顔を上げる……と、長いスプーンの先に、大きすぎるひと口がどでんと乗っている。

「はい、あーん」
「んぐ」

 これ、さっきの正解を見習うなら、『おいしい、水戸くん好き』って言わないといけないんだろうか。
 ……と思いつつ、口がぱんぱんで、何も言えない。

「かわい」

 微笑むその手には、紙ナプキンが準備されている。
 いますぐにでも口の周りを拭きたいというオーラが出まくっていて――照れてしまって、むせた。
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