自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
744 / 767
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第875話 シュウゲン 58 アマンダ嬢からの依頼

しおりを挟む
 火曜日。
 迷宮都市のダンジョンへ攻略しに行った家族が帰ってきた。
 沙良が皆の前で地下17階に生る果物の報告をすると、ランダムに生るのはメロンだと聞いた賢也けんやの表情がウキウキしたものになる。
 次の階層では、収穫する楽しみが出来たようだな。
 美佐子みさこが作った天丼は、ひびき君とヒルダちゃんのものだけピーマンの天麩羅てんぷらのみだった。
 朝食は普通だっただけに、娘が怖い……。ヒルダちゃんの分は結花ゆかさんの希望か?
 それを見た家族は無言でスルーした。
 あまりに可哀想かわいそうだったので2本入っていた儂の海老天を1本、響君に分けてやった。
 2人は顔を引きらせながら完食したが、きっと満足はしておらんだろう。

 食後、沙良がスイカサイズのメロンを切り分け配ってくれた。
 見ると種がない! ダンジョンの果物には種が入っていない物が多いのか!?
 驚きと共にかぶり付くと、口の中一杯にメロン特有の香りと甘みが広がる。
 高級なメロンが、この大きさで食べられるとは何とも贅沢ぜいたくじゃな。
 
「ダンジョン産の果物は、本当に甘くて美味しいわね」

 これには美佐子も頬をゆるませ嬉しそうにしておる。

「毎日でも食べたいくらいだよ!」

 尚人なおと君は気に入ったのか直ぐに食べ終え、沙良にお代わりを強請ねだっていた。
 追加でメロンを切り分ける沙良に、響君とヒルダちゃんが便乗したのは昼食の内容の所為せいか……。
 再びダンジョンに向かう皆を見送り、儂は3本目の剣を鍛冶魔法で製作した。
 夕食を(今回はピーマンなしの)ヒルダちゃんと一緒に食べていると、沙良達がそろって家に来る。
 はて? 夕食はダンジョンで済ませるのではなかったか?
 急に来た理由が分からず、かなでと顔を見合わせる。
 すると沙良が少し困ったように口を開いた。

「ええっと、アマンダさんから依頼があったんだけど……。彼女はリザルト公爵令嬢じゃなかったみたい。エンハルト王国の出身なんだって」

「エンハルト王国?」

 カルドサリ王国ではない国名を聞いた賢也けんやが聞き返す。

「確か、その国の王女が数百年前リザルト公爵に嫁いできたんじゃないか?」

 奏は貴族の血縁関係に詳しいのか、沙良の話を補足した。
 儂の予想していた通り、アマンダ嬢はエンハルト王国の王族だったようじゃ。
 しかし、その国の出身だと伝えただけで王族である事は秘密にしているようだな。
 それから沙良は、アマンダ嬢から聞いた意外な依頼内容を話し出す。
 母方の親戚であるリザルト公爵を頼り、カルドサリ王国に結婚相手を探しにきたアマンダ嬢は、婚約者を連れてこいと親から言われたらしい。
 なんと、その相手にヒルダちゃんを指名したという。
 ヒルダちゃんを実の母親だと紹介してしまったため、沙良の同行も願っている。
 ヒルダちゃんをエルフの王族と知っての事なら、地位的に問題はなかろうが……女性同士だぞ?
 突拍子もない話に、ヒルダちゃんは目を丸くして声を上げる。
 結婚して二児の父親であるいつき君の立場では、受けるわけにはいかんだろう。

「いや、そりゃどう考えても無理だろう。俺は既に結婚してるし……」

 案の定、断りの言葉を述べるヒルダちゃんに、

勿論もちろん、本当の結婚相手じゃなく、婚約者のフリをしてほしいんだと思う。依頼料も払うって」

 沙良がアマンダ嬢の意向を伝える。

「そもそも、樹おじさんが女性化出来るのは50日間だけだろ? 他国へ行くのに、往復を考えたら期間が足りないんじゃないか?」

 話を聞いていた賢也が移動時間に言及すると、

「あぁ、それは多分問題ないと思う。アマンダ嬢は……」

 ヒルダちゃんが何か言い掛け黙り込む。
 おや? アマンダ嬢が王族だと気付いているのか?
 それなら国交のある国には、王宮に移転陣が設置されていると知っていそうだな。
 
「エンハルト王国なら青龍がおる国だの。国中に運河が張り巡らされて、非常に美しかったぞ」

 移動手段についてヒルダちゃんが言えないと思い、儂は話題を変えた。
 エンハルト王国は過去に一度行った事があるし、嘘ではない。
 あの時は胸の大きな吟遊ぎんゆう詩人と酒場で飲んだあと宿に誘われたが、付いて行こうとしたら黒曜に尻をまれたのだった。痛い思い出じゃ……。

「あぁ青竜王が居ましたね」

 青龍の言葉にセイが反応して、青竜王が居ると言う。
 竜王? どこか懐かしい響きに心がざわめく。
 ドワーフの国を守護する火竜は竜王ではないが……、竜にも属性別に竜王が居るようだ。
 儂が気にしていた龍と竜の姿の違いは、なさそうだな。
 国にり呼び方に違いがあるのだろう。

「あなた。一度、詳しい事情をアマンダさんから聞いてみたら? 依頼料も払ってくれるそうだし」
 
 反対すると思っていた結花さんは、依頼料に釣られてか賛成しているように見えた。

「えっ? それじゃ約束は……」

 何故なぜか、そう言われたヒルダちゃんがあせったような顔をする。

「あら、散々さんざん人を待たせておいて自分の都合を優先させるの?」

「いや、別にそういう訳じゃないんだけど……。せっかくだし痛くない方が……」

「あなた、子供達の前よ?」

「すみません」
  
 何の事はない。ヒルダちゃんは女性化したのを幸いに、未知の体験をしたかったようだ。
 ここら辺は樹君の意識が勝つのだろう。
 娘夫婦はヒルダちゃんをあきれて見遣り、儂はニヤニヤと笑った。
 その発想に思い至らぬ者が4人ばかりいたようで、首をかしげる姿に可笑おかしくなる。
 いやはや、こんな時は何も言わぬが花じゃな。

「じゃあ、依頼を受けてきてね!」

 結花さんが押し黙ったヒルダちゃんに言い切ると、沙良が同行する事を心配した賢也、あかね、セイが付いていくと声を揃える。
 響君は美佐子ににらまれ言葉を発せなかった。
 彼は最近、単独行動をしたばかりで許しも貰っていない。
 流石さすがに一緒に行くのは無理だろう。
 沙良は他に同行者がいても大丈夫か聞いてみると言い、話を終わらせた。
 結局、ヒルダちゃんの意見は尊重されずにアマンダ嬢の婚約者のフリをさせられるのか……。
 ヒルダちゃんにとっては、罰ゲームのようなものだな。
 
 土曜日にアマンダ嬢の依頼を受けに行った沙良達は、日曜日に戻ってきた。
 ヒルダちゃんの婚約者のフリは上手く行ったようで、エンハルト王国の女王に納得してもらえたという。
 今はそれでいいかも知れんが、後々を考えると大丈夫かの?
 問題を先送りにしただけのような気がするが……。
 まぁ、その時はアマンダ嬢が女王を説得するしかあるまい。
 そんな事を考えていると、沙良にエンハルト王国で知り合った魔族と契約して、爵位を上げさせたいとお願いされる。
 魔族とな? 長い人生の中で魔族に会う機会などなかった儂は興味を持ち、了承した。
 契約には対価としてステータスのMPを取られるそうだが、減ったMPは沙良がエーテルを飴にした物をめれば解決する。
 実質、対価なしで契約出来るなら何の問題もない。
 初めて会う魔族の姿を想像しながら、沙良が召喚陣を起動させるのを待った。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、いいねやエールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,623

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。 全123話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚
ファンタジー
ある日、目が覚めたら異世界に転生していた主人公。 裏庭で偶然出会った黒猫に魔法を教わりながら鍛錬を重ねていく。 しかし、その平穏な時間はある日を境に一変する。 これは異世界に転生した十歳の少女と黒猫メイスの冒険譚である。 よくある異世界転生ものです。 *恋愛要素はかなり薄いです。 描写は抑えていますが戦闘シーンがありますので、Rー15にしてあります。   第一章・第二章・第三章完結しました。 お気に入り登録といいねとエールありがとうございます。 執筆の励みになります。

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦    6巻発売です! 告知遅れてすみません……。  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~6巻が発売中!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍1~9巻発売中。  1~8巻は万冬しま先生が、9巻以降は木々ゆうき先生がイラストを担当してくださっております。    現在別原稿を作業中のため、更新が停止しております。  しばらくしたらまた再開しますので、少々お待ちを……  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。